ボブ・ディラン、全43作品(オリジナル・スタジオ・アルバム35作+ライヴ6作+ベスト2作)を
1年かけてリニューアル復刻していく、ディラン究極の「神」ジャケ復刻プロジェクト!その第3弾として『DYLAN 80's』 9タイトルが8月27日発売になりましたhttp://www.sonymusic.co.jp/Music/International/Special/bobdylan/140326/sono2/80s/

ディランの80年代は今までちゃんとフォーカスされたことはなかったと思いますが、この80年代作品を年代順聴いていただくとき、萩原健太著『ボブ・ディランは何をうたってきたのか』を読んでいただくと非常に面白いと思います。こちらの本はデビューから『テンペスト』までの全タイトル・ディスコグラフィーでもありクロニクルでもあるんですが、80年代のところがまたいいです。

ディランでも迷うんですよ!

ポールにとっての『マッカートニーII』、ニール・ヤングにとっての『トランス』、そしてディランにとっては『エンパイア・バーレスク』・・・。確かになあ。「タイト・コネクション」のビデオ一つとっても(日本ロケ、倍賞さん出演)、なんで?どうしちゃったの?って思っちゃいますよね。健太さんも『エンパイア・バーレスク』を初めて聞いたとき、「これは、ない」(笑)と思ったと。

●「タイト・コネクション」ビデオ
http://www.youtube.com/watch?v=nheBN2UWAaM



本著の『エンパイア・バーレスク』のところに書いてある下記の文章は、僕が昔から仕事しながらずっと思ってたことでもあり、ずっと違和感も覚えてたことでもあり・・・

「音楽ジャーナリズムの中には”常に新しくあらねばならない”という曖昧な価値観があるけど・・・ベテラン・ミュージシャンでも同じような強迫観念にとらわれることもある」と(それが上記のような作品とか)・・・「でも、いつの時代にも常に新しくあろうと躍起になる必要はない・・・自分の作り上げた「味」の中で表現することがあっても何の問題はない。「味」が今の時代に機能してるなら「現役の音楽」なのだから。新曲か、昔の曲かさえ問題外」(そういった例としてブライアン・ウィルソンやポールが出てくるわけですが)・・・

まさに!そうなんですよ。新しけりゃいいってもんでもない。来日公演で見せてくれたような「今」のディランはまさにこれに当てはまると思うけど、80年代の中ごろのディランは「見事に迷ってた」

80年代はディラン40代。キリスト教3部作で始まって、We Are The WorldにLive Aid、The Travelling Wilburysなど派手な表の顔とともに、どこへ向かってるのかわからない迷いに迷ってた80年代半ばの時期。でも最後は『オー・マーシー』って傑作でビシッと締める。そんな時の流れと背景と当時の匂いも含めて本著を読みながら、そのアルバムきくと、これまたなんとも味わい深いんです。

ディランのそれぞれのアルバムへのいろんな想い、評価、好き嫌い、皆さん個々あるとは思いつつ、ディランご本人にとってはすべてが通過点。いくら変でも、それは歴史の1ページなんですね。『エンパイア・バーレスク』をいきなり聞いたら、は~?って思う人も多いかもしれないけど、そこへ行きつくまでの流れを知って聞くと、それはそれで面白い。

いや~しかし読んで改めて思うことは、やっぱディランは本当にわけわかんないってこと。そして面白い。ま、すべてにおいてディランはディラン、不思議な人だなあ・・・。

●『ボブ・ディランは何をうたってきたのか』


詳しくはこちら
http://www.ele-king.net/news/003956/

健太さんお得意のギターのコード話とかがでてくるんですが、こういった視点では今まで誰もが語ってなかったことかも。面白かったです。ぜひ皆様もどうぞ。