政府案●労働基準法等の一部を改正する法律案 | 国政報告 おおさか佳巨 福島県[県中]の生活

国政報告 おおさか佳巨 福島県[県中]の生活

放送大学教養学部(情報コース)1年生。国土交通モノの職業は海と空以外は制覇。運輸・不動産・土木建設業、国土交通副大臣秘書。武力治安系は暴対防止、保安警備業、消防団員、国家公安委員長秘書。自由な経済、公正な政治、ケアのある社会を作るための国政報告を勝手にやる。

二次補正予算案と地方交付税法・特別会計法改正案は衆議院で可決し、参議院に送付されました。参議院でも同じように、野党による非建設的議論ばかりなされているので無視します。

 

現在、国民にとって最も注目度が高いであろうと考えられるのが労基法改正案であると思います。

 

189-閣69 労働基準法の一部を改正する法律案

【内閣提出責任者】塩崎恭久厚生労働大臣、加藤勝信働き方改革担当大臣

 

労働基準法、労働安全衛生法、労働時間等の設定の改善に関する特別措置法の3法を改正する法案です。

 

長時間労働抑制策・年次有給休暇取得促進策として政府は提出していますが、野党4党は残業代ゼロ法案として反対する構えであり、また衆議院には議員立法として代案を提出しています。

 

民進党の矢田わか子参院議員は29日の参院本会議で継続審議になっている『労働基準法』の改正問題を取り上げ「改正はホワイトカラー・エグゼンプションを導入しようとするもので、一定条件の下、時間外・休日労働の割増し賃金を不払いにしてよいというもの」と提起するとともに、「対象となる労働者に業務や年収による条件、健康確保措置の条件が課せられるが、対象労働者が長時間労働を強いられることが想定される。また年収1000万円以上の条件もいずれ引き下げられ、対象者が膨れあがる懸念もある」と指摘。

 

塩崎恭久厚生労働大臣は「労基法改正案には長時間労働を是正するために企業に対して年5日の年次有給休暇を指定することの義務付けや中小企業における時間外労働の賃金率引き上げなどが盛り込まれている」と労働者の待遇改善につながるものとした。

 

また「自律的・創造的な働き方を対象とする高度プロフェッショナル制度の創設や裁量労働制の見直しは、これまでより厳格な労働時間の把握を行うとともに、医師による面接指導の義務付けなど、働き方に見合った健康確保のための厳しい措置を講じるので、この法案により、長時間労働が強いられ、メンタルヘルス疾患や過労死が増えるとのご指摘は当たらないと思う」と答えた。

 

http://www.zaikei.co.jp/article/20160930/329683.html

 

以下で概要を見てみます。

 

(1) 中小企業における月60時間超の時間外労働に対する割増賃金の見直し

• 月60時間を超える時間外労働に係る割増賃金率(50%以上)について、中小企業への猶予措置を廃止する。(3年後実施)

 

(2) 著しい長時間労働に対する助言指導を強化するための規定の新設

• 時間外労働に係る助言指導に当たり、「労働者の健康が確保されるよう特に配慮しなければならない」旨を明確にする。

 

(3) 一定日数の年次有給休暇の確実な取得

• 使用者は、10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、5日について、毎年、時季を指定して与えなければならないこと

とする(労働者の時季指定や計画的付与により取得された年次有給休暇の日数分については指定の必要はない)。

 

(4)企業単位での労働時間等の設定改善に係る労使の取組促進(※労働時間等の設定の改善に関する特別措置法の改正)

• 企業単位での労働時間等の設定改善に係る労使の取組を促進するため、企業全体を通じて一の労働時間等設定改善企業委員

会の決議をもって、年次有給休暇の計画的付与等に係る労使協定に代えることができることとする。

 

(2)の労働者の健康確保についての助言、(3)の有給休暇の半分消化義務、(4)の労働時間設定改善について問題はないものの、(1)で中小企業が労働者に支払う割増の残業手当について問題があります。

 

次に、この労基法改正案の中での多様で柔軟な働き方の実現について。

 

(1) フレックスタイム制の見直し

• フレックスタイム制の「清算期間」の上限を1か月から3か月に延長する。

 

(2) 企画業務型裁量労働制の見直し

• 企画業務型裁量労働制の対象業務に「課題解決型提案営業」と「裁量的にPDCAを回す業務」を追加するとともに、対象者の健康確保措置の充実や手続の簡素化等の見直しを行う。

 

(3) 特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)の創設

• 職務の範囲が明確で一定の年収(少なくとも1,000万円以上)を有する労働者が、高度の専門的知識を必要とする等の業務に従事する場合に、健康確保措置等を講じること、本人の同意や委員会の決議等を要件として、労働時間、休日、深夜の割増賃金等の規定を適用除外とする。

• また、制度の対象者について、在社時間等が一定時間を超える場合には、事業主は、その者に必ず医師による面接指導を受けさせなければならないこととする。(※労働安全衛生法の改正)

 

【提案】減価する通貨を使用して中小企業の残業代を救う

おおかたの中小企業は残業手当をそれほど支払うこととなると干上がってしまう企業が出てくることから、これについて助成金制度を設けることを提案します。

 

この残業手当助成金については、雇用調整助成金の施策として、減価する通貨を組み込みます。

 

まず、次の要件のいずれも満たすことが必要とします。

 

(1)雇用保険の適用事業主であること。

(2)売上高又は生産量などの事業活動を示す指標について、その最近3か月間の月平均値が前年同期に比べて10%以上減少していること。

(3)雇用保険被保険者数及び受け入れている派遣労働者数による雇用量を示す指標について、その最近3か月間の月平均値が前年同期に比べて、中小企業の場合は10%を超えてかつ4人以上、中小企業以外の場合は5%を超えてかつ6人以上増加していないこと。

 

雇用調整助成金として国から都道府県に支出する金額は、それぞれの都道府県に応じたものとし、都道府県はその資金を担保に減価する通貨を発行するものとします。都道府県から減価する通貨として支給された中小企業は、残業手当として労働者に支給し、都道府県に限定された通貨として各都道府県内で流通させるものとします。

 

 

 

以下は政府提出法案の要綱。

【第一 労働基準法の一部改正】

一 フレックスタイム制(第三十二条の三及び第三十二条の三の二関係)

1 フレックスタイム制の清算期間の上限を三箇月とするとともに、使用者は、清算期間が一箇月を超える場合においては、当該清算期間をその開始の日以後一箇月ごとに区分した各期間ごとに当該各期間を平均し一週間当たりの労働時間が五十時間を超えない範囲内において労働させることができるものとすること。

2 一箇月を超える清算期間を定めるフレックスタイム制の労使協定(その事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定をいう。以下同じ。)については、行政官庁への届出を要するものとすること。

3 フレックスタイム制が適用される一週間の所定労働日数が五日の労働者について、労使協定により、労働時間の限度について、清算期間における所定労働日数に八時間を乗じて得た時間とする旨を定めたときは、使用者は、当該清算期間を平均し一週間当たりの労働時間が当該清算期間における日数を七で除して得た数をもってその時間を除して得た時間を超えない範囲内で労働させることができるものとすること。

4 使用者は、清算期間が一箇月を超えるものであるときの労働させた期間が当該清算期間より短い労働者について、当該労働者を労働させた期間を平均し一週間当たり四十時間を超えて労働させたときは、その超えた時間の労働について法定割増賃金に係る規定の例により割増賃金を支払わなければならないものとすること。

 

二 時間外労働(第三十六条第二項及び第五項関係)

1 労働時間の延長を適正なものとするために厚生労働大臣が定める基準(以下「限度基準」という。)を定めるに当たり考慮する事項として、労働者の健康を追加するものとすること。

2 限度基準に関する行政官庁の助言及び指導に当たり、労働者の健康が確保されるよう特に配慮しなければならないものとすること。

 

 

三 企画業務型裁量労働制(第三十八条の四第一項、第四項及び第五項関係)

 

1 対象業務に次の業務を追加すること。

(一)事業の運営に関する事項について繰り返し、企画、立案、調査及び分析を行い、かつ、これらの成果を活用し、当該事項の実施を管理するとともにその実施状況の評価を行う業務

(二)法人である顧客の事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析を行い、かつ、これらの成果を活用した商品の販売又は役務の提供に係る当該顧客との契約の締結の勧誘又は締結を行う業務

 

2 対象業務に従事する労働者の労働時間の状況に応じた当該労働者の健康及び福祉を確保するための措置であって、当該労働者に対する有給休暇(年次有給休暇を除く。)の付与、健康診断の実施その他の厚生労働省令で定めるものを企画業務型裁量労働制の委員会の決議で定めるところにより使用者が講ずるものとすること。

 

3 企画業務型裁量労働制において、使用者が具体的な指示をしない時間配分の決定に、始業及び終業の時刻の決定が含まれることを明確化すること。

 

4 2の措置の実施状況についての行政官庁への報告は、定期的に行わなくてもよいこととすること。

 

四 年次有給休暇(第三十九条第七項及び第八項関係)

1 使用者は、年次有給休暇の日数が十日以上の労働者に対し、年次有給休暇のうち五日については、基準日(継続勤務した期間を六箇月経過日(雇入れの日から起算して六箇月を超えて継続勤務する日をいう。)から一年ごとに区分した各期間(最後に一年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日をいう。)から一年以内の期間に、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならないものとすること。ただし、年次有給休暇を当該年次有給休暇に係る基準日より前の日から与えることとしたときは、厚生労働省令で定めるところにより、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならないものとすること。

2 1にかかわらず、労働者の時季指定又は計画的付与制度により年次有給休暇を与えた場合は、当該与えた日数分については、使用者は時季を定めることにより与えることを要しないものとすること。

 

 

五 特定高度専門業務・成果型労働制(第四十一条の二関係)

1 賃金、労働時間その他の当該事業場における労働条件に関する事項を調査審議し、事業主に対し当該事項について意見を述べることを目的とする委員会(使用者及び当該事業場の労働者を代表する者を構成員とするものに限る。)が設置された事業場において、当該委員会が委員の五分の四以上の多数による議決により(一)から(八)までに掲げる事項について決議をし、かつ、使用者が、当該決議を行政官庁に届け出た場合において、(二)に掲げる労働者の範囲に属する労働者(以下「対象労働者」という。)であって書面その他の厚生労働省令で定める方法によりその同意を得た者を当該事業場における(一)に掲げる業務に就かせたときは、労働基準法第四章で定める労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定は、対象労働者については適用しないものとすること。ただし、(三)及び(四)の措置を使用者が講じていない場合は、この限りではないものとすること。

 

(一)高度の専門的知識等を必要とし、その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないと認められるものとして厚生労働省令で定める業務のうち、労働者に就かせることとする業務(以下「対象業務」という。)

 

(二)特定高度専門業務・成果型労働制の下で労働する期間において次のいずれにも該当する労働者であって、対象業務に就かせようとするものの範囲

 イ 使用者との間の書面その他の厚生労働省令で定める方法による合意に基づき職務が明確に定められていること。

 ロ 労働契約により使用者から支払われると見込まれる賃金の額を一年間当たりの賃金の額に換算した額が基準年間平均給与額(厚生労働省において作成する毎月勤労統計における毎月きまって支給する給与の額を基礎として厚生労働省令で定めるところにより算定した労働者一人当たりの給与の平均額をいう。)の三倍の額を相当程度上回る水準として厚生労働省令で定める額以上であること。

 

(三)対象業務に従事する対象労働者の健康管理を行うために当該対象労働者が事業場内にいた時間(1の委員会が厚生労働省令で定める労働時間以外の時間を除くことを決議したときは、当該決議に係る時間を除いた時間)と事業場外において労働した時間との合計の時間(以下「健康管理時間」という。)を把握する措置(厚生労働省令で定める方法に限る。)を当該決議で定めるところにより使用者が講ずること。

 

(四)対象業務に従事する対象労働者に対し、次のいずれかに該当する措置を当該決議及び就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより使用者が講ずること。

 イ 労働者ごとに始業から二十四時間を経過するまでに厚生労働省令で定める時間以上の継続した休息時間を確保し、かつ、深夜業の回数を一箇月について厚生労働省令で定める回数以内とすること。

 ロ 健康管理時間を一か月又は三か月についてそれぞれ厚生労働省令で定める時間を超えない範囲内とすること。

 ハ 一年間を通じ百四日以上、かつ、四週間を通じ四日以上の休日を確保すること。

 

(五)対象業務に従事する対象労働者の健康管理時間の状況に応じた当該対象労働者の健康及び福祉を確保するための措置であって、当該対象労働者に対する有給休暇(年次有給休暇を除く。)の付与、健康診断の実施その他の厚生労働省令で定めるものを当該決議で定めるところにより使用者が講ずること。

 

(六)対象業務に従事する対象労働者からの苦情の処理に関する措置を当該決議で定めるところにより使用者が講ずること。

 

(七)使用者は、同意をしなかった対象労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないこと。

 

(八) (一)から(七)までに掲げるもののほか、厚生労働省令で定める事項

 

 

2 1の届出をした使用者は、厚生労働省令で定めるところにより、1の(四)及び(五)の措置の実施状況を行政官庁に報告しなければならないものとすること。

 

3 企画業務型裁量労働制の委員会に関する事項は、1の委員会について準用するものとすること。

 

六 罰則(第百二十条関係)

一の2及び四の1に違反した使用者に対し、所要の罰則を科すこと。

 

七 中小事業主に対する一箇月について六十時間を超える時間外労働に対する割増賃金率の適用(第百三十八条関係)

中小事業主に対する一箇月について六十時間を超える時間外労働に対する通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金の支払義務の適用猶予に係る規定を廃止すること。

 

八 その他

その他所要の規定の整備を行うこと。

 

 

【第二 労働安全衛生法の一部改正】

 

一 事業者は、特定高度専門業務・成果型労働制の対象となる労働者であって、その健康管理時間が厚生労働省令で定める時間を超えるものに対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による面接指導を行わなければならないものとすること。(第六十六条の八の二第一項関係)

 

二 一の労働者は、一の面接指導を受けなければならないものとすること。また、事業者は、一の面接指導の結果を記録しておかなければならないものとすること。(第六十六の八の二第二項関係)

 

三 事業者は、一の面接指導の結果に基づく必要な措置について医師の意見を聴かなければならないものとするとともに、その必要があると認める場合には、職務内容の変更、有給休暇(年次有給休暇を除く。)の付与、健康管理時間が短縮されるための配慮等の措置を講じなければならないものとすること。(第六十六条の八の二第二項関係)

 

四 事業者は、一の労働者であって一の面接指導を行う労働者以外の労働者のうち健康への配慮が必要なものについて、厚生労働省令で定めるところにより、必要な措置を講ずるように努めなければならないものとすること。(第六十六条の九関係)

 

五 一に違反した事業者に対し、所要の罰則を科すこと。(第百二十条関係)

 

六 その他所要の規定の整備を行うこと。

 

 

【第三 労働時間等の設定の改善に関する特別措置法の一部改正】

 

一 「労働時間等の設定」の定義に、深夜業の回数及び終業から始業までの時間を定めることを追加すること。(第一条の二第二項関係)

 

二 一定の要件を満たす衛生委員会を労働時間等設定改善委員会とみなす規定を廃止すること。(第七条第二項関係)

 

三 事業場ごとに、当該事業場における労働時間等の設定の改善に関する事項について、労使協定により、全部の事業場を通じて一つの委員会であって、1から3までの要件に適合するもの(以下「労働時間等設定改善企業委員会」という。)に調査審議させ、事業主に対して意見を述べさせることを定めた場合であって、労働時間等設定改善企業委員会でその委員の五分の四以上の多数による議決により、代替休暇、年次有給休暇の時間単位取得及び計画的付与制度に関する事項について決議が行われたときは、当該決議はこれらの事項に関する労使協定と同様の効果を有するものとすること。(第七条の二関係)

 1 全部の事業場を通じて一つの委員会の委員の半数については、当該事業主の雇用する労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、当該労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては当該労働者の過半数を代表する者の推薦に基づき指名されていること。

 2 全部の事業場を通じて一つの委員会の議事について、厚生労働省令で定めるところにより、議事録が作成され、かつ、保存されていること。

 3 1及び2に掲げるもののほか、厚生労働省令で定める要件

 

四 その他所要の規定の整備を行うこと。

 

 

【第四 附則】

一 施行期日(附則第一条関係)

この法律は、平成二十八年四月一日から施行すること。ただし、第一の七については、平成三十一年四月一日から施行すること。

二 経過措置等(附則第二条から附則第十一条まで関係)

1 政府は、この法律の施行後五年を経過した場合において、この法律による改正後の労働基準法第三十九条第七項及び第八項の規定について、その施行の状況を勘案しつつ検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすること。

2 この法律の施行に関し必要な経過措置を定めること。

3 関係法律について所要の改正を行うこと。