人知れず微笑まん-人という字

「人と人は、支え合って生きている」という嘘

よく、人と人は支え合って生きていると言います。

過去のことですが、
私の部下であった男性は、
とても素晴らしくて、多くの社員からも好かれていました。
いつもにこにこと人当たりがよく面倒見もよい青年でした。

だからでしょうが、他部署の社員からも頼まれごとがあると、
いつも引き受けていましたから、深夜の帰宅や会社に泊まることも多かったのです。
彼は、元々身体が悪いものですから、いつも心配していました。

私が気付いた時は(私は別オフィスでもあり、部下が多かった為)
早く帰らせたりもしていました。

「アイツに言っておいたら、いいじゃない。アイツ馬鹿だから、調子に乗ってやるよ」と
他の社員が面白おかしく話していること、他の部下からも聞いていましたから、
ある時、彼に言いました。

「人という字は、人と人が支え合って出来ているというが、それは嘘ですよ」
「確かに、「人」という字は、活字で書くとそう見えますね」



「でも、書いてみなさい」
「そうではないでしょう」


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数年前に会社は自己破産申請しましたが、
私は、その苦しい決断をした当の本人でありますから、
多くの社員の再就職先を確保して、彼もまたそちらに行かせておりました。


それから、数年を経ていますが、
その間、別の元部下より、
「彼は、連日連夜こき使われています」
「その上司も一切配慮がないので、毎月の検査を受けることがままならいようです」
と聞かされていました。

そして、
とうとう病状が悪化して、今月始めに退職を余儀なくされたとのことです。


世の中には、それ以上の苦しみを背負わされている人がいます。
今も、苦しい思いをさせられている人がたくさんいます。

優しい人ほど、人と人とのことを考えます。
人を信じてはいけないとはいいません。

しかし、

人を苦しめる人とそうでない人がいる

というこの現実を

優しい人にこそ、忘れないでいて頂ければな、

と思うものです。


※記事と画像は関係ありません。