公開前からこれは絶対観るって決めてました。
しっかしすごい人気のようですね。
ここまで盛り上がるとはちょっと意外~。どっちか言うと単館ぽい作品なので。
そして公開初日に観に行ったのにすっかり感想書くのが遅くなってしまったと言う。
※決定的なネタバレはありませんが、多少作品の筋に触れています。
深夜、パトカーとのカーチェイスを繰り広げる一台の高級車。
運転しているのは、黒人の男。
パトカーに制止され、彼は助手席の男を指し、言う。
「この男は障がい者だ、すぐに病院に連れて行かないと大変なことになるぞ」
この言葉に、パトカーの誘導つきで病院に着いた二人。
「どうする?」
助手席の男の問いに、運転席の男は答える。
「任せておけ」
と。
この運転席の男・ドリスは、助手席の男・フィリップの介護人。
首から下が完全麻痺状態であるフィリップは
自らの介護人を募集し、そこに現れたのがドリスでした。
他の候補者が自分をよりよく見せようとかつての経験を強調したり
はっきり金が目的だと豪語する中、
ドリスの目的はと言うと・・
ズバリ、就活をしたという証明が欲しかったから。
目的が目的なので、当然といえば当然かもしれないけど、彼は採用されたさに取り繕うこともなく
フィリップに対しても言いたい放題。
しかしフィリップはそんな彼を気に入り、採用するのでした。
ドリスは一言で言えば、天真爛漫で、やんちゃ坊主がそのまま大人になったという感じ。
フィリップに対しても、言いたいことを言います。
彼の辞書には「タブー」という言葉は存在しない。
疑問に思ったことは、障がいに関わることでも、遠慮なく聞いちゃう。
そのうえフィリップの障がいをネタにして、ブラックジョークまで飛び出す始末。
なんかもう、ここまで来るとあれですね。天真爛漫っていうか天然か?と言いたくなる 笑
でもフィリップには、こういう関係がとても心地よかったのでしょうね。
彼が求めていたのは、健常者とか身障者とかそういうことを度外視して
対等に付き合う、ということだったのでしょう。
フィリップの友人?が、前科もあるドリスを身近に置いていることを心配し
忠告するシーンがありますが、そこでフィリップははっきり言います。
「彼は私に同情してない。そこが良いんだ」と。
そもそも、同情しているって時点で相手を自分より下に見ていることになるわけで。
ドリスにはそれがないんですよね。
彼自身、恵まれない環境で育ってきたという背景を考えると、
彼もフィリップも境遇は違えど、社会的弱者という点では
同じであるとも言えます。
だからこそ、全く違う世界を生きてきたはずの二人が、
フランクに付き合うことができたのかもしれません。
単に馬が合ったということもあると思うけどね。
フィリップに対してだけではなく、
ドリスは何でも思ったことは素直に口にします。
彼にかかれば高価なアートも
「ただの落書き」であり、
クラシック音楽は
「職安の電話の保留音」
なのです。
ドリスには体面を気にするとか、見栄を張るとかそういうところが一切なく。
わたしは結構見栄っ張りな人間なので(笑
観ていて耳が痛いような場面もありました。
介護人と被介護人という立場を超え、いつの間にか
二人に芽生えた友情。
それが端的に感じられたのは、一緒に楽しい時間を過ごしていた時よりも、
むしろその後だったように思います。
ドリスのためを思って、フィリップが下す決断。
反対に、ドリスが一枚の写真から全てを悟り、
フィリップに対してやってのける、粋な演出。
温かい思いに、胸が熱くなった。
お互いの幸せを心から願う二人。
お互いに良い影響を受け、変わってゆく二人。
男同士の友情、なんかいい!!
そしてこの作品の魅力は、なんと言ってもドリスを演じたオマール・シーに尽きると思います。
周りからどう思われようが関係なく
思ったことを口に出す。
おかしいと思ったことはおかしいと主張し、
可笑しいと思ったことは可笑しいと言って思い切り笑う。
ある意味すごく人間らしく、フィリップがドリスを気に入った理由も分かる気がする。
ドリスは、それまでのフィリップや、彼の周囲の人たちにないものを持っていたのでしょう。
とはいえ、こうしたことって彼だからこそできたこと、だったりするんでしょうけどね。
フィリップはずっと、周囲の人に自分をただ普通の人間として扱ってもらうことを求めていて、
ドリスはまさに彼をそのように扱った。それは大きかったと思います。
だけど、何を言っても、やっても嫌みにならないのは、
やはり彼のキャラクター性によるところも多分にある。
誰もが同じことやって、同じように好意的に受け止めてもらえるかって言うと
そんなことはないと思う。
あとは相性もあるよね。
(ドリスの後に雇われた介護の人、彼は特にダメな介護人のようには見えなかったけど、
フィリップに辛く当たられていて、ちょっとかわいそうな気がしました。
ドリスとつい比較してしまうんだろうけど・・ねぇ。)
前述の通り、ドリスは単に天然なんじゃないかって気もするし、
いやいや、そうと見せかけて実は極めて高いコミュニケーション能力の
持ち主なんじゃないかって気もするし。
まあ、その真相はわかんないんですけど
いずれにせよ、彼には天性の魅力があり、そのドリスってキャラに
オマール・シーはどハマリしてたと思うんですよ。
フィリップ以外のお屋敷の人たちも、最初は彼の
傍若無人な振る舞いに眉をひそめるも、いつの間にかすっかり彼が好きになっているようです。
まさに彼は愛されキャラなんですよね。
ちなみに、オマール・シーは実はコメディアンらしい。
どうりで、コミカルな演技が上手いわけですな。
フィリップ演じたフランソワ・クリュゼも良かったと思います。
貴族らしい、ノーブルな立ち振る舞い。
ドリスの痛烈なギャグに臆することなく応戦できちゃうあたりに、
懐の深さが感じられました。
笑えるシーンもたくさんあり(フランスらしくちょっとシニカルな笑いが良い)
最後にはほろりとさせられ、良い作品だと思います。
障がいを扱っているものの、重くなることもなかった。
というか、障がいについてというよりは、二人の男の友情とか絆についてメインに描いた話だと感じました。
その友情も決して暑苦しくはなく、あくまでさらりと描かれている点が
フランス映画らしくていいです。
ただこの邦題はどうなんだろ。
わたし的にはイマイチ。
原題、untouchableをそのまんま訳してタイトルにするのは、確かに難しい気がしますけどねぇ。
原題には、いろんな意味が込められていそう。
タブーなんて関係ない!って意味もありそうだし、
本来交わるはずのなかった二人の人生について言ってるようにも思えるし。
でも邦題は誰も二人を止められないぜ!!的な意味を汲んで
つけたんじゃないかって気がします。
原題はすごく多義的で、良いタイトルだと思うけど・・
日本語でその意味出すのはちょっとしんどいよねぇ。
かと言って、そのまんまカタカナでタイトルにしちゃうと
なんのこっちゃ分からんどころか、ザキヤマさんしか思いつかないしww
(てか、アンタッチャブルって映画があるんですね、そりゃダメだ。)
まあそれはさておき、誰が観ても楽しめる作品ではないでしょうか。
なんだか観終わった後で、清々しい気持ちになれますよ。
秋晴れの空のような気持ちにさせてくれる、そんな作品だと思います。
まだ公開中ですので、気になる方は、ぜひご覧になってみてください。
最強のふたり
原題:NTOUCHABLES(仏、英題:UNTOUCHABLE)
監督:エリック・トレダノ、オリヴィエ・ナカシュ
出演:フランソワ・クリュゼ、オマール・シー、アンヌ・ル・ニ、オドレイ・フルーロ、クロティルド・モレ、アルバ・ガイア・クラゲード・ベルージ、トマ・ソリヴェレ、シリル・マンディ、ドロテ・ブリエール・メリット
字幕:加藤 リツ子
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