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カンヌ映画祭に出品された石井克人監督の映画です。
ひとことでいえば、
”現代サブカル小津風映画”
ってとこかな。
美しい田舎町の風景に、平凡(?)な家族の物語が展開されます。
内気で、片思いに真剣な高校生の兄、
巨大な自分の幻覚に悩まされる妹、
元アニメーターで復帰のためリハビリ中の母、
催眠術師の父、
眉毛がつながってる祖父(我修院)
ふと懐かしい田舎町、
雪のようにくるくる舞う桜、早緑萌えたつ田園、さつきとメイの家のような、昔ながらの木造建築。
BGMは雨の音、電車の音、自然の音。
「萌の朱雀」や、小津作品を彷彿とさせる古きよき日本の図。
…だけども。
妙なものがどんどこ混じってくる。
冒頭、少年の頭にポッカリ穴が空いて電車が出てくる、
無表情の妹が縁側に腰掛ける、庭から巨大な彼女が生えてくる。などなど。
石井さんお得意のCGが、そのあまりの鮮やかさにシュルレアリズム絵画的効果を擁し画面を席巻します。
おかしいのは画面構成だけではありません。
人物設計もです。
特に脇役なんですが、
マッシュルームカットのへたれ漫画家や、
特撮オタク(?)のひょろ青年2人組みなど、かなりオカシイ。
そんな人物設計がまた、石井節。
石井監督自身はゼッタイいじめっこ体質だと思うのですが(笑)、
いじめられっこの描き方が非常に上手いです。
例えば漫画家。
自意識過剰で気弱、
アシスタント(人妻)に横恋慕してるけど、彼女は浮気してる。
「先生、わかってますよね?」
と浮気の片棒担がされ、念を押された直後にダンナに電話。
「アンタの奥さん浮気してるよ」
こころがちいさい(笑)!
近くにいたらいらいらするような、でもおかしみがあって身近な人物。
リアリティと共にすっごく愉快で。
勿論、ばらしたのは即バレ、
人妻アシスタントにリンチされます。かなり、執拗に。
こういうのがほんとうまい。
「あれ?洒落んなんないかな?」的な暴力、
だけどやっぱりおかしい、そのぎりぎりのはざま。
笑っていいのかな?
でもチョット、不気味ってゆうか洒落んなってないよね。
その匙加減。
才能です。
そんな楽しいわき道を交え、
主軸の家族のそれぞれの物語は進んでいく。
ラストは、ああ、なんてすてき。
こういうものが残せたら、ってこころが温まる。
ギャグについてこれないひとは戸惑うかも。
けれどもわたしはオススメしたい作品です。