昨日(28日)、民主党所属の有志国会議員30人程度が、「脱原発ロードマップを考える会」設立準備会に集まり、同会を立ち上げることを決めました。これから同会への参加者を広く党内で募り、来週にでも第1回総会(設立総会)を開く予定です。


    この時期にこのような会を立ち上げようとしたのは、エネルギーや原子力発電について、政府が今月中にでも着手しようとしている原発の再稼働、7月の再生可能エネルギー買取り固定価格の決定、今夏のエネルギー基本計画の閣議決定などの重要な事項が、大きな枠組み(原発からの脱却をするのかしないのか、するとしてもいつまでにするのか)が示されないままに、なし崩し的に進められることを懸念するからです。


    準備会では、「考える会」に参加しようとする議員たちが問題意識を共有するための意見交換も行いました。その際、以下の文章がたたたき台的に使用されましたので、ここに掲載します。「考える会」でこれから議論されるべき事項を盛り込んだものですが、内容はこれから決定されるべきものです。議論の結果は、民主党の見解にできる限り活かされるように努力していきたいと考えています。

「脱原発」ロードマップを示そう!(案)

    

1、始めに

2011年3月11日、東日本大震災において福島第1原発の事故が発生し、周辺住民への大きな被害をもたらしただけでなく、国民全体に大きな恐怖を与えると共に、国民経済にも大きな悪影響を与えました。

原子力発電は、一旦事故が起これば無限大の被害が発生する可能性があり、かつ、放射性廃棄物の最終処理が確立できていない、或いは仮に確立できたとしても、1万年から10万年の管理が必要とされるものであることから、技術的、経済的に可能な範囲でできる限り早期に「脱原発」を実現すべきであると考えます。



原発による被害を受ける可能性が高いのは、原子力発電の利益を享受している現世代の人々よりも、事故のリスクに晒され、放射性廃棄物を大量に抱え込むこととなる「未来の世代」の人々です。私たちは、今意思決定することのできない「未来の世代」に膨大な付けを回すべきではない、と考えます。

2、原発再稼働について

このような状況の中で、現在54基ある原子力発電所のうち既に1基を残して53基が事故や定期検査で運転休止中であり、定期検査中のものについてその再稼働が問題となっています。政府は、事業者による検査終了の後で、地元住民の理解を踏まえて、内閣総理大臣、官房長官、経済産業大臣及び原発担当大臣の4大臣の政治的判断により原発再稼働の是非を判断することとしています。



原子力発電所の再稼働については、新「原子力規制庁」による管理・規制、より強化された安全基準によるチェックなど安全性の確保が大前提となることは当然です。しかしながら、将来の事故発生の可能性や放射性廃棄物の処理問題などの課題を考えたとき、私たちは、原発再稼働について国民の理解を得るためにも、「脱原発」について、具体的なロードマップ(工程表)を含んだ明確な方針を示す必要があると考えます。

3、省エネ、再エネについて

ロードマップを示す場合、多くの人々が指摘する「国民生活に必要な電力をどう確保するのか」について答えなければなりません。私たちは、その指摘に対しては、原発への依存度を低下させていく間、LNGによるコジェネ等による過渡的対応をしていくとともに、省エネや再生可能エネルギーを推進していくことが必要であると考えます。



この視点に立って、ドイツの例を参考にすれば、2020年に、現時点(2010年)と比較して省エネ20%かつ再生可能エネルギーシェアー20%、2030年に、同じく省エネ40%かつ再生可能エネルギーシェアー40%を達成することを目標にすることが適当であると考えます。また、その目標実現のためには、各種の政策手段(固定価格買取制度、プロジェクト・ファイナンス等)を集中投入していかなければならないと考えます。



この場合、例えば、2020年での再生可能エネルギーシェアー20%を達成するとすれば、「2020年までの間で、設備投資額約23兆円、就業増加数約252万人の政策効果が期待できる」とする有力な試算も存在しています。

4、使用済み核燃料について

さらに、以上のような政策を推し進めるに当たっても喫緊の課題となるのが、使用済み核燃料の処理問題です。使用済み核燃料(仏、英で処理中のものを含めて、我が国で約1万6千トン)プールは、危険な「剥き出しの原子炉」状態になっていると評されており、また、使用済み核燃料は、その行き場がなくなっている状況にあります。


水プールの残存容量は、総量で残り後5年、個別の原発によっては後1年数か月しかカバーできない状況です。この問題を放置しておくと、今後、地震、津波等の大規模自然災害やテロ活動があった場合、我が国が二度と立ち上がれない事態に至る危険性もあります。私たちは、この課題について、国が早急に全責任を持って取り組んでいく必要があると考えます。

5、提言

以上の状況を踏まえ、私たちは、以下の通り提言します。

〇〇年後の「脱原発」を達成する明確な目標を立て、そのロードマップを示すこと

省エネルギー及び再生可能エネルギーの推進のための明確な目標を示すとともに、目標実現のための政策手段を講じること

使用済み核燃料を可及的速やかに「乾式中間貯蔵」することを国が責任を持って推し進めること

以上』