実は一番損する保険「掛け捨てではない保険」の問題点
定期保険と養老保険の単純比較で結論を出すなど安易というか雑というか、こんなので達人を名乗っては、本当の達人に大変失礼です。
一方、私がご協力させていただいた、日経トレンディ10月号の「どっちがトクする、お金の○と×」という特集では「リスクを取った運用をするのであれば別だが、確実に貯めたい貯蓄なら積立型の保険が有利」と結論づけています。詳細はそちらをご覧いただくとして、そこからもう少し発展させた設計を考えてみたいと思います。
現実の保険設計では以下のような積立型と掛け捨て型の組み合わせもあり(終身保険プランと称します)、過去の私の通ってきた保険の世界では、そう珍しくない設計です。
35歳・男性
終身保険:保険金額1,000万円(65歳払込)
収入保障保険:年金月額5万円(65歳払込)
終身保険の保険金を一時金形式、収入保障保険の保険金を年金形式で受け取った場合の、保険金受け取り総額推移をグラフにしてみました。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20151019/06/hideji-ikegami/6a/01/p/t02200132_0480028813458526986.png?caw=800)
契約直後では終身保険1,000万円と収入保障保険1,800万円(60万円×30年)、合計2,800万円の保障となり、時間の経過に伴い毎年60万円ずつ受け取り総額は減っていきます。65歳以降は1,000万円の終身保障です。
次に保険料を考えてみます。簡単にインターネットで試算できるということを考慮して、終身保険をオリックス生命、収入保障保険をアクサダイレクト生命で調達したとすると、月払保険料の合計は21,780円になります。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20151019/06/hideji-ikegami/59/20/p/t02200057_0597015513458526983.png?caw=800)
収入保障保険は掛け捨てですが終身保険は解約返戻金があります。このプランで65歳の払込満了直後の解約返戻金は約809万円です。それまでの2つの保険の総支払保険料はいくらかというと約784万円。ですから、掛け捨てゼロどころか、解約返戻金が2つの保険の保険料を約25万円上回っています。
なお、終身保険単体で見ると解約返戻金が100万円程度増えているので、「一時所得」としてを他の所得と合算し、所得税計算に含みます。
【一時所得の計算式】
(解約返戻金-総払込保険料-50万円)×1/2
では、終身保険を定期保険(1,000万円:65歳満了)に変えてみたらどうなるでしょうか(定期保険プランと称します)。保険金の推移は以下のような感じ。終身保険プランと異なるのは65歳以降の保障の有無です。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20151019/06/hideji-ikegami/aa/61/p/t02200132_0480028813458526985.png?caw=800)
定期保険は同じオリックス生命の商品を選んでみましたが、月払保険料は3,066円。収入保障保険と合算すると5,156円になります。30年間で総額いくらの保険料負担になるかというと約186万円。65歳まで保険を継続すると、これだけの保険料を掛け捨てることになります。しかし、定期保険プランを選べば終身保険プランより保険料負担が少ないので、月々16,624円(21,780円-5,156円)、30年で約598万円を運用原資とできます。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20151019/06/hideji-ikegami/d5/07/p/t02200136_0478029613458526984.png?caw=800)
これを終身保険の解約返戻金808万円から差し引くと210万円。定期保険プランが終身保険プランに近い運用成果を挙げるにはこの程度の運用益を獲得する必要があります。単純に2%複利で計算すると776万円(受取時20%課税)になるので、もう少し獲得できるとトントンになります。
この目安の目標利回りが「高い」「低い」の判断は、各個人によって異なると思います。
ちょっと長くなるのでここで一旦終わりにして、続きは次回に。