三内丸山遺跡を後にして、今夜の宿の酸ヶ湯温泉に向かう。
2月の末に予約した時、宿の人に「GWはまだこの辺りは冬ですから、冬タイヤで来てください」と電話で告げられ、素直に冬タイヤでやって来た。



青森の市内から見ることができる八甲田山は確かに真っ白で、ちょっと覚悟をしたけれど、こうやって登ってきてみると、確かに山肌にはまだかなりの雪が積もってこそあれ、道路には雪がない。
好天にも恵まれて、朝夕でも凍結する心配もない。結果論だけれど、夏タイヤでもよかったなと思った。

旅好きで東北好きで独身の同僚が「八甲田でスノボがしたいから、おれも行くんだよ。友達と酸ヶ湯で待ち合わせなんだ」と言っていたが、彼は「もう大丈夫、大丈夫」と、夏タイヤで行くと言っていた。




そうこうしているうちに到着。車を降りるとあたりは硫黄の匂いが立ち込めている。

酸ヶ湯温泉。
初めて訪れて泊まるわけだけれど、ここにはほんの少しの思い入れがある。
子供の頃の話になるけれど、中学校の修学旅行の時、バスで八甲田を通る時に速度を緩めて雪渓を見せてくれたのがこのあたりで、その時、豪壮な建物があるのを見て、あの建物は何だろうと思ったのが最初だった。

後年、あれが温泉宿だということを知り、いつか泊まってみたいと思い続けて、やっと今日来ることができた。




wikipediaの助けも借りながら酸ヶ湯温泉の紹介をすると、三百年も昔から開かれていた山の温泉宿で、「千人風呂」という大きな風呂が有名。総ヒバ造りの体育館のような巨大な建物で混浴の大きな浴槽二つと打たせ湯、男女別の玉の湯という風呂がある。

千人風呂は、脱衣所は男女別だけれど中が混浴となっていて、ただしまったくの混浴というわけではなく、大浴槽は中央半分に目印があり、そこで男女が区切られている。
けれども有名になるにつれて、男の入浴客のマナーが取りざたされていて、女性の脱衣所からの通路についたてをしたり、湯浴み着を売ったり、宿の側も苦慮している様子がうかがえる。

なお、風呂は撮影できないので、このあと一切写真を撮っていないのだけれど、建物の中の写真まで撮るのを忘れ、失敗したなと思った。(ので千人風呂と館内の写真は旅行会社のサイトから拝借しました)



着いて早々千人風呂に入り、部屋で青森名産(?)リンゴサイダーを飲みながら、外を眺めていた。
だんだん日が傾いてきて、雪が夕日の色になってきた。旅情に浸る眺め。

駐車場は車がびっしりだったのだけれど、千人風呂も結構な人が入っていた。
女性は湯あみ着を着た女性が一人入浴していた。

お湯はあの酸ヶ湯グリーン。乳白色で緑がかったヒスイの色。写真で見る色と同じ色だった。
まずは熱の湯から。温度がちょうどいい。リラックスできる温度。
お湯は柔らかい。ああ、やっぱりいいなぁ硫黄泉は。
温泉の中でも、好きなんです、硫黄泉。

女性ゾーンに背を向けながら湯船の真ん中のほうに寄っていくと、結構深い。
かけ流されていることもあって、湯量が多いので背の低い人なら腰を浮かさないと溺れてしまう深さ。タオルからお湯が落ちてきて少し目に入ると少しピリピリしみる。

四分六分の湯に移る。
こちらは熱の湯よりも少し温度が高いけれど、熱いというほどまではいかない。
気持ちよく入ることができる。



玉の湯に入った義母たちが、一緒になった女性から聞いた話によると、「目のやり場がなくて入れない」と言っていたそうだ。
確かに混浴だということも忘れ、風呂のへりに座ってご本尊を御開帳している人もいる。

またなぜかみんな風呂のへりに固まっているので、みんな女性の入るゾーンのほうに自然と目が向く格好になってしまっている。
見るつもりがあるのかどうかはわからないけれど、風呂のへりにいる限りはどうしてもそうなる。
それを女性たちが「ガン見している」と言っているのかも知れない。まぁそう見えてもしょうがない。

僕は風呂の真ん中まで行って、風呂のへりのほうを向いて入っていたので、湯気に元気をそがれた同輩のありがたいご本尊を拝んだり、こっちのほうを向いて入っている人と目が合ったり・・・というようなことになっていた。

ちなみに手前が熱の湯、向こう側が四分六分の湯というのだけれど、湯の温度は熱の湯より四分六分の湯のほうが熱い。成分の違いが湯の名前になっているのだろうなと思う。

ちなみに酸ヶ湯温泉は名前の通り酸性で有名だけれど、日本で二番目に酸性ということになっている。pHは1.88-1.94。一番は、秋田県の玉川温泉。よくテレビでござを敷いて毛布をかぶって岩盤浴をしているところが紹介されるあの温泉で、phが1.2。
前出の同僚が行ったことがあるそうで、「薄めてないところばかり入っていたら肌がただれた」と言っていた。




この宿には旅館部と湯治部とがあって、予約したときに湯治部しか空きがなく、僕らは湯治部に泊まった。
最初に双方の違いを尋ねると、湯治部のほうは普通の家のごはんのような感じで、ふとんはセルフサービスとのことだった。
だから僕はきっと、ニラ玉や切り干し大根や焼き魚や、そんな夕飯を想像していたのだけれど、なんとなんと。あのよくある一人鍋もついて結構なボリュームで、立派なものだった。
残念ながら写真はないのだけれど、今度もし泊まることがあったらまた湯治部にしようと思った。(今回、4人一部屋で泊まったので、一人7000円という安さだった)


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食事の後、今度は玉の湯に入ってみた。(旅館のサイトから拝借しました)

酸ヶ湯といえば千人風呂が代名詞だけれど、こっちの風呂は三人風呂といった感じ。
でもこじんまりとしていて、ゆっくりできる。千人風呂に行く人が多いので、こっちは空いていることが多くて、貸しきり状態で入ることができた。



僕は温泉に入って、湯船のへりに腕を乗せてうつぶせで入るのが好きで、あれをやるとその温泉をモノにした気分になる。もちろんそれにはTPOも考えなければいけない。混んでいる時にこれをやると顰蹙をかうことになるけれども、一人の時は大変リラックスできる。
一人湯船にうつぶせになって脱力していると、身も心もご本尊も解き放たれる。

男はいつも重力と闘っている。時には重力から解き放たれることも大切だ。

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昨夜のフェリーの雑魚寝と、夕飯の時のビールが効いたのか、20時過ぎにみんな電気を消して寝てしまった。つきあって僕も寝たけれども、なかなか眠ることができない。
廊下が明るいのと、まだみんな寝る時間じゃないので、バタバタ騒がしい。

それでもウトウトすることができた。暑くて目が覚めたら24時過ぎ。ここでもう一度風呂に入りに行った。千人風呂に入っていたのは男性三人。玉の湯だけでなくこっちも三人風呂だった。

夜中の空いた千人風呂は、風情があって最高だった。
千人風呂に入る機会があったら、空いた時間に入ることをお勧めします。


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<DATA>
・源泉名:酸ヶ湯温泉  号泉(温泉名 熱の湯)
・湧出地:青森市大字荒川字南荒川山国有林小字酸ヶ湯沢50
・湧出地における調査および試験成績
 調査および試験者:青森県衛生研究所
 調査および試験年月日:昭和61年12月15日
 泉温:52.3℃(気温:_ ℃)
 湧出量:測定不能 (自然湧出)
 知覚的試験:微弱白濁、酸味硫化水素臭
 pH値:1.9
・試料1kg中の成分(主な成分抜粋)
*陽イオン
 水素イオン=12.7mg、ナトリウムイオン=62.7mg、カリウムイオン=12.7mg、
 マグネシウムイオン=69.0mg、カルシウムイオン=185.1mg、アルミニウムイオン=175.0mg、
 マンガンイオン=1.9mg、第一鉄イオン=19.8mg、第二鉄イオン=1.2mg
*陰イオン
 フッ素イオン=5.3mg、塩素イオン=496.0mg、チオ硫酸イオン=9.8mg、
 硫酸イオン=1457.mg、ヒドロ硫酸イオン=617.9mg
*遊離成分
 メタ珪酸=224.4mg、メタ硼酸=68.0mg、リン酸=2.4mg、硫酸=19.7mg
 (溶存物質:3441mg/kg)
遊離二酸化炭素=1650.mg、遊離硫化水素=20.6mg
 成分総計:5112mg/kg
・泉質:酸性・含二酸化炭素・鉄・硫黄-アルミニウム-硫酸・塩化物泉(硫化水素型)(低張性酸性高温泉)