NHK新会長の会見発言)

 25日に行われた籾井勝人(もみい かつと)NHK新会長の就任会見での発言が物議を呼んでいます。報道によれば、籾井会長の発言には、次のようなものがあったようですが、昨年119日付の「今日の一言」で私が指摘した通り、籾井新会長の下で、NHKの安倍政権寄りの報道が懸念されます。

従軍慰安婦について、「戦争をしているどこの国にもあった」

靖国神社参拝について、「総理が信念で行かれたということで、それはそれでよろしい」

尖閣諸島などの領土問題について、「政府が右ということを左というわけにはいかない」

秘密保護法について、「秘密法は政府が必要と説明しているので、様子を見るしかない」

(各報道機関の報道振り)

 これらの発言に対し、各報道機関の報道振りが違っていることに注意をしておく必要があります。最近の各報道機関の姿勢が示されていると思います。

 【NHK】先ず、自らのトップが行った発言に対するNHKの報道は、見出しは「NHK籾井新会長が記者会見」と無味乾燥で、報道された発言内容も「放送法の順守が第一」「国際放送の充実」と物議をかもしそうな表現は一切使っていません。「会長発言には問題がある」と認識したからこそ、上記の発言がカットされたのではないでしょうか。

 【読売新聞】読売新聞の報道は、見出しはNHKの報道振りと同じく「NHK籾井新会長が抱負『放送法順守を第一に』」としていましたが、籾井発言内容については、「(領土問題に関して、新会長の)考えを示した」、「(韓国の姿勢に対して、新会長は)疑問を呈した」と、籾井会長の発言には何ら問題はないと言いたげな報道振りです。

【朝日・毎日新聞】他方、朝日新聞と毎日新聞の見出しは、類似の「NHK:籾井会長、従軍慰安婦『どこの国にもあった』」とし、籾井会長の発言内容に対しては、「政治的中立を疑われかねない不用意な発言を繰り返し、トップとしての資質も問われそうだ。」(毎日)、「公共放送のトップという自覚はあったのか。」(朝日)など手厳しい指摘をしています。

NHKに物申す)

基本的に、報道機関は「権力の監視者」であるべきです。放送法がNHKを含めた放送事業者に「政治的公平性」を義務付けているからと言って、「政府や政権に批判的な意見を報道してはいけない」ということではなく、むしろ、批判的な意見も好意的な意見も報道することによって、国民に情報を提供すべきです。その点、今回のNHKの「無味乾燥」な報道振りはとりわけ問題が大きいと考えます。

(了)