生観戦! 「三浦×岡田」「李×高山」 日本Fe・SFe級タイトルマッチ | ボクシング&ロック野郎 higege91の夜明けはまだか?

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人生の曲がり角に遭遇したボクシング&ロック・マニアhigege91。暇を見つけてはホール通い。ああ、俺は戦っているか!? ああ、俺は俺の求める『俺』に近づいているのか!?

『根性』…という言葉をご存じない方はほとんどおいでにならないだろう…


実は、昨晩の後楽園ホール生観戦を通じて、僕はかなりの価値観の転倒というか、それに似た衝撃を受けたのだ…


あぁ、僕はその「言葉」を、実はかなり軽はずみに使ってはいないか…?


あぁ、僕はその「言葉」を、実は全く理解など出来ていないのではないか…?


そんな想像もしなかった「困惑」と、心の奥底から込み上げる「感動」に、僕は打ち震えたのだ…



2010 2 6 後楽園ホール ダイナミックグローブ


日本スーパーフェザー級タイトルマッチ


チャンピオン 三浦隆司 17W14KO1L2D

×

挑戦者1位 岡田誠一 10W6KO無敗



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…僕は挑戦者の岡田選手の「根性」がチャンピオンを飲み込んでしまう、という戦前予想を立てていた。


それというのも、岡田選手にとっての前戦、日本王座挑戦者決定トーナメント「最強後楽園」決勝戦、VS川村貢治(現東洋太平洋同級チャンピオン)戦を生観戦して、その逆境を覆して勝利した超驚異的なる「精神力」を目の当たりにしていて、その「真っ直ぐ」なるファイトスタイルと合わせて、これを跳ね返せるボクサーは日本国内にはいないのではないか? また、いくら日本チャンピオンといえどもそれは不可能なのではないか?


…などとと考えていたからだ。


が、大方の試合予想は初防衛戦を成功させているサウスポーのチャンピオン三浦有利…


試合開始…


1Rから試合を優位に進めたのはサウスポーのチャンピオン三浦、前傾姿勢からひたすら距離を潰して攻めてくるファイター型岡田を遭えて足を止めて迎え撃ち、鋭い右フック、そして、必殺の左ストレートを当てまくる…


これは無理だ…


思わず、そんな言葉が頭をよぎった…


チャンピオンの三浦は恐らくは物凄い「手ごたえ」を掴んでいたに違いない…


当たるぞ、右も左も思いっきり当たる…


倒す、倒せる…!!!



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挑戦者には分の悪い立ち上がり… 


チャンピオンの切れ味抜群の右フックに晒され、思わず自分の右に動いてしまうように見えた…


と、そこに待ち構えているのはその右リード以上に強烈なる必殺の左ストレート!!!


岡田、これをまともに浴びてしまう悪循環…


一緒に観戦していたチャベスのボディーブロー氏と交わした言葉…


---さすがにこれだけチャンピオンのパンチを浴び続けたら立っていられるはずはないだろう… 残念だけれど、挑戦者は倒されるに違いない… 



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しかし、挑戦者岡田、ただ黙々と、ただ、延々と前に出て左右ボディーを捻じ込み、時折右ストレートを捻じ込む…



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三浦、敢えて足を止め、挑戦者にとっても望むところの、「純然たる打ち合いの土俵」で戦い続けたのはチャンピオンの意地がそうさせたのか…?


最強挑戦者を「力でねじ伏せてこそ真のチャンピオン」…そんな気概が敢えてそうさせたのか?


クリンチとは無縁の、ただ黙々と手の届く距離で殴りあい続けるチャンピオンと挑戦者…


チャンピオン優位で試合は進む…


挑戦者はその左右強打をまともに浴び続け、さすがにどれだけの強靭なる「精神力」を持っていようとも、このまま最終ラウンドまで堪えるのはきっと無理だろう… 


肉体の限界って奴は、ある時、容赦なく訪れて挑戦者岡田の背中から覆いかぶさり、立ち上がることを拒ませるはず…


5R、偶然のバッティングでチャンピオン三浦の右瞼が切れる…


両者アマチュアキャリア抜群のテクニシャンでもあるにもかかわらず、このタイトルマッチは非常に「原始的」な「根競べ」という様相を呈し続けた…


なぜ…? こういう殴り合いそのものは珍しくはない… だって、これは「ボクシング」なのだ… 


が、しかし、1Rからずーっとここまで解りやすく殴り合い続ける…というか、ダメージの蓄積を無視するかのように殴り合い続ける…という展開であるが、これほどまでの状況は実は意外とお目に掛かれないものだ…


挑戦者はもう倒れるだろう… 多くの観客も、そして、チャンピオンもそう感じていたのではなかったか?


いや、しかし、岡田誠一は倒れない…


ポイントこそ失い続けるも、チャンピオンのスタミナを削り落とし、そして、思い切り捻じ込み続けた左右ボディーブローはダメージを与え続けてもいたのだ…


気がつけば、試合は終盤戦にたどり着いていた…


この、あまりにも原始的な「殴り合い」が、最終盤までもつれようとは夢にも思わなかった…


が、チャンピオンのアッパーカットが挑戦者の顎を跳ね上げる場面が多くなり始める…


このパンチ、本当にヤバイ…


岡田は全くこのパンチに対応できてない…


ここを狙われ続けたら絶対にダメ、さすがにもたない…


と、8R、不意に放たれたチャンピオンのボディーブローであるが、これ、「ローブロー」の裁定を受けてしまう…


レフェリーがチャンピオン三浦の腕を掴んで「-1ポイント」を宣告する…


チャンピオン、俄かに動きが鈍り、それまで重く鋭かった左右コンビネーションがやや手打ち気味になってきてしまった…


僕の採点上、ついに、挑戦者の岡田がポイントを奪う…


---8R 岡田 「10-8」…!!!


奇蹟の大逆転の可能性に場内もどよめく…



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テクニックも糞もない、ただの、純然たる殴り合いが続く…


精も魂も尽き果てた…


限界点もとうの昔に通り過ぎてしまった…


両者、膝を揺らしながらも、しかし、倒れない…


頭を付け、時を惜しむように、手を出し続ける…


挑戦者の右がチャンピオンの顎先を捕らえたっ!!!!


チャンピオンの口からマウスピースを飛び出したっ!!!


効いたっ!!!


が、三浦はここぞの窮地で倍返しの反撃に打って出る!!!


苦しい時こそ、手を出す、苦しい時こそ、攻め立てる… これぞ、チャンピオンの意地!!!


延々たる、原始的な「殴り合い」はついに最終ラウンド終了のゴングを聞いた…


この、剥き身の魂と魂の激突、そのあまりにも神々しき「殴り合い」に、僕は完全に打ちのめされた…


暇を見つけては後楽園ホールに足を運び続けてきたが、これほどの『殴り合い』はそうはお目にかかれない…


しかし、ある意味、「異常」でもある…


誤解を恐れずに言えば、それは「死線」が見え隠れするほどの内容であり、僕はその不穏を心の隅で感じながらも、しかし、この興奮と感動を抑えることが出来ず、絶叫していたわけでありますが、試合終了のゴングを聞きながら、ある種の「疲労感」に苛まれたのも確かだ…


大興奮するも、しかし、恐ろしい内容でもあったのだ…



ボクシング&ロック野郎    higege91の夜明けはまだか?-Image165.jpg


僕の採点は「96-93」で勝者、チャンピオン三浦隆司…


公式の採点… 「96-94」三浦、「96-94」岡田、「96-93」三浦… 


『2-1』のスプリットデシジョンで、勝者、三浦隆司!!! 2度目の防衛成功!!!


…「限界」を越えた『殴り合い』でありました。


---両者、もっとディフェンスに重きを置きながら、もう少し多角的・立体的な戦い方が出来なかったのか? 


なんて見方もあろうが、しかし、逆に言えば、この二人にしか、この戦いは出来ない…とも言えそうですねぇ…


本当に驚きの内容、脅威の「真っ向勝負」でありました…



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岡田選手、その延々たる前進アグレッシブファイト、本当に最高であった、素晴らしかった…


その「根性」あるいは「闘魂」と呼ばれるものでありますが、これほどまで「肌」で感じさせてもらったことに、本当に感謝を申し上げたい…



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そして、三浦選手、その「チャンピオンの矜持」をあますことなく発揮、真っ向勝負を望んだ挑戦者に対して、敢えて「打ち合い」で応えたその「勇気」、本当に素晴らしかった…


が、毎回、このような激しすぎる「消耗戦」に付き合う必要もなかろう…とも思えますが、でも、観客ファンは喜びますからねぇ…


が、「世界」を見つめるならば、この戦い方を続けるのは得策ではない…


さて、試合後、チャベスのボディ-ブロー氏といつもの中華料理へ足を運び、餃子なんぞをつまみながら話をした…


---岡田には、何か、「昭和」の香りが漂っているね… ハリケーンとか、スパイダーとか、ジャッカルとか…


チャベス氏がそんなことを呟きながら、激闘の余韻をビールと一緒に飲み込んだ…


敢えてザクザクと肉を斬らせ続け、しかし、その最終盤、相手のスタミナを完全にそぎ落とし、ついにギリギリの場面で骨を断つ…


最高の激闘・壮絶ファイトほど、最高の酒のつまみはない…


僕は先日救急車で運ばれて以来、ちょっとお酒を控えているのですが、しかし、今夜のタイトルマッチには完全に酔っ払ってしまった…


そこに「死線」が存在しているということは、ボクシングの場合大前提なわけでありますが、今回の「三浦×岡田」はそれがフルラウンドありありと感じられるという内容であったわけですが、これは本当に稀有であり、そして、そのようなあまりにも生々しい展開を恐ろしくも感じてしまった…


だからこそ、「しっかり見つめなくては」…と思っわけですが、これぞ、まさに、文字通り、『命懸け』の名勝負となった…


気が早いと言われるかもしれないが、年間最高試合候補…と言っても過言ではない内容でもありました。


挑戦者、岡田誠一、これが「根性」ってモノだっ…!!! って感じで、それを体現してくれたわけですが、もう本当に僕は驚いた…


あれだけ打たれ続けながらも、しかし、ずっと集中力と保ち続け、そして、闘志と執念を燃焼させ続けたわけですが、もう本当に感涙モノでありました…


これからも僕は応援したい…って思いましたね。


もちろん、それを正面から受け止めたチャンピオンの三浦選手も凄かったのは言うまでもない。



日本フェザー級王座決定戦


WBA14位 李冽理 14W8KO1L1D

×

日本1位 高山和徳 17W4KO5L4D


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明確なる「3-0」の判定勝ちでついにチャンピオンとなった李選手…


高山選手、思い切りの良い右も当てたが、その懐の深い李選手の距離感と的確なるパンチの前にポイントを失ってしまった… 残念でした… 



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新チャンピオンとなった李選手、前の試合で元日本&東洋太平洋フェザー級チャンピオンであった榎洋之選手を下して名を挙げたわけでありますが、その勢い、ホンモノでありますねぇ…


倒すチャンピオン…っていうよりも、ポイント勝負で負けない技巧派チャンピオン…っていう感じになって行くのでしょうか?


いや、これからさらに好戦的に変貌して行くのでしょうか?


実に楽しみ…


しかし、ちょっと残念だったのは、李選手の応援団の方々、李選手の試合が終わった途端、かなりの方が帰られてしまって北側のベンチシートがごっそり空席になってしまい、「三浦×岡田」戦が始まる前になんだか寂しい印象になってしまったことだ…


これ、まぁ、仕方がないのだと思うのだけれど、李選手にとって三浦チャンピオンは同門の先輩チャンピオンにあたるだけに、余計寂しいって言うか、なんとも少し複雑になてしまった…


ただ、もう一言書いちゃえば、「三浦×岡田」戦の到達した境地でありますが、これ、2010年度最高試合に相当するほどの充実度でありました(今年もまだ始まったばかりですが)…


これを生観戦で見逃したのは本当にもったいなかった…


御愛読感謝


つづく