昨日六本木でノザワ奨学金30周年記念が開かれました。私もその奨学金でUCLAでMBAを取ることができたので、招待を受けたので行ってきました。久しぶりに同じ奨学金をもらった仲間などと会うこともでき、わざわざこれに合わせて日本に帰国してよかったと思いました。

NOZAWA Fellowshipと私の留学
Nozawa Fellowshipは日本人のMBA留学を対象にした奨学金で非常に珍しいものです。アメリカの大学には奨学金が多数ありますが、そのほとんどはアメリカ人を対象にしており、アメリカの大学が出す、日本人だけに特化した奨学金というのは恐らくこのNozawa Fellowshipぐらいではないでしょうか?金額もかなり多く、当時MBAの授業料が全額この奨学金でカバーできました。私にとって非常にありがたい奨学金であり、今の自分があるのもこの奨学金のお陰なので、非常に感謝をしています。もともと日系人の起業家George Nozawaさんが亡くなられた翌年1984年にUCLAに当時のお金で50万ドルもの寄付をされ、今では運用で300万ドルにもなる奨学基金になったと聞いています。昨日ホストをして頂いたUCLAのジャコビー教授はこの奨学金が知られたなさすぎると嘆いておられましたが、素晴らしい奨学金ですので多くの日本人に知ってもらいたいと思います。

私は当時ブリヂストンの海外事業部で働いていて、企業派遣でMBA留学を狙っていました。ところが、突然、企業派遣制度がなくなるという話になり非常に悩んでいた時でした。特に私はジョージタウン大学に学部留学をした時からアメリカでMBAを取るという固い決意を持っていたので、どうしてもその夢はすてることができず、借金をしてでも留学をしたいと思っていました。当時は結婚を考えていたのですが、留学資金などを考えると二人でアメリカに行く余裕などなく、それもしばらくはないと思っていました。ところが、この奨学金に合格できたので、すぐ妻にプロポーズし、一緒にアメリカに来ることができました。この奨学金は私の結婚もサポートしてくれたことにもなります。

更にMBAを取った後に日本に戻り外資金融などで働く普通の日本人MBAキャリアを考えていたのですが、幸い借金がなかったので、「アメリカで力試しをしてみよう」という決意をし現地で就職をしました。最初は公認会計士で監査や税務をしていたのですが、社内ベンチャーを提案し、コンサル部門を立ち上げ、自分のキャリアをスタートすることができました。そういったリスクを負うことができたのも、借金をせずにMBAを取ることができたというこの奨学金のお陰です。私のMBA後のキャリアもこの奨学金がなければかなえることができなかったので、この奨学金を頂けたことは非常にありがたいことでした。なので、私が現在NPO法人のCVS Leadership Instituteで海外留学やMBA留学に奨学金などを出し、支援しているのもPay Forwardの恩返しの一つという気持ちなのです。

NOZAWA FELLOWSHIP
MBA留学当時、Kimiko Nozawaさんと食事をする機会がありました。その当時、一緒に奨学金をもらった仲間と一緒に何か記念品をお渡ししようと、大きな花瓶を購入してもっていったのですが、それを見た奥様が大きな包装された箱を見て「ひょっとして炊飯器?」といって大笑いをしていました。George Nozawaさんはアメリカで炊飯器のビジネスを成功させ、母校のUCLAに寄付をし、「日本の会社のお陰で成功をしたので」という意向で、日本人に限ってその奨学金を出すことになったと聞いています。そしてその日本の会社というのがPanasonicです。昨日の30周年の際にはPanasonicの方も来ており、NozawaさんとPanasonicの関係なども話を伺うことができまひた。PanasonicとしてもNozawaさんとのビジネスがアメリカで最初の大きなビジネスとなり、その後の大きな発展があったそうです。もともとNozawaさんは戦後収容キャンプから戻ってきたのちに羅府新報(RAFU SHINPO)というロサンゼルスで100年以上の歴史がある日系人の新聞の記者をしていました。そこで留学してきたパナソニックの社員と親交を持ち、炊飯器販売を始めたそうです。創業者の松下幸之助さんとも親しい関係にあったとのことでした。

日系人と日本のアメリカでのビジネス
Nozawaさんがおられた羅府新報(RAFU SHINPO)は現在もある100年以上の新聞で日系人社会の伝統ともなっている新聞です。私も何度か接点がありましたが、日系人社会の歴史とコミュニティーの中心的存在にもなっています。私がデロイトで日系企業に特化したコンサルティングをスタートしたのが1997年にサポートをしてくれたのがパートナーのTom Iinoでした。彼は身内が羅府新報にいたこともあり、日系人社会のリーダーだったこともあり、日系人社会の中でかなりのネットワークを持っていました。実を言うとNozawa さんの会社Nozawa TradingもTomのクライアントだったようです。たまたま事務所でEd Nakataというリタイヤしたパートナーと会ったのですが、それはNozawa Fellowshipの後見人をしていた人で奨学金の合格者を選ぶのにも関与した人でした。その時一緒に食事をしたのですが、彼もNOZAWA奨学金をもらった私がデロイトに入ったのを喜んでいました。アメリカに来ると多くの人が「どこに属するのか?」といったIDENTITYというものを意識します。我々日本人がアメリカで生活をする中で、IDENTITYの観点からも、こういったコミュニティーは重要であり、そこでの人間関係は無視できません。

Tom Iinoの会社(Tomの父Sho Iinoが建てたSho Iino会計事務所)はデロイトに買収される前から多くの成長する日系企業を抱え、彼らの成長を支えたのですが、それが評価され彼は一昨年前に日本領事からOrder of Rising Sun Golden Raysという勲章をもらったそうです。デロイトの日系企業部門で、私がコンサル部門を立ち上げるのに交渉した際には、TOMはSlow Season(閑散期)の監査人をコンサルプロジェクトに使うことで売り上げを増やすということを買ってくれました。私がその後コンサルタントとしてキャリアを実現できたのは、その当時日本の監査法人トーマツから駐在で来ておられた現在監査法人トーマツ社長の天野さんとトムのお陰です。トムの場合は、仕事の面以上に、そこでできた人間関係から、特にロサンゼルスの日系人社会を紹介してもらうという機会を作ってくれたことにも感謝しています。CVSでも過去日米文化会館(JACCC)、日系人博物館、KEIROホームなどでボランティア活動をしたのもその関係です。そのトムが語っていたことで気になったことがあります。「アメリカに進出する日本企業は初期の段階では日系人の会計士、弁護士などをやといパートナーとして一緒に仕事をしていた。でも成長する過程で日本企業は白人を好んで、我々との関係をないがしろにしてきた。だから日系人も日本企業から離れてきている。」ビジネス的には日本人だからといった人種的な要素は確かにそれほど持ち込む必要はないかと思いますが、文化的には日系人との関係はとても重要だと思います。なので、CVSのプログラムでもFirst Presbyterian Church of Altadena, Mission Valley Free Methodist Church, WL Holiness, Wintersburg Presbyterian Churchといった日系人教会と一緒にこのプログラムを運営し、ホームステイ先なども日系人家庭を多くしています。CVSで、今後アメリカで起業をするプログラムなどを提供しますが、その前提条件として日系人たちとの交流を深めていきたいと思っています。


日本人が知っておくべきInternment(日系人強制収容)と442部隊

日系人と接点を持つ際に日本人がしっておくべきこととして、第二次世界大戦中のInternment(日系人強制収容)があげられます。CVSに参加される方もぜひともこれにつては知っておいてください。今回のテーマであるNozawaさんも同様に収容所にいたそうです。日本軍のパールハーバー攻撃の後に、アメリカで日系人が財産没収をされ、捉えられ収容所に送られた話です。これは戦後違法だったことが認められ、レーガン大統領の際に謝罪と損害賠償をしたということで有名な話です。でもその当時の日系人の話をすると、その収容所での集団生活がより関係を強化し、戦後日系企業がアメリカに進出する際の手助けをすることにもなったようです。つまり、アメリカ人でありながら日本人であるので、日本企業はある意味自分たちの企業でもあるのです。私が学生1年の時に初めてアメリカでお世話になったのが、Ai Yamadaさんで、そのご主人は442部隊のChaplain (従軍牧師)だった人でした。たまたま両親が交流があり、私もお世話になり、442部隊のことについて知る良い経験になりました。彼らはパールハーバー攻撃後、敵視された日系人たちがアメリカへの忠誠を示し、従軍した人たちなのです。その後ヨーロッパの激戦地区に送られ、多くの犠牲を払いながらも勇敢に戦ったので有名です。実に9946のPurple Heartの勲章、21ものCongressional Medal of Honorが与えられた軍のUNITで有名です。このビデオを見てください。アメリカの上院議員で1963年から2012年までの長年上院議員をつとめたDaniel InoueもMedal of Honorの受賞者で有名です。私がお世話になったAiさんのご主人のMasao Yamadaさんはアメリカで最初の日系人Chaplain(従軍牧師)で負傷をおいながらも、日系人部隊のモラルを保ち、戦後も同じ部隊の遺族の人たちを訪問したりなど重要な役割を果たした方です。YAMADAさんはお亡くなりになっていますが、私は別に442部隊の方でご健在の知り合いの人がいますので、CVSの学生で興味がある人がいたら一緒にハワイに訪問につれていってあげてもいいと思っています(前回CVSでハワイに行った際に何人かは奥さんと面会しております)。


山田さんの記事はこちら
http://www.100thbattalion.org/history/veterans/chaplains/masao-yamada/2/

CVSでお世話になるFirst Presbyterian Church of AltadenaはInternment(強制収容)から帰還した日本人を受け入れ、社会復帰させるために教会が支援をしたのがその起源になっています。CVSの学生は是非とも日系人の歴史などを知ったうえで来てください。日系人は日本人に特別な気持ちをもっていてくれています。なので、敬意を示すためにも皆さんしっかりと勉強をしてからホームステイなどに行くようにしてください。

今回たまたま実家に帰ってきたらAnderson School (UCLAのビジネススクール)の卒業名簿が出てきました。私は幸い卒業の際にHonorをもらえたのですが、アメリカの大学、そしてアメリカ社会の良い点は努力をすれば報われる点です。卒業のHonorも何千ドルか忘れましたがお金をくれました。それもNozawa奨学金と合わせて私にチャンスをくれたものです。CVSを受験している皆さんも、頑張って努力をし、成果を出せば経済的な面を含め私は協力をします。ぜひとも頑張ってください。
95 UCLA MBA Graduate List

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