第648回「吉福伸逸氏インタビュー(1)」

第648回「吉福伸逸氏インタビュー(1)」

今回から、数回にわたって、セラピストの吉福伸逸さんとの対談をお伝えします。吉福さんは、日本にトランスパーソナルの考え方を導入した最初の方で、数々の著作、翻訳があります。ご本人は、現在トランスパーソナル学という枠を超えて、独自の活動をされています。

インタビューは、吉福さんのワークショップの前日にお時間をいただいて、行いました。内容は、セラピー全般についてです。吉福さんとのお話は、いつも冗談交じりで楽しいのですが、その中に、しっかりとクライアントさんに相対しているという重みを感じます。

どうぞ、お楽しみください。

【吉福伸逸氏プロフィール】

著述家、翻訳家、セラピスト。早稲田大学文学部を中退し、ボストンのバークレー音楽院へ留学。ジャズ・ベーシストとして活躍後、カリフォルニア大学バークレー校にて東洋思想やサンスクリットを学ぶ。

(株)C+Fコミュニケーションズ、(有)C+F研究所を創設。

日本に初めてニューエイジ、ニューサイエンス、トランスパーソナル心理学などの分野を体系的に紹介。著書に『トランスパーソナルとは何か 増補改訂版』(新泉社)、『トランスパーソナル・セラピー入門』(平河出版社)、翻訳に『意識のスペクトル』(春秋社)、『無境界』(平河出版社)、『タオ自然学』(工作舎)等多数。1989年以降、ハワイ在住。

【インタビュー】

向後
本日は、セラピストの吉福伸逸さんをお迎えして、セラピーの考え方全般と、それから、吉福さんがとりくまれている統合失調症などの、いわゆる治癒が困難と言われている疾患に対するアプローチについてお聞きしたいと思います。
吉福さん、よろしくお願いします。

吉福
はい、それじゃあ、はじめましょうか。
今、向後さんが言われたことなんだけど、自分の経験をベースとして言えば、たとえば統合失調症に対して、なにができて、どうすれば、その当人自身が内なる解離を強く感じて、焦燥感の中で生き続けると言うことから解放するということは、可能だと思いますね。
しかし、解放することによって、社会の要請にこたえるような人間になるのかどうか、あるいは、社会の要請にこたえることに意味を感じるような人間になるのかどうかについては、僕は、あのー目を向けていないんです。そういうことに目を向ける必要性を、僕は感じておりませんので。

向後
いきなり、過激ですねー。(笑)
セラピーを、その前提で、進めていくということですね。

吉福
その前提で考えていかないと難しいと思うんですね。
向後さんも経験なさっていると思うのですが、セラピーの全体的な傾向というのは、二段階あると考えていただければいいと思うんですね。
ひとつは、社会の要請に機能できなくなって自らが激しい苦しみの中にいる人が、社会の要請にこたえられる状態になること。
ということは、社会のルールにのっとって、社会的に機能するような状態になることを社会が要請しているわけですよ。
精神的な問題を抱えている人たちに対して。
その要請があるために、問題を抱えている人たちは、その要請にこたえようとしているわけですよね。
だから、セラピストやカウンセラーのところに来たりするわけですよね。
だけど、それでいいんだろうかという疑問が、僕の根っこの中にあるんですよね。

向後
そうですね。
たとえば休職している人を職場復帰させるとか、ひきこもりの子を学校に返すとか・・。

吉福
そうですね。それはさ、アルコール依存にせよ、薬物依存にせよその他の精神疾患にせよ、結局そうですよね。それはさ、社会の要請がそうだからこそ、その中で苦しんでいる当人が、その要請にこたえようとして、苦しみを抱えて行って、症状そのものがさらにひどくなっていくという状況があると思うんです。
ですから、僕なんかは、社会の要請をいったん横に置いておいておきましょうよと思うんです。それが、もうひとつの段階のセラピーですね。

向後
そうですね。

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向後善之(ハートコンシェルジュ・カウンセラー)

ハートコンシェルジュ


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