「どうも〜、チャーリー・マンガーですぅ」
「ウォーレン・バフェットですー」
「コンビ結成55年目のバフェット&マンガーです〜。よろしくお願いしま〜す」
「・・っていきなりなんやねん。なんで電飾キラキラの派手な舞台にワシら2人で立たされなアカンのや?」
「それには・・深い理由があるんやで」
「まずはその理由とやらを聞かせてくれや」
「なあウォーレン、あんた最近、ジャパンの5大商社を100億ドルくらい『大人買い』しとったやろ?」
「たしかに試しに三井と三菱と住友と伊藤忠と丸紅に合計1兆円以上の資金をブチ込んだら、あっちゅう間に2兆円を超えてウハウハやわ」
「やっぱそうか。ジャパンの『ソーゴーショーシャ』は何がそんなに凄いんや?」
「日本のソーゴーショーシャは右から来たものを左に受け流すだけのムーディー勝山的な卸売業じゃなくて、世界中の重要なビジネスにドカンと投資した上で自社グループの人的資本も猛烈に投じることで泥臭く成功率と収益率を高める、一朝一夕には真似ができへんファンタスティックな投資会社なんや。その凄さに気づいたからには、このビジネス全体の1割はワシらが長期保有すべきやと思たんや」
「なるほど。しかも今年の春にあんたがニッポンに行った際は5大商社のトップと面会までしてきたんやろ?」
「せやな。全社と面会させてもろたわ。みんな礼儀正しくて慎み深いCEOやったから、気分が良くなって『もっと日本に投資するつもりだ』とか口走ってしもたわ」
「ウォーレン、そこまで本気で日本に投資し始めたんなら、もっと日本の文化を深く理解せなあかんやろ!」
「あー、それで今ワイらはこのキラキラした壇上で日本特有のコメディである『Manzai』をやらされとるいうわけやな!」
「そういうことや。アメリカにも1人でしゃべくる『スタンダップ・コメディ』てのはあるけどな、ニッポンは2人でしゃべくる『マンザイ』いう文化が異常に発達しとるんや」
「せやから、もし来年5月のバークシャー社の株主総会までワシらが2人とも生きてたら・・」
「コンビ結成56年目、93歳と100歳のバフェット&マンガーで世界最高齢のしゃべくり漫才をせなアカンちゅうことか」
「そういうことや。今日はそのお稽古や!」
「じゃあチャーリー、まずはManzaiのベイスィック・ストラクチャーを教えてくれや」
「マンザイの基本構造? 2人のテンポの良い会話で展開していくんやけど、1人がボケたらもう1人が素早くツッコむ流れが基本やな」
「なるほど、だんだんわかって来たで。それじゃチャーリー、最後が『ウォーレン・バフェットか!』のツッコミで終わる漫才っぽい会話をひとつ作って披露してくれ」
「会長はいつもムチャ振りしますな。えーと・・・よっしゃ1つ思いついた!」
「Go Ahead!」
「おじさーん、この350円の商品を2つください。あっ、ハイ1000円」
「あいよー。綺麗なおねいさんいつもありがとねー、ハイおつり300万円」
「八百屋か! ていうか、このご時世にまだバーコード決済も導入してへんのかい!」
「ごめんちゃーい。おっちゃんの頭は禿げ散らかしたバーコード状態やけど、バーコード決済のことは全然ようわからへんの」
「しゃーないなー。でもおっちゃんおもろいからまた来るわ!」
「まいどありー!」
「・・うーむ、この小売業者はDX時代に逆行した顧客との親密な交流を自社ビジネスを守る深い濠として繁盛しとるようやな。よっしゃー、ワシが会社まるごと買ったるわ。ハイ300億ドル」
「ウォーレン・バフェットか!」
「・・それ、なんかワシが悪者の金持ちみたいやな。もっと聞いた人が親しみを覚えるようなヤツを1つお願いしますわ」
「うーむ・・・もう1つ思いついた!」
「Go Ahead!」
「好きな食べものは?」
「チェリーパイ」
「欧米か!」
「好きな飲み物は?」
「チェリーコーク」
「ウォーレン・バフェットか!」
「ジャパニーズコミーディアン、タカ&トシの漫才ネタを研究してそのパロディで来るとはお主もなかなかやりおるな。確かにワシは今でも1日5缶のチェリーコークを飲み続けながら長生きしとるけど、その話はあまりにもマニアック過ぎて日本人は知らんやろ」
「それもそうやな。じゃあ敢えてフツーに会話しよか。ワイが個人投資家になったつもりでウォーレンに質問するから答えてや」
「ええで」
「ではウォーレン、投資の秘訣は?」
「そんなのカンタンやろ。『価値>価格』の差がガッツリ開いた資産、いわゆる安全余裕度が高い資産を見極めて投資するだけや」
「例えば株なら、価格は株価を見りゃ分かるけど、価値はどないして見積もりゃええねん?」
「それはイントリンズィックバリュー、本源的な価値を見積もるんや。具体的には、その会社が株主に将来もたらすキャッシュフロー全てを現実的に想定してから、それら全部の現在価値を合計すりゃええだけや」
「その計算、難しいんとちゃいますか?」
「まあ将来のキャッシュフローを現在価値に割り戻すのは面倒やけど、エクセルを使えばカンタンや。それよりも、計算の前提となる今後の利益の成長率を大きく見誤ることがないように、様々な会社のビジネスモデルの本質を見極めるほうが遥かに難しいで」
「・・・いまの話、あまりにマニアック過ぎて、フツーの個人投資家は『ちょっと意味わからない』いうとるやろな。2023年末のM1グランプリの最終決戦で連続ファイナリスト『さや香』がやった『見せ算』いう算数レベルのネタでさえ滑っとるんやから」
「そない言われても困るでチャーリー。いったいワシは何を話せばええんやろか?」
「もっと分かりやすい感じの投資の秘訣を話せばええんですわ」
「じゃあ、とっておきのメッチャ単純な投資の秘訣を話そか」
「よし、それ聞かせてくれや」
「まず、ニュースは良く見てるけど少し頭が悪そうな、大衆迎合的で投資経験が少ないお喋りなオジサン・・・仮に『トム』としよう・・・をご近所で見つけるんや」
「そ、そういうトムみたいなオジサン、世界中のあらゆる国と地域に結構いそうやな」
「ほんで毎月必ず、そのトムに『いまは株を買う時期だと思いますか?』ってリスペクトを持って質問するんや」
「リスペクトを持って質問ね。それで?」
「トムが『まだ買う時期じゃない』と偉そうに講釈を垂れてる間はコツコツ買い続けて、それが『いまは買う時期だ』と強気に変わったら買うのを一時停止してコツコツ売り続ける。これを継続的に実践したらきっとメッチャ儲かるで」
「なるほど〜・・・ていうかあんた、そのトムのこと全然リスペクトしてへんやろ!」
「いやいや、極めて貴重な情報を提供してくれる人としてリスペクトしてまっせ」
「でもさっき、トムのこと『少し頭が悪そうな』いうてバカにしてたやろ」
「いやいや、知性と人間性は比例せえへんから。ウチのおかんも多くの人からリスペクトされてたしな」
「でもさっき『大衆迎合的な』とも言うてたな。トムのこと『株価が安いときは不安を煽る悪いニュース多く流して、株価が高いときは浮かれた良いニュースを多く流す』マスコミの情報に愚弄されて、常に投資判断を誤るアホな大衆の代表として見とるやろ!」
「・・やっぱバレてたか」
「今ここで世界中のトムにあやまれ!」
「トムごめん。いや、トムありがとう。いつも愚かな君たちのお陰でワイらは・・」
「もうええわ」