農業を保護する意味 | 林宙紀のブログ

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衆議院の農林水産委員会は、「農政改革法案」とも言われる6法案を審議中。


政府提出の「農地担い手法案」「多面的機能支払法案」と、民主・生活・社民提出の「戸別所得法案」「ふるさと維持支払3法案」です。


細かいところは別に譲るとして、

私としては、農政に関してもっとも基本的で重要な「ある思想」について日々議論されていることに今までにないやりがいを感じています。

それは、

「なぜ農業を国が手厚く支援(保護)する必要があるのか」、ということ。


マンゴーやイチゴなどのように、高付加価値の作物は十分に採算が取れます。

しかし、コメ・麦・砂糖などの必需品的な作物は、ほぼすべてコスト割れ。

製造業などで赤字が続けば、待っているのは破産です。

ところが農業というのは、国が税金で赤字補てんをして支援するのが当然のようになっています。



なぜ、農業だけは多額の税金によって支援されるのでしょうか。(農林水産省の予算は毎年2兆円超)


実は小さな政府(税金を使って国が介入するのは最小限に抑える)という思想に立つ私ですらも、農業は国が支援すべきだと考えています。


その理由は、

・国民が生命を維持し健康な生活を送るために、食料は何よりも優先して確保しなければならない。

その食料を生産する場、いわゆる「食料生産装置」としての農地を保持することは、国益に直接つながっている。

・農地は大雨など災害による影響を緩和し、景観を保ち、多様な生物の住処にもなるなど、食料生産以外の役割も非常に大きい。

農地を維持することは、いわゆる「多面的機能」を維持することによる国土保全につながる。


というものです。

つまり、いろいろな意味で重要な意味と価値をもつ「農地」を保全するのが目的。

産業としてはコスト割れの部分が多いものの、多額の税金を使って支援する必要がある、というわけです。


これまでの政治がいわゆる農業票を得るために「農家の所得を守る」ことに主眼を置いてきたことはよく指摘されていますが、本来農業を保護する意味は上記のようであるべきで、農家の所得はその結果としてついてくるもの、と私は考えます。


そういう前提に立つと、これから日本の人口が減っていく中、将来どのくらいの農地があるべきかというビジョンもしっかりと持っておかなければなりません。


一方で、例えば

「食料は、輸入先をたくさん確保して安定的に調達すればよい」

「多面的機能は、工事で溜池をたくさん作ったり公園を作ったりすればよい」

という考えもあり得ます。

よって、農地として活用するほうが食料確保や多面的機能の維持を実現するのに有利であるということも、根拠とともに説明する必要があると思っています。


いずれにしろ、少なくとも現在の議論では、ほぼすべての政党において

「農業保護 = 農地という貴重な財産を守ること」

という認識を共通してもっています。


その目的を達成する手段がどうあるべきか。

それが、今回の法案審議から導かれる結論ということになります。