事実と違う / FP八ツ井慶子編 | 池上秀司のブログ

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なかなかのクオリティの記事がありました。事故レベルではないでしょうか。


20代のうちに覚えたい「住宅ローン」基礎知識

金利や支払い方法の違いを知っていますか

 

以下は事実と違います。

 

複利は、利子が利子を生む

 

2.住宅ローンは「複利計算」

 

住宅ローンについては、いろいろとわからないことが多い。利子の計算方法「複利」についてもそのひとつだといえるだろう。

 

「利子には単利と複利がありますが、住宅ローンは複利。人類最大の発明ともいわれる『利息が利息を生む』という仕組みです」(八ツ井氏)

 

わかりやすいように、運用で考えてみよう。仮に100万円を運用したとすれば、年利が2%なら、1年後の利息は2万円となる。このとき、単利であれば、2年後は100万円×2%×2年で、利息は4万円。3年目は6万円、4年目は8万円……となる。

 

これに対して、複利は、利息が元本に組み込まれることが特徴だ。1年目の利息は単利と同じ2万円だが、2年目になると利息を足した102万円に2%の利息がつく。つまり(100万円+2万円)×2%で2万400円の利息、3年目は(102万円+2万400円)×2%で2万808円といった具合に元本が増えていき、それに応じた利息が得られる。逆に借り入れの場合は、元本を返していかなければ、利息が複利で増えていくことになり、利子を含めた返済額は大きくなっていく。


どこが事実と違うかというと、住宅ローンは複利計算ではありません。元本を返さなかった場合は、その元本を返済するまで、年14%程度の金利で計算した遅延損害金を支払うことになるというのが実態。つまり、記事は関係ない説明が長くて、結論が間違いだったということです。


以下はじぶん銀行のHPのスクリーンショットですが、わかりやすいですね。


上記に近い数値になる例として、2,500万円・25年返済・1.7%(月返済額102,350円)の291ヶ月(24年3ヶ月)目の返済で図解します↓

 


通常の返済の利息(1,438円)は「その時点の残高(1,015,574円)×金利(年1.7%÷12)」で計算されます。

 

一方、291回目の返済が滞った場合、遅延損害金は「その月に返済するべき元金(100,912円)×遅延損害金金利(14%)の日割り」となります。残りの残高914,662円には「期限の利益」がまだあるので返済しなくてよく、遅延損害金の計算には含まれません。遅延に関しては、あくまで「その月に返済するべき元金」だけが関係します。もちろん、将来は、「その月に支払うはずであった利息」も「遅延損害金」も両方を支払う義務があります。

 

通常返済と遅延では、「その時点の残高」⇔「返済すべきであった元金」と、金利を掛ける場所が異なり、その金利も大きく異なりますが、その掛け算はごくごく単純です。「利子を含めた返済額は大きくなっていく」ということはその通りですが、住宅ローンの計算において、元金だけでなく利息にも金利を掛ける「複利」は成立しません。「わかりやすいように、運用で考えてみよう」とありますが、運用と借入は別なので、運用で考えるからわからなくなってしまうのです。

 

それなりの年齢になってまで、このような誤解を与えてはよろしくないので、20代のうちに正しい知識を身につけることは大切だと再認識しました。この記事は、それが狙いだったのでしょうか。

 

ということで、私のギター動画の中から、以下の曲の歌い出しの8小節を、この記事に関わった方達に送りたいと思います。