電波法、NTT法等改正法案の審議


 今日、参議院総務委員会で、参議院先議となる電波法一部改正法案、電気通信事業
法・NTT法一部改正法案等の3法案の審議が行われました。これらの法案は、主とし
て、いわゆる「光の道」構想(すべての世帯において超高速ブロードバンド・サービ
スが利用されることを実現することを目標とする構想)を実現しようとするもので
す。私も答弁に立った法案審議の結果、3法案共に賛成多数で可決されましたが、今
日は、法案審議において論点となった主要な質疑・答弁の模様についてご紹介したい
と思います。


 先ず第1は、周波数オークションについてです。周波数オークションとは、「電波の
免許人の選定に際し、競売を実施し、最高価格を入札したものを有資格者とする制
度」です。民主党は、野党時代から、周波数オークションの実施を主張してきました
が、実施に向けては多くの検討すべき論点(例えば、落札額が高騰して事業者や利用
者の負担増にならないか、電波利用が資金力のある大企業の既得権益にならないか
等)があることも事実です。そこで、今回の法案では、「オークションの考え方を取
り入れた制度」の導入にとどめているのですが、この制度は、最近の携帯電話の通信
量が増大したことにより携帯電話用周波数を早期に確保する必要が生じたため、既存
の無線局(ラジオマイク、業務用無線、電子タグ等)の利用者が別の周波数に引越し
をするための費用を携帯事業者が負担してでも、周波数の再編を迅速に行おうとする
制度です。引越し費用として多額の負担をすることを申し出た事業者が有資格者とな
るのですが、引越し費用ですから自ずとその上限額があり、当局がその上限額を入札
の上限額として定めることになることから、複数の事業者の入札額がその上限額に
揃ってしまう可能性があります。その場合には、他の要素(例えば、人口カバー率の
高低等)で審査を行うことになるので、いわゆる「オークション」とは違ってくるの
です。各党の議論を聞いていますと、野党にはオークションには消極的な論調が多
かったように思いますが、「オークションの考え方を取り入れた制度」には賛成をし
てくれました。


 第2は、NTTの組織形態の在り方についてです。NTT東・西は、ボトルネック設備を圧
倒的に保有していることから、その設備部門が他の電気通信事業者と接続するに当
たって、自らの営業部門と他の電気通信事業者との間に差別をしない「接続の同等
性」を確保することが義務付けられています。今回の法改正では、「接続の同等性」
をより高めるなど電気通信事業者間の適正な競争関係を一層確保するために、NTT
東・西においては、その設備部門とその他の部門との「機能分離」をすることとして
います。総務省に設けられた「タスクホース」は、法案作成の前段階での検討におい
て、ソフトバンクが提案した「光アクセス会社構想」を含めて「資本分離」案や「構
造分離」案も議論しましたが、事業者間の設備競争の促進の観点、制度改正実現のた
めの時間やコストの観点など総合的に検討した結果、「機能分離」が現時点において
最も現実的かつ効果的と判断しました。その判断に基づいて提案されたのが今回の法
案ですが、「機能分離」が期待された効果を上げるためには関係者による今後の努力
が必要は言わずもがなだと思います。


 第3は、震災等の災害発生時の通信確保についてです。災害発生時には、主に、安否
確認等のために被災地への電話が集中したり、通信設備等の破損や長期の停電によっ
て通信設備が稼働しなかったりで、通話・通信ができなくなることがしばしばありま
す。災害時にもできる限り通話、通信が確保できるように、①輻輳(通信量の急増に
よって電話がかかりにくい状態)回避のため災害時の通信量を一部抑制すること、②
移動電源車や車載型基地局など災害時に対応する設備を整備すること、③通話不能地
域に衛星携帯電話、業務用無線、トランシーバーなどを貸与すること、④「災害用伝
言ダイヤル」、「ツイッター」等のサービスを活用すること等が行われています。し
かしながら、まだまだ十分な対策になっているとは言えません。そこで、私の発案
で、「大規模災害等緊急事態における通信確保の在り方に関する検討会」を今月8日
に立ち上げ、①災害時の輻輳状態への対応の在り方、②基地局や中継局が被災した場
合における通信手段確保の在り方、③今回の震災を踏まえた今後のネットワークイン
フラの在り方、④今回の震災を踏まえた今後のインターネットの活用の在り方等を検
討することとしました。結論が得られたものから随時実行に移していきたいと考えて
います。


 少し専門的・技術的な話でしたので、とっつきにくかったかもしれませんが、我々の
生活に切っても切れない情報通信に関して少しでも興味を持って頂ければ幸いです。