いよいよ明日、鳩山新政権による来年度予算の概算要求が締め切られることになります。例年であれば、予算決算及び会計令(第8条)に基づき、各省庁は、8月末までに財務大臣に概算要求をしなければならないことになっています。ところが、今年は、8月30日に総選挙が行われて9月16日に政権が交代したために、前政権下で行われた予算要求は、大幅な見直しが必要となり、改めて、概算要求の期限が明日に定められていたのです。

 これまでの政府の予算編成は、大まかに言って、「概算要求基準の作成」→「各省庁による概算要求」→「財務省による査定(調整)」→「財務省原案の作成」→「予算案の閣議決定」という流れで進められてきました。そこで、今日は、民主党の新政権下における予算編成のあり方について考えてみたいと思います。

(政治主導の予算編成のあり方)

 新政権下での概算要求でも、予算要求についての一応の考え方は示されました。例えば、先月29日に閣議決定された「平成22年度予算編成の方針について」では、①マニフェストに従い、新規施策を実現するため、全ての予算を組み替え、新たな財源を生み出す、②各大臣は、既存予算についてゼロベースで厳しく優先順位を見直し、できる限り要求段階から積極的な減額を行うこととする等としています。

 しかしながら、このような方針では、具体的な予算要求の指針とはなり得ません。そこで、結局、藤井・財務大臣は、昨日の閣僚懇談会で、「マニフェストに明記していない新規施策を要求する場合、既存事業の削減で見合いの財源を確保すべし」と指示しています。つまり、各省庁は、自らの今年度予算の規模を前提として、その規模の範囲内で予算要求をしなければいけないのです。

 官邸主導での政治や予算編成を目指そうとした民主党政権であるにも拘らず、これでは、各省庁の縦割り行政(予算)を克服することができるのか危ぶまれます。

 「各省庁からの予算要求の後、査定(調整)の段階で、各省庁の縦割りを排する判断をしていけばよい」との考え方もあり得るかもしれませんが、それでは、予算編成の作業が二度手間になりそうです。元々、民主党のマニフェスト(政権構想5策の第3策)でも、「官邸機能を強化し、総理直属の『国家戦略局』を設置し、・・・政治主導で予算の骨格を策定する。」とされていますが、まさか、「予算の骨格」を予算調整後に作ろうということではないと思います。

 今回の予算編成は、政権交代直後で時間的余裕もないので、民主党が目指そうとする予算編成ができないことは仕方ありません。そこで、今後の話になりますが、私なりに「あるべき政治主導の予算編成の手順」を考えてみました。すなわち、「概算要求の基準として、政治主導で『予算の骨格』(政策分野別の予算配分と重点施策)を示して、その基準に応じた各省別の予算要求案を数案提出させ、その数案の中から最良の案を政治的決断を持って選択する」というものです。

 私の案で行けば、予算編成において政治が主導する場面は大きく2回あります。一つは、概算要求の基準として「予算の骨格」を策定する場面であり、もう一つは、数案ある予算要求案の中から一つを選択する場面です。後者の場面では、今の財政事情からすれば、必ず大幅な予算削減を伴う制度改正・法律改正が行われざるを得ず、その制度改正・法律改正を実現しようとする政治的決断は、政治家でしか下せないと思います。

(政府・与党一元化における予算編成のあり方)

 新政権では、予算案の作成を含む政策決定は、政府・与党一元化の下で行うことなります。そこでは、政策決定は、あくまでも各省庁の政務三役(大臣、副大臣、大臣政務官)が行い、必要に応じ、閣議決定で最終決定するということになります。そして、政務三役の政策決定の前には、与党の国会議員が参加する各省政策会議(予算案の作成では、財務省政策会議)が与党議員からの意見聴取や意見交換のために開催されることが期待されます。

 この点に関して、一昨日の財務省政策会議で「予算編成に当たって、政策会議はどのような役割を果たすことになるのか」質問をしましたが、「走りながら考えたい」との回答しか返って来ませんでした。

 予算の財務省原案ができてから政策会議を開いても、ガス抜きや追認のためのものにしかならず、遅すぎます。各省庁の予算の内容は、各省庁の政策実施のために必要なものであることから、各省庁の政策会議に委ねられるにしても、概算要求基準としての「予算の骨格」や財務省原案における「予算の大枠(予算規模、国債依存度等)」は、財務省政務三役が決定する前に、財務省政策会議で大いに議論されるべきものであると考えます。