本日昼、鳩山内閣は、2020年を目途とする「新成長戦略(基本方針)・輝きのある日本へ」を発表しました。私は、総理大臣直属の「国家戦略室」のサポートチームの座長として、この「新成長戦略」の策定のお手伝いをし、本日の発表会にも出席しました。「民主党にはマニフェストはあるが、全体像が見えない」、「民主党に成長戦略がない」等の批判を受けてきましたが、今回の「新成長戦略」は、その批判にある程度応えることができるものと思います。

 「新成長戦略」も成長戦略ですから、これまでの同種の成長戦略でも盛り込まれた成長率等の目標値は示しています。例えば、20年度までの平均成長率は、名目3%、実質2%を上回り、20年度の名目GDPを650兆円(09年度473兆円)程度とし、失業率は3%台(現在5%超)への低下を目指しています。しかしながら、その内容は、鳩山総理の言葉を借れば、「これまでの供給サイドに立った『経済のための人間』ではなく、需要サイドに立った『人間のための経済』を理念にした成長戦略になっています。

 具体的には、これまでの成長戦略を、80年代までの公共事業による経済成長を目指した成長戦略を「第1の道」と呼び、00年代の「構造改革」として進められた生産性の向上を目指す供給サイドの成長戦略を「第2の道」と呼んだ上で、いずれの道も現在の日本では適合せず、「第3の道」を選ぶ必要性を訴えています。「第3の道」は、「新たな需要の創造」により雇用を生むと共に、成長を支えるプラットフォーム(基盤)をシッカリ整備しようとするものです。

 「新たな需要の創造」では、日本の強みを発揮する分野として「環境・エネルギー」と「健康(医療・介護)」を、フロンティア(先端分野)の開拓として「アジア」と「観光・地域活性化」を中心に考えています。また、成長を支えるプラットホームとして「科学・技術」と「雇用・人材」を中心に考えています(以上の6分野における具体的な政策事項については、私のホームページに掲載している「新成長戦略(基本方針)」を参考にして下さい。)。

 この中で、成長プラットホームとしての「科学・技術」や「雇用・人材」の整備が経済成長において重要なことは分り易いのですが、「新たな需要の創造」における各分野の需要は、少し説明の必要がありそうです。

 「環境・エネルギー」は、その中心は地球温暖化(エネルギー)対策です。鳩山総理が、「日本は、20年に対90年度比25%の削減を目標とする」旨国際的に宣言しましたが、そのことは、世界最高水準の低炭素社会の実現を目指すことに繋がります。この目標に向かって日本社会が動き出すと、生活関連、運輸部門、産業部門、まちづくり等幅広い分野で新しい需要が生まれますし、加えて、環境技術などは海外に向けての輸出拡大にも繋がります。

 「健康(医療・介護)」は、世界一の健康長寿国となった我が国が、高齢化のフロンティアを世界に先駆けて開拓していこうというものです。何もなくても「健康」に対する需要は拡大するでしょうが、国民の高い「健康」指向を考えますと、より効果があり、より快適な製品やサービスが提供できるようになれば、医療・介護・健康関連産業がより一層成長することが期待できます。当然、今後世界的にも高齢化が進めば、我が国の先駆けが強みになってきます。

 「アジア」は、経済成長著しいアジアの成長を日本の成長に結び付けていこうというものです。アジアは、近時のサブプライム・ローン問題を乗り越え堅調な経済回復をしており、中間所得者層の急速な拡大など日本にとって大きなビジネス機会となっています。そのビジネス機会を活かせるよう、貿易・投資の自由化を進め、知的財産権の保護体制を構築する等によってアジアを切れ目のない市場にして、アジアの需要を取込んでいこうというのです。

 「観光・地域活性化」は、「アジア」が需要を海外に求めるものであるのに対し、国内の需要をより一層掘り起こしていこうというものです。特に、観光は、我が国の自然や文化遺産などの観光資源を活かして外国からの観光客を増やすことに加えて、「ローカル・ホリデー制度」などで国民の休暇取得の分散化を図ることで、安定的な業務を確保して、地域を支える観光産業を育てていこうというものです。第1次産業の再生・成長も重要な成長戦略となります。

 本日発表された「新成長戦略」は、「基本方針」に過ぎませんが、鳩山政権が目指す戦略の方向性がよく示されていると思います。その上に立って、この「基本方針」を更に「肉付け」する作業が来年初めから始まります。来年の6月にはその「肉付け」作業を終えて「新成長戦略」の本体を取りまとめる予定としており、その「新成長戦略」本体は、来年7月の参議院議員選挙のマニフェストへと発展していくことが期待されると思います。


   資料はこちら、 新成長戦略(基本方針)のポイント

             新成長戦略(基本方針)(平成21年12月30日閣議決定)