国道289号線 福島県 四時トンネル旧道 | Hi-ROAD

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道を走り続ける者の記録。

探索日:2013年3月18日


今日は風が強かった。


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常磐道をひた走る車を包み込むような砂埃と橋の上ではハンドルがとられるような強風。


そして夕方からは雨の予報。


探索を止めるか、明日にするか、悩んだ末、雨上がりよりもいいだろうと思い今日にした。


行く場所は福島県いわき市、四時湖(しどきこ)。


いくつもの気になる旧道の多いこの国道289号線を地道に探索していく第一弾とした。


地図で場所を。


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↑まずは全体で約5km程の探索ルートのうち前半の2km弱(赤い線の部分)を見てもらいましょう。


赤線が探索ルート、「川部町」と書かれている南側から進入して「川平」と書かれた北へ抜けるルートを取ります。


見てのとおり四時トンネルが建設されることによって旧道となった国道です。


逆を言えば当時の国道が危険であったため四時トンネルを建設したと。


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では↑「序盤の地図」をアップで。


赤い線が探索ルート、矢印が進行方向。


ほかに現地に立って見つけたルートが2つ。


黄線の「立入禁止」と書かれた道。


緑線の「ダム専用道路」



トンネル手前も工事中で片側通行中、様子から見るにカーブを曲がってトンネル直前でトンネルを視認するルートではなく、道を直線的にしてトンネルがあることをかなり前から確認できるように道を付け替えていました。


2005年時点でもここは国道から外されているが、一般道として書かれていた。


それが2012年にはすでに点線として書かれている。


つまり車が通る可能性は限りなく低い。


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では四時トンネル手前の写真から。


大きく中心を占めている道路が現国道289号線。


車の止まっている位置まで行けば四時トンネルは見えるのだがここからでは見えない。


なので、


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こっちに道を建設しているのだろう。


この道が共用されればトンネルは少し遠くからでも確認できるようになる。


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そして「序盤の地図」の黄線で記した道。。。


そう!右の登っていく道。


未舗装の立ち入り禁止。


やばい、確認したい!


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現道と旧道の位置関係。


四時トンネルが建設されこれから入る道は旧道となった。


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四時トンネルは1992年2月に竣工した1.4km程のトンネル。


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現国道から旧道に入り振り返ったところ。


トンネルの上まで高度を上げていく。


現国道を挟んだ向こう側にさっきの立ち入り禁止の道がさらに上へ登っていくのが見える。


残念ながら探索を後回しにした結果今日は何も見ることができないまま終了した。


後日の対象となる。


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上りきってすぐ目に入ってきた「通行止」


点線はこれを意味していたのか。


区別する意味で通行止めのこちら側を国道289号線旧道、ゲートより向こう側を廃道と呼ぶことにします。


探索から帰り四時トンネルについて調べていたら、2003年当時の写真を掲載しているブログを目にしました。


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↑10年前(2003年)はまだ100m先までは入れたようです。


車を止めてもうひとつ目に付いたものがある、それが「序盤の地図」の緑線で記した道だ。


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これだ。


高度を維持する廃道と、もうひとつダムに向かって降りていく道がある。


これも地図にはなかった。


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崩落の恐れ、それは踏み込んでみるとわかる。


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廃道というにはまだやさしい表情、そして2つに分かれる道。


さっきのダムに向かって降りていく道はダム専用道路だろう。


もしかしたら「片倉ダムに消える道」 のようにダムに着水する道が見られるかもしれない。


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道は少し歩くと2つに分かれた、左の道はガードレールで塞がれている。


が、様子がおかしい。


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↑これも比較のために10年前(2003年)の写真をお借りしました。


このときはまだかなりダメージはあるものの路面は健在。


そのダメージはまた後ほど説明します。


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現在はご覧のとおり路盤は沈下していて、路盤を固めていたコンクリート壁だけが元の位置に留まっている。


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道を支える崖側の法面は崩れ去った地面から剥がれて崩壊。


路面のアスファルトも粉々になっている。


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ガードレールは何とか続いているものの、車の転落を防ぐ役目も路面が消滅してしまっては支えを失い、ぐにゃぐにゃに折れ曲がりながらかつてここに道があったことだけを知らせるものに過ぎなくなっている。


とりあえず全体的なダム専用道路状態をつかむために廃道を進むことにした。


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分岐から少し進んだ所に崩落箇所もある。


崩落しているから安全を確認して進む必要があるが、そこを抜ければ安心というわけではない。


この道のすべての箇所にこうなる可能性を秘めているのだ。


植物の侵食はあるがまったくの荒れ放題ではない。


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最初に迎えてくれたのは「203」のキロポストだ。


現国道289号線にあるものと同じもの、つまりここがかつての国道だったことの証だ。


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路肩はところどころ崩れ、アスファルトの下は空洞になっている。


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ここにはいくつもの看板が残る。


さびて折れ曲がってしまったものも。


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半分を過ぎたあたりから高い木々が多くなり見通しのいい道ではなくなる。


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2つ目のキロポストに迎えられたあたりから道は怪しさを増した。


なかにはこんなものも。


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「前橋営林署」と書かれた木標だ。


今は営林署といわれる部署はないので引っかかったまま残り続けているのだろう。


目も鼻もアレルギーに侵されている自分でも山の中は比較的なんともない。


杉林の中を進む。


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いい廃れ具合だ。


強風にあおられた木々が擦れて、まるで犬か何かが「くるるる」と鼻を鳴らすような音を立てる。


最初は歩くのを止め辺りを注視していたが、それが木々のいたずらだとわかると少し安心した。


が、あまり心地のいいものではない。


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路面が見え隠れするくらいの落ち葉などがあると雰囲気がでる。


かつてここを車が行き来していたのかと思うと。。。


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この感じもしかしてダム関係の車両は通行してるのかもしれない。


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程なくしてゲートが。


この場所は現国道と接近していて時たま車が走り抜ける音が聞こえる。


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ゲートを抜け(ここから名称を旧道にします)旧道から現国道を見下ろす。


ここには現道と旧道をつなぐ道がある地図上の「川平」と記されている地点。


ここから先の旧道は車で入れそうだったので、いったん車まで引き返しこの先は車両にて進入することにした。


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今来た道を車まで引き返す。


ダム専用道路を確認するために。


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近くで見る専用道路。


はがれているという表現が適当か。


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葉が無いとはいえ大量の枝で視界が効かない、とにかくすべてがぐちゃぐちゃである。


ガードレールでふさがれたその道に足を踏み入れる。


枝を避けて、粉々のアスファルトの上に立ち、1歩そして確認後1歩と踏み込む。


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9歩目を踏み出したところで「ゾクッ」としたのでカメラを構えて記録した後すぐに引き返した。


その時の正直な気持ちは、ただただ砕けたアスファルトを見つめ、このままこの道を進みたいと思った。


進めなくなる地点まで。


もしかしたら「そこ」までいけたのかもしれない、でも「ゾクッ」は6感なのかもしれない。


なんとなく引き込まれそうな気持ちから我に返った。


駐車場から俯瞰で見れるので何枚も写真を撮る。


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さっきは気づかなかったが、廃道とダム専用道路の分岐近くに木々の中に石の何かが見えている。


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ズームで寄る。


見事にコンクリートの壁が剥がれ落ちている。


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黄色の鉄骨はおそらく崩落前からの処置で、法面を補強したものだろう。


茶色の鉄骨はよくは分からないが、コンクリートの中の心材みたいなものなのか。


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↑これも10年前(2003年)の貴重な写真をお借りしました。


この時から運命は決まっていたのかもしれません。


自然に任せて還っていく。


しかし、震災によって決定的になったことは間違いないと思います。




多くの道路工事はとても無意味なように見えたりもします。


山間部の国道、それも交通量も少なく地元の車がたまに通る程度の道、それをたくさんのお金をかけて道幅を広くし、トンネルをいくつも建設し、果たしてそれが意味のあることなのか?


このようにもともと崩れかかっていた道路設備が震災によって崩れ去った。


同じダメージは今回探索した廃道すべてにかかっています。


いつどこが決壊しても不思議ではないということです。


山間部の国道は集落をつなぐ、それと都市部をつなぐ重要な生命線です、たとえば震災のように大規模なものでは脱出や救援路となり、たとえば地域で急病人やけが人が出たときには病院を結ぶ搬送路となり、わずか数台が通る道にも命がかかっているということだと思います。


廃道となった全国にあるたくさんの道もかつては命のために切り開かれた道だと、ここを歩いて強く思いました。 


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廃道を歩きながらたまに確認していたが、この道は足場がなく湖面までは行くことは徒歩でも不可能だ。


望遠で先を撮影。


ガードレールの位置に道があったとはもはや限らない。


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湖面への着水地点周辺。


四時トンネル周辺の廃道区間はここまでです。



この先の探索ルート全体で5kmの後半の3kmあまりは地図でもしっかりと記されており、旧道として現在も利用されています。


一応車両にて通り抜けしてきましたのでサラリと。紹介しておきます。


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「川平」の車止め地点まで移動する。


現国道から改めて進入、その先は、


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おそらく通れなくなるような難所はないだろうと、安全のためにヘッドライトを点灯させながらすすむ。


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自分が進んでいる時に後ろから来た車は2台、それなりに交通量はこんな道でもあるようだ。


探索中後ろから車が来ると端によって道を譲るので交通量はそれでわかる。


余談だが、落ちている大きめの枝が車の足回りに引っかかり変な音を立てていてしばらく走っても消えなかったので、下回りを確認し引っかかった枝を排除した。


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途中2つのキロポストがあった。


このすぐ横に殉職の碑があったのでキロポストだけアップにしました。


殉職碑には帝国海軍機関二等兵の文字、どんなことがここで起きたのかは記されていなかったと思う、至近でキロポストを撮影させてもらうため手を合わせた。


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自分には少し面白みにかける道。。。


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もうこんな感じで民家もあるし、通常の道だがとりあえず通り抜けるか。


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「高松」周辺が民家のあった道。


地図上でも家があることが分かる。


そこら辺は地図上でも道が太く書かれている。


地図から読み取ったイメージどおりの道、時たま見つけられるキロポストだけが楽しみだ。


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「199」のキロポスト。


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合流間近、現国道が見えている。


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旧国道はここで終了。


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この道とこの橋ができたことにより安全に通行できるようになった。



次回の記事はこのまま国道289号線を進み、辺栗トンネルの旧道へ。


そして今回写真を提供していただいたdark-RXさんの「道部屋」 も紹介させてください。


これだけ多くの国道を探索されて記事にされている方は少ないかと思います。ぜひ。