<艶が~る、妄想小説>


今回は、沖田さんと秋斉さんの投扇興勝負の行方を書きました!これまた、勝負が決まった上で書くのは、なんか難しかったどすガクリ


相変わらずの拙い文ではありますが…また良かったら、彼らの勝敗の行方を覗いてって下さいませニコ


【温泉♪おんせぇぇん♪】前半戦

【温泉♪おんせぇぇん♪】後半戦第1部

【温泉♪おんせぇぇん♪】後半戦第2部



【温泉♪おんせぇぇん♪】*沖田×秋斉編*



「お待たせしました!」
「お疲れさん」


部屋へ戻ると、秋斉さんが笑顔で迎えてくれると同時に、慶喜さんを中心に楽しい話で盛り上がっていた。


「本当に慶喜さんって、いろんなこと知ってるんですね!」
「もっと、褒めて」


沖田さんの言葉に、慶喜さんは得意気な微笑みを浮かべた。


とても楽しそうな雰囲気に、私はどんな話をしていたのか尋ねると、みんなで京や江戸に纏わる昔話を話していたのだと教えてくれたのだった。


「お前も聞きたいかい?」
「はい、是非!」


私達がいるこの京にも、昔から不思議なお話があるらしく、慶喜さんは少し神妙な顔つきで【戸橋の女】と、いう昔話をし始めた。


「源頼光の家来で、渡辺綱という人がいたんだけどね…」


その綱という若者は、とても勇猛果敢な武者だった為、主人の頼光から信頼されていた。ある時、彼は主人の言いつけで京の町を練り歩いていた時のこと。


一条戸橋に差し掛かった時、橋の袂に佇んでいる女の人に気づきその美しさに目を奪われた。


「それでね、その絶世の美女に目を奪われた彼は、思わず声をかけずにはいられなくなってね…」
「それで?」


慶喜さんの言葉に、沖田さんが夢中で聞き返した。


「うん、それから彼は、『どうされたんですか?こんなところに、たった一人で』と、その美女に声を掛けたら……」


綱が尋ねると、その女の人は、『さるお方のお使いでこの辺りまでやって参りましたが…帰る方向を見失い、途方に暮れておりました。あなた様にお願いするのは、いささか気が引けますが、どうぞ都まで私をお連れ下さいませ』と、美しくも儚げに呟いたので、綱は快く引き受け、自分の馬の後ろに乗せてあげたのだそうだ。


「そして、ある橋の中ほどまで来た時、何気なく水に映った影を見た綱は、一瞬、自分の目を疑った…」
「ど、どうしたんですか?」


慶喜さんの怪しく細められた瞳が、私達を交互に見やると、沖田さんが眉を潜めながら呟いた。


「自分の後ろに乗せたはずの美女が、恐ろしい鬼の姿をしていたからさ」
「お、鬼?!」


沖田さんは、低く呟く慶喜さんの言葉に驚きの声を上げると同時に、大きく目を見開いた。



*艶が~る妄想小説* ~もう一つの艶物語~



そして、綱が気づくのと同時に鬼もその姿を現し、彼の身体をむんずと掴むと、ふわりと空へ舞い上がり、愛宕山(あたごやま)方面へと向かった。


綱は、空の上での戦は初めてだったが、怯まずに立ち向かって行き、とうとう鬼の片腕を切り落とすと、北野天満宮の屋根に下りることが出来たのだそうだ。


無事に地上に戻れたのも、天神様のおかげと感謝した綱は、とても立派な灯篭を収め、それから後も信心に励んだという。


「美女には気をつけろっていう話でした。めでたし、めでたし」
「そうや無いやろ…」


にこにこしながら言う慶喜さんの隣りで、秋斉さんが呆れ顔を見せると、慶喜さんの話しを夢中で聞き入っていた沖田さんが、楽しそうに口を開く。


「この話は初耳でした!確かに、美しい人には惑わされないようにしないといけませんね…」
「おいおい…」


少し神妙な顔をし始める沖田さんに、土方さんも呆れ顔で呟いた。


京や江戸には、数多くの不思議なお話があって、他にも、弁慶と牛若丸のお話とか、一休さん等も伝えられている。


「まだまだ、面白い話は沢山あるんだけど、そろそろ、秋斉と沖田くんの決着をつけないといけないね」


慶喜さんは、煙管を吹かしながら微笑んだ。


「せやな…感が鈍る前に」
「……そうですね」


秋斉さんと、沖田さんは顔を見合わせると、すっくと立ち上がり投扇興の準備を整え、賽を使って先攻後攻を決めた。


その結果、沖田さん先攻、秋斉さん後攻となり、二人の戦いが始まった。


「私からですね…」


沖田さんは、静かに呟き定位置に正座すると、少し前かがみになりながら扇をふわっと投げた。扇は、平行を保ったまま蝶掠めると同時に、扇の柄の部分に絡めると、枕の後ろ側に挟みこむ形で挟まっている。


「…少し、勢いがあり過ぎたかな」


沖田さんは、桐壺(18点)を出して少しがっくりとしながらも、両肩をゆっくりと動かしながら蝶を枕に乗せた。


そして、秋斉さんは、沖田さんから扇を受け取り定位置について正座をすると、目を細めながら蝶を見つめ、次の瞬間、ふわりと扇を投げた。


「やっぱり、藍屋さんは凄いなぁ…悠々と浮舟(30点)を出すとは」
「慶喜はん曰く、柔肌に触れるように優しく投げなあきまへんえ」
「柔肌に……って」


沖田さんは、秋斉さんの言葉にほんの少し頬を赤くしながら俯いた。すると、慶喜さんと土方さんが半ばからかうように口を開く。


「そうそう、沖田くんもあるだろう?柔肌に触れたことが」
「…どうなんだ?総司」
「えっ!?その…なんて言うか…柔肌って、どの部分を言っているんです?」


「えっ?」


私以外の三人は、揃って顔を見合わせ苦笑すると、慶喜さんが、「そりゃあ、決まっているだろう?」と、面白そうに言った。


「柔らかくて可憐な手には、触れたことがあります…」


沖田さんは、私を見ながら楽しそうにそう言うと、秋斉さんから扇を受け取り定位置に腰をおろした。そして、真剣な顔つきで蝶を見つめる…。


(沖田さん…)


いつだったか、冬の寒い日のことだった。


お使いを頼まれて京の町を練り歩いていた時、偶然、新選組の羽織りを纏った沖田さんと出会った時、ほんの少しだけお話をする機会があって…


凍える私の両手をそっと温めてくれたことがあった。


もしかしたら、その時のことを言っているのかな?なんて、一人勝手に思いながら、勝負の行方を見守った。


「柔肌に触れるように…」


沖田さんはそう呟き、真剣な眼差しのまま扇をふわっと投げると、今度は、少し上に舞い上がり蝶を掠めて蓬生(35点)をたたき出した。


「沖田さん、お見事です!」
「確かに、柔肌を思い出しながらやったら上手く出来ました」


沖田さんは、照れくさそうにそう言うと、また私に柔和な笑顔を向けた。その子供のような眼差しに、思わず私も微笑み返す。


「わても、うかうかしてられへんね…」
「そうだねぇ。彼は剣術の稽古と同じくらい、投扇興をやり込んでいるみたいだから」


慶喜さんは、秋斉さんの隣りに寄り添うように言うと、にっこりと微笑んだ。


それから、秋斉さんは真木柱(30点)をたたき出した。そして、また交互に投げ合い、前半戦を終えると、休まず後半戦へと突入したのだった。


前半戦が終わった時点で、沖田さん123点。秋斉さん135点となっている。


後半戦は、先攻後攻が入れ替わり、秋斉さんからの攻撃となった。秋斉さんは、また定位置に正座をし、何度か投げる素振りを見せながら前屈みになって扇をふわりと投げる。


すると、扇は見事に蝶を絡めて、篝火(50点)をたたき出した。


「あ、秋斉さん…また篝火を?」
「これまた狙い通りや」


呆然とする私に、秋斉さんは余裕の表情で言い放った。


(秋斉さんは、本当に何をやらせても、そつなくこなしてしまうんだなぁ…)


「まだまだ、私だって負けませんよ…」
「沖田はんかて、遠慮はしまへんえ」
「藍屋さんは手厳しいなぁ」


沖田さんは、次の準備を終えた秋斉さんから扇を受け取ると、定位置について何度か扇を構えなおし、ふぅ~と、息を吐くとまた鋭い目つきで蝶に集中する。


沖田さんの投げた扇は、浮舟をたたき出した。


その後も、交互に高得点をたたき出し、いよいよ残り一投ずつを残すのみとなった。


(いよいよ…最終決戦…どちらが勝つんだろう…)


「秋斉が25点上回っているね。本当に手加減無しだな…」
「総司、この際だ。勝てよ」


慶喜さんと土方さんは、お互いに応援の言葉を投げかけた。


沖田さんは、最後の一投を決める為に定位置に正座すると、今までよりも男らしい顔つきで蝶を見つめる。


「最後の一手…」


そう呟き、手首を利かせて扇を投げた。


扇は、綺麗に宙を舞い…蝶を掠め…


その上に扇が綺麗に覆い被さる…。



*艶が~る妄想小説* ~もう一つの艶物語~


沖田さんは、最後の一手で夢の浮橋をたたき出したのだった。


「…最後に、出てくれましたか。良かった」
「見事どす…沖田はん。そうなると、わても蓬生以上の技を出さなあきまへんな」


秋斉さんは、蝶を枕に戻して扇を手にすると、沖田さんに声をかけた。


そして、秋斉さんは枕を目の前に姿勢を正して正座すると、扇を構え静かに息を整え始める。


(秋斉さん次第ってことになるなぁ…もう、胸がドキドキしてきた…)


その場にいる全員の視線を受けながら、秋斉さんは沈着冷静に努めていた。


真剣な眼差しを蝶だけに向けるその横顔は、いつもよりも凛々しく見える…。


「これで最後や…」


彼の手を離れた扇は華麗に舞った後、蝶を絡めて枕の上に覆い被さった。


……篝火。


その瞬間、沖田さんの負けが決まった。


「投扇興でこんなに真剣になったのは、初めてでした」
「もう少しで負けるところやった…」


「本当なら、楼主が本気になっちゃ駄目だろうにねぇ」


慶喜さんは、沖田さんを慰めるかのように声をかけ、ずっと無言だった土方さんは、「やっとケリがついたか」と、ぽつりと呟いた。


「今回は、藍屋さんに勝ちを譲りますが、次は負けませんよ」
「望むところや。そん時は、また受けてたちまひょ」


私は、にこやかな沖田さんと秋斉さん達を見守り、お茶とお菓子でも用意して来ようと、静かにその場を後にした。



(……秋斉さんと温泉へ…)


台所でお茶とお菓子を用意しながら、当日のことを考える。


どんな一日になるのだろう?


「楽しみだなぁ…」
「何がどす?」
「えっ?」


柔和な声がして後ろを振り返ると、秋斉さんの優しい視線と目が合った。


「あ、いえ、その…」

「気が利くな。沖田はんが、団子でも食べたい言うてはったから丁度ええ」

「皆さん、疲れただろうと思って…」


急須を湯飲みに傾け、四人分のお茶を注ぎながらそう呟くと、秋斉さんは、お菓子の乗ったお盆を手に持ち、「成り行きとはいえ、わてがあんさんを温泉へ連れて行くことになるとは…」と、呟いた。


「あ、あの…温泉のお話ですけど…本当に、私で良いのでしょうか?」

「それはこっちの台詞や…」


彼は、私の問いかけにふっと微笑むと、やんわりと瞼を閉じてまた私を見つめた。


(それって……)


心のどこかで、秋斉さんに夢中になっていたことに気がつき、それからは彼だけを応援していた。扇を持つしなやかな手、蝶を見つめる凛々しい眼差し。


そして、投げられた扇は誰よりも華麗に舞っていた。


私も、あんなふうに彼の手の中で華麗に舞いたい…


いつの間にか、そう思ってしまっていた。


「あんさんのほうこそ…」

「私はっ……」


『あなただけを応援していました…』


気がつけば、ドキドキとした胸を押さえ込みながら、そう告げていた。


そして、俯いたままだった視線をゆっくり上げると、ほんの少し唖然とした視線と目が合う。


「急に、変なことを言ってごめんなさい…でもなぜか、伝えたくて…」

「……………」


一瞬、沈黙したが、彼はまた優しげな声で、「それなら、誰にも遠慮することは無いな」と、言って微笑んだ。


(…えっ……)


「さ、お茶が冷める前に戻らな」

「あ、はいっ」


私は、お盆に乗ったお茶をこぼさないように静かに持ち上げると、先を歩く彼の背中を追いかけた。


そして、その後ろ姿を見つめながら、また当日のことを思い描く。


秋斉さんと温泉旅館へ…。


きっと、素敵な一日になるだろう。



【誰にも遠慮することは無いな】


その言葉を思い出しては、勝手に頬を綻ばせていた…。




<秋斉さんと温泉♪(前編)へつづく>




~あとがき~


なぜか、慶喜さんに昔話をさせてしまった(笑)沖田さんとのコンビが書いてて楽しくて(-∀-)イヒッ その会話をつまらなさそうに聞いていたであろう土方さんも、想像すると楽しくて(笑)


投扇興だけだと、つまらないから…慶喜さんに、京にまつわる不思議な話をしてもらいましたキャッ 


しかし…今、こちらは台風が直撃しちょります泣 もの凄い風が吹いてて…今夜は眠れなさそう涙皆さんのところは、大丈夫ですか??サーーッッ・・・


今後も、台風の行方が気になりますね涙皆様も、気をつけてくださいね!!


今日も、遊びに来て下さってありがとうございましたにこっ