数字で確認 その2 | 池上秀司のブログ

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ファイナンシャルプランニングに関することを中心に、好き勝手に書きます。

たまたま見かけた記事ですが…

退職金はどうするのが得? 毎月分配型投資信託vs銀行預金

最後の応用問題というのに引っかかりました

Q.車を買い替えることにした。住宅の頭金用に積み立てている定期預金を解約すれば全額現金で買えるが、マイホームの夢が遠ざかる。そこで定期預金には手を付けず、オートローンを組んで車を買った。この行動は損か得か。

A. 損。定期預金の金利よりオートローンで支払う金利のほうが高い。

つまり、「車はローンの利用ではなく現金で買うべきだ」という主張ですが、この記事には欠落しているものがあります。それはなんでしょうか?答えは

住宅ローンの支払利息

です。記事の通りに車を現金で購入した場合、オートローンでの利息負担は発生しませんが、その代わりに住宅ローンの借入額が増え、その分の利息負担が生じます。「住宅の頭金」という言葉が出てくるのですから、そこまで考えるべきです。

車の購入費用を200万円として、それを現金で購入。そして、住宅ローンを3,000万円(1.8%・35年返済)とした場合、支払う利息は約1,046万円となります(下図参照)。


では、オートローンを利用した場合はどうなるでしょうか。オートローンの金利を3%、6年返済とすると、確かに19万円程度の利息負担が生じます。しかし、もう一方の住宅ローンは借入額を200万円減らすことができます。同じく1.8%、35年返済で考えた場合、支払う利息は976万円。オートローンと住宅ローンの利息合計は995万円ですから、オートローンを利用しないケースよりも利息負担は約50万円少ないという結果が得られました(下図参照)。


このように、住宅ローンの利息負担まで考慮すれば、「オートローンを利用した方がトク」という考え方もできるのではないでしょうか。

もちろん、これは単純計算ですから、オートローンの返済額は住宅ローンを組む際の「返済比率」に影響を与える(非常に重要!)、結局、車はいくらなのか、住宅ローンはいくらなのか、何年で返すのか、金利はどうなるのか、といったことは考えなければいけません。

とはいえ、これら種々の問題を無視して、数字を提示することなく、定期預金の利息との比較だけで損得を断言するのは、お金を扱う人間の振る舞いとしていかがなものでしょうか。

「騙される」などと冒頭で脅しをかけた後、「メンタルアカウンティング」といった耳馴染みのないカタカナを使えば「それっぽく」はなりますが、結局のところお金は数字です。数字のない記事は誤解を招きます(表現を変えると、誤解をさせたい場合は具体的な数字を出さない)。

一般消費者の皆さんにおかれましては、各自のケースを数字で確認することをお勧めいたします。そして、そのお手伝いのために我々ファイナンシャルプランナーがおります。

余談ですが、この記事を監修している大江英樹さんという方は、私が最も軽蔑している自称保険コンサルタントの後田亨さんと仲良しです。当ブログの懸命な読者の皆さんであれば、これだけで十分でしょう。