2001年7月16日 坂田健史×内藤大助 日本フライ級タイトルマッチ | ボクシング&ロック野郎 higege91の夜明けはまだか?

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人生の曲がり角に遭遇したボクシング&ロック・マニアhigege91。暇を見つけてはホール通い。ああ、俺は戦っているか!? ああ、俺は俺の求める『俺』に近づいているのか!?

2001年7月16日 後楽園ホール 


日本フライ級タイトルマッチ


チャンピオン 坂田健史 15W6KO無敗

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挑戦者 同級1位 内藤大助 18W13KO1D


これ、今を遡ること8年前に行われた、伝説の名勝負の一つですよねぇ…


この時点で、一体、どれだけの方がこの二人それぞれ世界チャンピオンの頂まで登りつめると想像していたでありましょうか…?


それぞれが「無敗」にして、全日本新人王を獲得していたのですね…


さて、協栄ジム所属の坂田選手は金平正紀会長「最後の弟子」…と言われていて、当時世界挑戦を前に王座を返上したセレス小林さんの後継者を決める王座決定戦で川端賢樹選手と戦ってこれを獲得、そして迎えた初防衛戦がこの内藤戦であったわけですね…


一方の内藤選手は榎本信行選手と4回戦時代に引き分けの星があるだけで、それ以降は破竹の快進撃でここまで辿り着いた期待のホープであったわけですね…


広島から上京してきた坂田選手に、北海道から上京してきた内藤選手、その若かりし頃の、「無敗対決」…


また、後にそれぞれが「世界チャンピオン」の夢を叶えるわけですが、今、改めてその過程を思い起こすと、本当に苦しみと苦悶の連続、まさに、茨の道でありましたねぇ…


坂田選手の世界初挑戦はWBAチャンピオンのベネズエラのロレンソ・パーラで、序盤に顎の骨を砕かれながらも激痛に耐え判定決着、惜しくも「2-0」で泪を飲み、続く再挑戦も判定負け、さらに、敵地・フランスの地に赴いて暫定王座決定戦に出場するも、パナマの蜘蛛男、ロベルト・バスケスに僅差判定負け、しかし、それでも諦めることなくチャンスを待って、ついに掴んだチャンピオンベルトは、正規チャンピオンのパーラをギブアップさせての後楽園ホールでの王座戴冠でありました(…ただし、この時のパーラは減量失敗ですでに王座剥奪状態であった)… しかし、パーラがそのような負け方だったので、「世界」の称号を得たものの、その評価には「?」が付き纏ったのですね… だが、迎えた因縁の再戦、暫定チャンピオン×正規チャンピオンとなってのバスケスとのリマッチで快勝、その地位を揺ぎ無いものにしたわけですね…


一方の内藤選手はこのタイトルマッチの後に敵地タイへ赴いて当時の絶対的WBCチャンピオンであったポンサクレック・シンワンチャーに挑戦するも、「調子が良すぎた」そうで、1R開始早々から猛烈なアタックをかけるも、なんとポンサクレックの左フック一閃、大の字に倒れて意識を失ってしまうという大波乱のTKO負けを喫したわけですね。これ、1Rわずか34秒の出来事で、今なおこれはWBCフライ級の最短KO記録として残っています… が、その後再起を果たして、当時の日本チャンピオンの中野博選手から負傷判定でベルトをもぎ取って防衛を2つ積んで再びのポンサクレックに挑戦、しかし、これ、分の悪い展開から負傷判定負け、しかし、モチベーションと戦いながら日本王座を守り、さらに、東洋太平洋王座も吸収、ついに迎えた伝説的ポンサクレック3で執念の判定勝ちを収めたわけですね… これもやはり、聖地・後楽園ホールでした…


さて、世界チャンピオンになってからの両者の活躍はご存知の通り、残念ながら坂田選手はデンカオセーンの強烈な一発に沈んで王座陥落してしまいましたが、しかし、今は2階級制覇を目指して再起ロードを進んでいますし、内藤選手は「国民的スター」となって、亀田興選手とのビックマッチをついに迎えるか…?なんて状況ですね…


では、8年前の名勝負を辿ってみたいと思います…



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1R 両者右構え 笑顔の挑戦者はキビキビと上体を動かしながら、さらに軽やかなフットワークを駆使しながら鋭いジャブを放つ… 一方のチャンピオンはガードをキッチリ固めながらジリジリと挑戦者との間合いを詰める…という立ち上がり… 内藤の左ジャブから左ボディーフックがクリーンヒット!!! さらに大胆な左フックから右アッパー…とコンビネーションを披露、一方の坂田は単発の左ジャブのクリーンヒットを幾つか奪うに留まる… 内藤10-9


2R 愚直なほどの誠実さで前へ出てゆく坂田を迎え撃つ内藤はその変幻自在のコンビネーションで上下左右からクリーンヒットを奪ってゆく… 坂田の右ストレートが内藤の顔面を捕らえるも単発… 内藤は闘牛士さながらに坂田の前進を文字通り捌き続け、ふいにコンビネーションを繰り出しては有効打を奪う… 内藤10-9


3R 内藤はガードを下げてチャンピオンを挑発、前に出てくる坂田に変則的なフックをカウンターで浴びせる… 内藤は笑顔を作りながら坂田のジャブを鼻先でかわすと、鋭いボディー打ちを捻じ込み、さらにカウンターの左右フックを叩き込む… ドマジメなチャンピオン、坂田に対して、挑発を重ねながらトリッキーなボディ連打を捻じ込んだ内藤、物凄く調子が良さそうだ… 内藤の左ショートが顎先に入った途端、坂田が始めて後ずさり… 内藤が攻め込む…!!! 内藤はノーガードで口を開いてコンビネーション連打!!! 内藤10-9


4R その感性の赴くまま坂田の前進を捌く内藤に対して、坂田は延々と練り上げ続けてきた実直にして頑ななボクシングを貫こうと前に出る… 内藤が左右コンビネーションから右のフックをダブルで坂田の顔面に叩き込み、さらに、得意のそっぽを向いての左ボディーフック!!! 内藤のリズムで試合は進む… 内藤10-9



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5R なんとか流れを変えたい坂田… しかし、坂田に出来ることは延々と練り上げ、そして、研ぎ澄まし続けた「ラッシング地獄」に内藤を引きずり込むしかない… と、両者、ここへきて頭をぶつけ合っての接近戦の時間帯が増え始めた… 坂田のボディー打ちが度々内藤を襲う… 内藤、距離を保とうとせず、これに付き合う形で打ち合いを選択… 内藤がクリンチ!!! 坂田、ダブルの左ボディーから左右フックを捻じ込む!!! 内藤が下った…!!! 坂田、チャンピオンの意地ともいうべき、脅威の手数で内藤を追い込む!!! 内藤から笑顔が消えた… 坂田10-9


6R 坂田のラッシング地獄に付き合っては分が悪い、内藤は再び距離を残して長いワンツー、ロングフックでカウンター戦法を選択… しかし、坂田の全てを捌ききれるはずもない… 坂田も調子が上がってきた!!! が、ここで踏ん張ったのは内藤か? 内藤は前に出てくる坂田にパンチと一緒に身体も預け、その攻撃を寸断させると、再び長距離から身体ごとカウンターを打ち込み、有効打を奪いながら坂田に効果的なパンチを打たせないことに成功、さらに、クリーンヒットから連打を放ち、優勢をアピール… 内藤10-9


7R 両者頭をぶつけながらの消耗戦的打ち合い… ここは互角か…? いや、坂田がなんとか手数前進アグレッシブで上回ったか? 坂田10-9


8R 内藤がアウトボクシング、距離を残して変則パンチを放ち、坂田は愚直に前へ出続ける!!! 内藤のフットワークはまた躍動感を取り戻している… ゴング間際、両者それぞれビックパンチを捻じ込むも、有効打数では内藤が上回ったか? 内藤10-9



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9R 坂田の左瞼(額?)がバッティングで切れた… ドクターチェックを挟んで続行するも、物凄い出血だ… 内藤が大きく口を開いて闘志をむき出しにして変則強打を叩き込む!!! 坂田、自分の戦いが出来なかった… 内藤10-9


10R ラストラウンド!!! ポイント的に苦しい坂田、必死に内藤に喰らい付くも内藤の変則的な距離感と巧みなクリンチの前に優勢を奪いきるには至らず… 一方の内藤はその主導権を握り、有効打を奪いながら坂田の前進にを巧みに捌ききった印象が残った… 内藤10-9


HIGEGE91の採点 98-93 で、内藤大助選手の判定勝ち!!!


公式の採点 96-96、96-96、95-97 の 「0-1」で、チャンピオン坂田健史選手の初防衛成功!!!


むむむ、これは僕には内藤選手の勝ちに見えましたねぇ…


これ、当時はいろいろと物議を醸したそうですが、しかし、面白い戦いでしたねぇ…


内藤選手の強さは変則強打とその抜群の運動神経だけではなくて、その剥きだされた闘志も初々しくて、なんと言っても、強烈な自信が漲っていましたねぇ…


一方のチャンピオン、坂田選手、内藤選手の独特の間合いに自分のリズムを壊されてしまった場面が多かったですが、しかし、5Rの壮絶ラッシュ、まさに、必殺・蟻地獄ラッシュは後の強さの片鱗が見えましたね…


さて、それぞれの「初々しい才能の片鱗」が輝いていた日本タイトルマッチ、いかがでしたでしょうか?


やはり、こういう「凌ぎあい」があったからこそ、それぞれの『強さ』が磨かれたのだなぁ…と改めて感じますね。


うぅぅん…


感動的でした…


御愛読感謝


つづく