アメリカで外食産業は経済成長と共に成長し、80年代に年間7%以上の伸びを見せていました。これらの成長の背景には労働時間の延長、所得の伸び、男女雇用機会の均等化、ライフスタイルの変化などがありました。そのような観点で言うと、中国、インドなどが今後の外食産業の成長市場として期待できます。同時に外食産業はオープンした初年度に半分が倒産するという厳しい競争産業であるとも言われます。このデータの背後には、エントリーコストが低いので比較的参入しやすいというビジネスの特徴もあるので、市場での競争環境が厳しいということだけではありません。
外食産業の戦略
外食産業の戦略はリテールと似ていて、Location, Location, Location(立地条件が全て)と言われます。ロケーションが良ければ顧客の入りがよくなるのですが、その分リースのコストも膨大になります。なので、コストを上回るだけの顧客の回転と、顧客売り上げを記録しないとやっていけません。80年代以降、アメリカでは都市部の不動産開発に計画された商業地域の拡張が進められました。ショッピングモールなどもそれに含まれますが、町の通りを改装しておしゃれな商業地帯を作ります。サンタモニカの3rd Street Promenadeや、パサデナのOld Townは80年代に成功させた例として、世界中から視察に人々が訪れていました。今では世界中にこのような商業地域ができていますが、逆に出店コストが高くなり、大型のレストランでないとなかなか入れないというようなことも起きています。その結果としてアメリカでは全国どこにいっても似たようなレストランしかないというリテールと同じような問題も起きてきています。
新たな外食産業の戦略
そんな環境の中で外食産業では、「場所」の利点以上に、「如何にして顧客に足を運んでもらうのか」という部分が重要になってきます。これはロケーションという要素が関係ないインターネットでのEコマースとも似ています。どうやって固定の顧客を確保し、彼らをRetainしていくのか、そういった顧客ロイヤリティーの確立が重要になってきます。
料理の鉄人
CVSでは、コア期間中のミッションで料理の鉄人が行われています。このミッションは2チームが料理だけでなく、顧客に対するOverall Dining Experience(食事の経験)を競ってもらいます。そしてこのミッションでの評価項目は、外食産業で顧客のロイヤリティーを上げる要素として不可欠のものではないかと思います。
1)Taste 美味しさ:外食産業にとって、これが大切なのは言うまでもありません。
2)Atmosphere&Concept雰囲気及びコンセプト:店構え、雰囲気、コンセプトそしてそこに集まる顧客や店員がもたらす雰囲気との融合は企画実行するのは難しいものですが、これは顧客からするととても重要な要素です。
3)Hospitality&Communicationホスピタリティーとコミュニケーション:これはサービス産業全般に言えることですが、顧客とどれだけ親しくなり、ただ単にコストと提供するサービスの内容だけではない付加価値を築くことが重要です。サービス産業の場合は、これがとても重要で、人々はお金や物だけでなく、実は人間関係がとても重要であるということが実行してみて良くわかります。
4)Entertainment&Presentation プレゼンテーションとエンターテイメント:その店の歴史やドラマ、店で提供するコンサートやコメディーショーなどのエンターテイメントは顧客を集めるのには不可欠です。外食産業の場合は料理の出し方、料理の紹介などはサービスを受ける顧客にとって、その「体験価値」を決めるのに重要なファクターになります。
5)Cost Performance (Taste/Dollar) and Constraint Management:コスト効率と問題点の克服:個人でスタートをする場合、場所が悪い、良い従業員が集まらない、お金がない、など多くの問題を抱えます。その問題をどう乗り越えるかがビジネスの成功には欠かせません。人間同様に成長の機会です。同時に、顧客に対してそれだけの問題を克服するだけの付加価値を提供することも重要です。顧客側から見て、自分が払ったお金と受けたサービスとの相関関係はとても重要であり、仮にその期待値を超える経験ができればリピーターになりますが、期待値が下がればもう来ません。
外食産業では顧客も成熟化し、昔のようにテレビがあればお客さんが来るといったようなことで商売は成り立たなくなってきています。そういった意味で上記の5つのクライテリアを極めるミッションを皆さんに経験してもらいたいと思います。今後は外食産業の経験がある人や、外食産業を目指す人にもCVSに積極的に参加してもらいたいです。
CVS12期が始まりました。土曜日には各チームの事前課題の理解度がチーム単位で試されるミッション「おみくじレース」があり、5位、6位になった「負けずぎらいのAngel」、「CherUp」という二チームがその場からネゴコンに行き、そして日曜の夜には料理の鉄人という過酷なスケジュールの中行われました。昨日はバレンタインデーということもあり、バレンタインの食事、そしてテーマ食材は、毎回CVSで1回戦の定番「ほうれん草」でした。
コンセプト:Taste of Mother
料理:
アペタイザー:ほうれん草ポタージュスープ
メイン:ほうれん草のカネロニ
デザート:ほうれん草のマフィン
Feedback:コンセプトと料理の兼ね合いがわからないのと、プレゼンテーションが原稿を読むもので面白みに欠けました。料理は悪くありませんでした。
コンセプト:We are the One
アペタイザー:ほうれん草スープ
メイン:ほうれん草とジャガイモのコロッケと豚肉ご飯
デザート:ほうれん草ケーキ
Feedback:バレンタインデーになぜ皆でWe are the Worldを歌うのかわかりませんが、プレゼンたーの二人が元気がよく、しっかりゲストのアテンションを得ていました。
結果:Angels 425対 Cherup 377
両チームとも時間がなかったので、かなりきつかったと思います。
おみくじ、料鉄と連敗し、落ち込んでいるCherUpにこの曲を贈ります。
http://www.youtube.com/watch?v=w8KQmps-Sog
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