国際ビジネスで生きる日本
戦後貿易収支の流れ
第二次世界大戦直後日本は世界でも最も貧しい国の一つでした。それが今は世界で最も豊かな国の一つになっています。この豊さはどこから来たのでしょう?日本の経済成長は海外に物を輸出し、そこで得た外貨を稼いでおおきくなったものです。この図を見ればわかりますが、貿易により獲得した富(貿易収支)が内需を高め、更に国内生産を高め、雇用を高めています。これらの経済成長は主にアメリカが大きく貢献をしたのですが、アメリカ市場において、日本企業のシェアは自動車を除いて増えているようには思えません。むしろ韓国、中国等の企業に完全に押されています。日本の貿易収支は2010年より赤字に転じており、今後労働人口減などから内需と生産の規模が小さくなることが想定されます。つまりこれらは日本経済の収縮を意味しています。日本の豊かさは、過去の蓄積もあるので、簡単に消えることはないとは思いますが、成長というよりは衰退の方向に向かっているようです。貿易赤字が円安に動くと輸出を伸ばすのでまた外貨獲得はできますが、それがインフレを呼ぶので、利益、そして個人所得がそれ以上に伸びないと豊かさを増すのは困難です。今の流れでは徐々に生活水準も低下していくように思えます。なので、豊かさを長く維持するのには国際競争力を維持するのは不可欠だと言えます。そして国際競争力は、資源の無い日本であれば、日本人の能力に依存することになるわけです。人的資源で勝負をする中国、インドなどが教育水準を上げている中、日本も負けてはいられません。

日本の力
私がアメリカでデロイトにいた際には、契約金額の規模の制限もあり、主に大手企業相手にしかコンサルができませんでした。但し、社内ベンチャーでコンサルを設立した際に、最初にビジネスをくれたクライアントは主に中小企業でした。そんな経験の中から、日本の大企業を支える中小企業、そして中小企業が持っている技術や、製品力の高さの国際ビジネスの展開に興味を持ち、支援をしてきました。特に中小企業は資金的、人的資源の欠如もあり、HELPさえ得ることができればかなり可能性があると思いました。

CVSではそんな企業の海外進出をサポートしたいと感じています。なので、これをテーマにビジネスコンテストを開き、実際にメキシコへのビジネス進出につながったケースもあります。我々が実施するメキシコでの市場調査及びエントリーに関するFeasibility Studyに興味がある企業がございましたら、連絡願います。私は過去デロイトコンサルティングで、アメリカ・メキシコへのエントリーのサポートサービスもしていたので、CVSの学生チームの指導をします。つまり、プロ水準のサービスを無償で受けることができます。外貨獲得という重要な経済活動の学習を学生がすることは今後の厳しい競争を勝ち抜き、日本の強さを維持するのに不可欠です。今後CVSの学生たちが、各企業を訪問し、ビジネスコンテストへの協力、サンプル品などお願いすることがあるかと思いますが、どうかご協力の程、お願い申しあげます。

大阪・東京で開催されたビジネスコンテストのフィードバック

今週末、5月9日に大阪で、5月10日に東京でビジネスコンテストが開催されました。40名近くの大学生が参加し、エントリーStrategyのコンサル会社などで活用するフレームワークに則り、実際にエントリープランを考えるというものです。このイベントで我々が見ていたのは以下のものです。
• チームで仕事をする力・リーダーシップ:ビジネスの世界はチームで動きます。そして組織のなかで人と一緒に物事を築き上げていくCognitive Skillは重要です。この経験を通じ、ビジネス環境の中での皆さんの適応能力、仕事をする能力が鍛えられます。
• 国際マーケティング戦略のフレームワークを経験で覚えてもらう:ポーターの5つの脅威、やMarketing の7P、4C、FIモデルなどはテキストで学ぶより、実際にフレームワークとして使わないとその意義はわかりません。それらのフレームワークから、メキシコに輸出をするのに最適なアイテムを選びます。
• リサーチ手法、分析手法を学ぶ:これに関しては今回あまり説明をする時間がなかったのですが、アイテムを市場セグメントを理解する際のSecondary Research (ウェブなどでのリサーチ能力)、そして聞き取りなどをして集めるPrimary Researchをどのように用いるのか、可能性はあるのか?エントリーにはどういった選択肢があるのか、といったビジネスでの決定プロセスの学習。
• 英語による売り込み:現代社会では営業をする際の「影響力」がとても重要になってきています。国際ビジネスにおいては外国人に売り込むこと、外国人に対する「影響力」が必要になります。英語でのプレゼン、英語での営業を通して「影響力」のレベルを理解し、改善点を感じ取ります。

これらを2時間程度でやり遂げるのは厳しかったかもしれません。但し、結果からいうとどのチームも期待値には達していました。やる気になったらできるものです。優勝チームはそれぞれ2万円弱の賞金を手にしました。

次回のイベント
次回はメキシコ人の大学生と、モンテレイ工科大学、国際ビジネスDirectorのClaudia Morales 教授を招きビジネスコンテストをします。一番の魅力は英語でメキシコ人と一緒に競い合うことです。今回同様に賞金だけでなく、Apple Watchがあたるラッフルチケットも成績に応じて配布したいと思います。皆さん、是非とも参加してください。参加受付が始まります。

関東:2015年6月27日(土)9:00~17:00 第21回国際貿易ビジネスコンテスト

関西:2015年6月28日(日)9:00~17:00 第22回国際貿易ビジネスコンテスト

テーマ:メキシコ商品をどのように日本でビジネスとして確立するか?

内容:メキシコ人がそれぞれ持ってきた商品に関するプレゼンテーションをし、それに対して日本人学生のチームがオークションをし、メキシコ人学生と一緒にその商品のエントリープランとFeasibilityを調べること。エントリーの初期段階のプレゼンスに関する講義を私がして、そのフレームワークなどを使ってチームでプレゼンテーションをまとめます。プレゼンテーションはすべて英語になります。

対象:学生及び社会人。CVSの23期応募者はその後メキシコでのビジネス優先します。後は先着順ですので、学生の皆さんは是非ともお早目に申込みください。
アワード:優勝チームには賞金及びAPPLE WATCHがあたるラッフルチケットを配ります。

今回のコンテスト:関東大会、関西大会、総合順位及びフィードバック
今回のビジコンは身近なコンビニにある消費財からメキシコで売れそうな物を見つける。その見つけ方、分析手法、プレゼンテーションなど指導したフレームワークに則り実施するものでした。私の評価とフィードバックは以下の通りです。
第8位:ウェット・ティッシュ(関西) 67点
日本人旅行客が海外旅行に便利だからといって、必ずしもそのアイテムが売れるとは限りません。米国製の製品と価格面で勝てないのでそれを超える何らかの差別化が必要です。製品を選ぶ際に必ずプランA、プランBを立てること、英語でサーチをしてメキシコの正しい情報を集めること、メキシコ人のビデオでの紹介にあったようなメキシコ人の感じる日本の魅力をどう使うかを考えることなどを入れてもらえば良かったです。

第7位:柿ピー(関東)69点
製品自体は魅力を感じました。但し、もう少し自信をもって、審査員に食べさせ、メキシコじんでもおいしいと感じるといった裏づけがあったら良かったかと思います。特にスナックが好きなメキシコ文化、お酒のつまみとしての使い方、フレイバーの魅力などをプレゼンの英語の売り込み部分でしっかり伝えてもらいたかったです。

第6位:Papico(関西)72点
商品の魅力が十分に伝わってきませんでした。更にメキシコではストリートのアイスクリーム屋さんが多数いて、スーパーやコンビニでそこまでアイスが売れていないことや、価格競争力や、味の問題など克服しがたい問題をクリアできていませんでした。確かに一つで二人が楽しめるAmigoコンセプトでの売り込みは面白いとは思いましたが、別の商品でもできたかと思います。

第5位:枝豆(関東)78点
アメリカでも大ヒットしている枝豆、かなりビジネスチャンスがあると思います。特に塩だけでなく、メキシコ人が大好きなTajinなどとも相性が良いと思います。但し、具体的にどのように商品化し、どうやって売っていくのかという部分が甘かったと思います。初期段階で、日本食レストランからスタートするのは良いと思いますが、おそらく簡単なパッケージでマイクロウェーブですぐできるようなものの方が売りやすいかと思います。

第3位(タイ):手ピカジェル(関西)79点
関西の優勝チームでしたが、私からの評価では2番でした。まず、これは過去CVSにてビジコンで出た商品でもあります。今回はポータブルタイプということで、差別化はされていると思いますが、アメリカ製の消毒ジェルとの比較などがしビジコン関西優勝チーム(テピカジェル)
っかりされていません。なので、商品としての競争力に十分説得力がありませんでした。

第3位(タイ):ボンカレー(関東)79点
レトルトで日本風のカレーを提供するのは面白いと思います。但し、メキシコはアメリカより圧倒的にインド料理が少ないこと、メキシコのモレなどメキシコ風の味付けのものとのどう対応できるのか、更にレトルトなので価格競争力が低いといった問題を克服していませんでした。

第2位:カップスープ&カップ春雨(関西)82点
メキシコで大ヒットしているマルちゃんのカップヌードルなどに対抗して健康をベースに売り込むといったのはユニークで、実際競争力もあるかと思います。但し、メキシコ人が春雨が好きか、さらに空腹を満たすことを目的にカップヌードルを購入するお客さんが、あっさりした春雨に乗り換えるかに関しては説得力がかけていました。

第1位:コンドーム(関東)86点
女性中心のチームだったのに、よく勇気をもってこういったものを選びました。カトリックの国で原則避妊はタブーなのですが、最近はその流れが変わってきており、かなり市場のポテンシャルは高いと思います。但しPLACEで、既存のファーマシーで売るというより、「タブー」であったという社会事情も考慮し、ネットで販売するか、日本のテクノロジーで、自販機でバーなどで売るといった工夫があったら良かったと思います。アメリカ製のTrojanとの価格や、品質の比較など、短い時間の中でもよくできていました。CVSでは現地社長のご主人が病院のオペレーションを管轄する医師でもあり、実際にこの商品のテストや、モニター、そして販売まですることは可能であると思います。是非とも実際のビジネスに結び付けてください。

総評:皆さんよく頑張っていました。但し、アイテムを選ぶのに時間がかかりすぎであったと思います。特にクラウディア教授と、トレーシーのプレゼン内容などをよく聞き、それらに沿ったアイテムを選べば早かったと思います。トレーシーが、メキシコ人が日本のアニメなどが大好きだといっていたのに、コンビニにたくさんあったらキャラクターグッズなどをどのチームも考えていなかったので、不思議でした。現地の人のIPを必ず参考にするようにしてください。それと、日本語での情報はあまりあてになりません。もう少し英語でサーチをすることにも慣れておいてください。

優勝チームには、次回も来たらApple Watchのラッフルチケットをプレゼントします。是非とも6月の国際貿易コンテスト(輸入)にも参加してください。次回はメキシコ人学生と一緒に英語でやります。皆さん英語が十分聞き取れていなかったようにも思えるので、英語を鍛えておいてくださいね。