第189国会●衆議院提出法案第24号
国会議事堂、内閣総理大臣官邸その他の国の重要な施設等及び外国公館等の周辺地域の上空における小型無人機の飛行の禁止に関する法律案
【提出者】古屋圭司(自由民主党)他5名
この法律はドローンによる2015年4月22日に起きた首相官邸無人機落下事件に端を発する。政府が同様の法案を出すのは国家統治機関を守るために当然であるとしても、国民の代表として選ばれた国会議員が議員立法で提出するならば、まず国民の安全を考えた法案を出すのが先であると思うが、彼ら自民党議員の提出した法案は、首相官邸、皇居、政党の本部などを守るためのものであった。国民政党であることを優先するのであれば、国家統治機構の安全を先に考えるのはいかがなものか。逆に内閣提出法案では国民を守るための法案が成立している。
この法案が示す対象施設とは以下の通りになっている。
⑴ 国の重要な施設等として次に掲げる施設
① 国会議事堂、議員会館並びに衆議院議長及び参議院議長の公邸その他国会に置かれる機関の庁舎であって東京都千代田区永田町1丁目又は2丁目に所在するもの
② 内閣総理大臣官邸並びに内閣総理大臣及び内閣官房長官の公邸
③ 最高裁判所の庁舎であって東京都千代田区隼町に所在するもの
④ 皇居及び御所であって東京都港区元赤坂2丁目に所在するもの
⑤ 四1により対象政党事務所として指定された施設
⑵ 五1により対象外国公館等として指定された施設
この規定では皇居と赤坂御所は対象になっていても、京都御所は対象となっていないことは気になる。⑤の四1は以下のものである。
●対象政党事務所の指定等
1 総務大臣は、衆議院議員又は参議院議員が所属している政党の要請があったときは、その主たる事務所を対象政党事務所として指定するものとすること。この場合において、総務大臣は、併せて当該対象政党事務所の敷地を指定するものとすること。
2 総務大臣は、1により対象政党事務所及び当該対象政党事務所の敷地を指定するときは、当該対象政党事務所の敷地及びその周囲おおむね300メートルの地域を、当該対象政党事務所に係る対象施設周辺地域として指定するものとすること。
そして、政党事務所の敷地及びその周囲おおむね300メートルの地域に小型無人機等を飛びまわさせるなというものである。
まずは自分たちの安全ということか。なお、この法案の提出者は自民党の他は、公明党、維新の党、次世代の党となっている。
⑵の五1とは以下の外国公館である。
五 対象外国公館等の指定等
1 外務大臣は、大使館等、領事館等及び外国政府又は国際機関の事務所並びに外国要人の所在する場所のうち、一の目的に照らしその施設に対する小型無人機による危険を未然に防止することが必要であると認めるものを、対象外国公館等として指定することができること。この場合において、外務大臣は、併せて当該対象外国公館等の敷地又は区域を指定するものとすること。
この法案に対して修正案が提出された。
●対象施設に原子力事業所を加えること。
●小型無人機を小型無人機等に改めること。→飛行船も想定しているため
●危機管理行政機関の庁舎であって当該対象危機管理行政機関の担う危機管理に関する機能を維持するため特に必要なものとして政令で定めるものも対象施設に加える。
●国家公安委員会は、原子力事業所でテロの対象となるおそれがあり、かつ、その施設に対してテロリズムが行われた場合に、対象原子力事業所として指定することができるものとすること。その場合、国家公安委員会は、海上保安庁長官と協議しなければならないとすること。
という内容であるが、この件に限らず、常時においても、国家公安委員会が海上保安庁に対しての管理を行えるようにすべきであると考える。
この法案は衆議院で修正のうえ可決され、参議院においても賛成多数により可決し、成立した。
反対した会派は日本共産党及び社会民主党・護憲連合である。
反対した理由は、小型無人機を飛ばしただけで懲役刑にされることにある。法案提出者の土屋正忠議員(自民党=菅直人を下した人)は、「抑止効果として適切」と答えている。
それから参議院では、山本太郎議員の意見にも注目する必要がある。
原発で事故が起きたとき、隠ぺい工作をしようとしたのであるが、報道の側がドローンを飛ばしてその実態をそのまま中継することは可能である。政府が隠そうとしていることに対して報道の力で国民への情報公開の開示力を持つこともある。だがこの法律であるとそれを禁止することになるのである。
こうした指摘に基づき、この法案については今一度改正する必要があると考える。
http://blogos.com/article/166792/
原子力災害対策について、なんらかの良き処置がとられているものかと思ったら全く見当違いでありました。
民主党における議員立法の愚か性を象徴する法案です。
俺らが若き20代、菅直人が厚生大臣として薬害エイズで大きく名声をはせたころ、議員立法が全然ないからやるべきだと、当時、五十嵐敬喜大学教授あたりの主張に若者は共鳴した。
その世代が国会議員となって今やっていることはたいがい、役所が出すような基本方針だとか、自治体の計画だとかを議員立法として出している。その典型的な法案である。はっきり言って意味がない。すでに行政としてやるべきことをわざわざ立法しようというものは単なる議員立法本数稼ぎなのであって、理念・政策がないとの証でしかない。法律を増やすことは、国民を縛ることであり、行政や自治体を縛ることであり無駄な文書作成の仕事を増やすだけだ。
ということで意味のない議員立法です。よって反対します。
【賛成した会派】
自由民主党
民主・維新・無所属クラブ
公明党
おおさか維新の会
改革結集の会
生活の党と山本太郎となかまたち
【反対した会派】
日本共産党
社会民主党・市民連合
この法案は3月11日に参議院で修正され、17日に衆議院で可決され成立しました。翌日に公布されます。