いやー泣けました。
永作さんと、子役の女の子に見事泣かされてしまいました。
以下、映画レビューです。
決定的なネタばれは書いていないつもりですが、これからまっさらな気持ちで観賞したい!!と言う方は映画を見られた後にどーぞ。
永作博美扮する希和子が不倫相手の娘を誘拐、その逃亡生活が軸となってストーリーは展開して行きます。
希和子は、その娘恵理菜を「薫」として育てていく。
その名前は彼女と不倫相手との間に出来た、生むことのできなかった命につけるはずの名前であった。
それと同時に進行して描かれるのが、大学生になった恵理菜。
4歳になり、実の両親のもとに戻った彼女。
事件後、ぎくしゃくした家庭の中で育ち、違和感をぬぐいきれない。
そんな彼女が唯一心の許せる相手、岸田。
しかし彼には家庭がある。
ある日恵理菜の前に現れたフリーライターの千草。
家を出て、一人暮らししていることについて聞かれた恵理菜が
「お母さん、私といるとつらそうだから」と漏らす。
それを聞いて、千草は言う。
「どうして?あなたは何も悪くないじゃない」
そう。
彼女は何も悪くない。
何も分からない赤ん坊のころに誘拐された完全な被害者のはずなのに。
ぎこちない家庭に育ち、それが自分のせいだと自分を責め。
幼いころ、実の母だと思っていた相手のことを思いだすことなど許されず、楽しかった記憶は自分の中で封印せざるを得なかった。
本当は大好きだった人のはずなのに。
彼女が背負ってしまった業は、あまりに重い。
恵理菜の運命を一変させた誘拐犯である希和子。
彼女のしたことは絶対に許されることではありません。
しかし彼女のそれまでの不幸な人生を考えると(それも彼女が選択したものと言えばそれまでなのですが)
希和子を絶対悪としてみなすことができない。
何より、彼女が薫に対し注いだ愛情は、少なくともまぎれもない本物だった。
彼女にとって、薫と過ごした時間こそが、人生の中でもっとも幸せな時間だったのでしょう。
逃避行の果て、たどり着いた小豆島で、希和子は薫に言います。
「これからはきれいなものをたくさん見ようね」と。
その言葉通り、小豆島のお祭りでたいまつを持って練り歩く行事に参加した二人は、列をなすたいまつの灯りの美しさに見とれます。
しかし皮肉にもこのことが逃亡の終焉につながってしまうのですが。
終わりを予見させるからこそなのか、炎の列は本当に美しい。悲しいくらいに美しい。
そして希和子の言った言葉は、この時の思い出は薫の中にもしっかり受け継がれていたはず。
妊娠した彼女が中絶を思いとどまった理由として、彼女はこう言います。
「エコーを見たとき、キレイな景色が広がって見えて、私はこれをお腹の子に見せる義務がある、と思った。」
上映時間はおよそ2時間半。若干長いですが、終盤からエンディングまでは涙なくして見られませんでした。
写真館のシーン辺りから、もう無理無理。
極めつけはエンディング。母と子として二人が無条件に幸せだった日々の象徴である小豆島、瀬戸内海の切なくなるほど美しい風景をバックに流れるエンドロール、中島美嘉の歌。よくよく聞くと歌詞が本作にマッチしすぎていて、さっき観た様々なシーンが次々と頭の中でまた蘇り、たまらなくなりました。なので、あえて聞き入りすぎないようにしたほど。
何より子役の女の子がかわいすぎて、それがまた切なさを煽るんですよね。。。
それでもただ切なく悲しい話、で終わることなく、ラストは前向きで、救われるような気持ちになれます。
途中、「お母さんなんかになれるわけない。子供をどう愛していいのかなんて分からない」
と訴えていた恵理菜は最後明らかに変わります。
何が彼女を変えたのか、は映画館でご覧になってくださいまし。
冒頭、法廷での希和子は誘拐と言う重罪を犯しつつも、過剰に卑屈になることも開き直ることもなく、とてもニュートラルに見えました。
彼女にとってある意味で罪を犯したと言うこと自体はどうでもよく、彼女の頭の中にはただ子供を一心に愛すること、それしかない。
そういう希和子に嫌悪感を持たず、むしろ共感さえ覚えてしまうのは、永作さんの持つピュアさあってこそ、のようにも思えます。
逃亡生活を続けながら、常に追手がつくのではという不安感、薫の成長に気付いた瞬間の諦めと同時に芽生える覚悟、そして最後は自身は身を引き、ただ子供の幸せだけを考える本物の母になりきっていた。
様々な表情を見事演じ切っていて、素晴らしかったです。
永作ファンの女子は多いと思いますが、ファンの方は観賞必至の作品だと思います。
永作さんだけでなく、井上真央、千草を演じた小池栄子、実の母森口瑤子、それぞれ良かったですよ。
森口さんはこれまでのイメージと違いすぎて、最初誰だか分りませんでした。
小池さんは歩き方から食べ方からその生い立ちが伝わる熱演(怪演?)でした。
そしてこの記事では書ききれないほど、印象的なシーンが色々あり、細やかな場面まで丁寧に書かれた作品であったと思います。
また、この作品と先日観た「愛する人 」との共通点について述べているレビューがあったようなのですが、なるほど確かに境遇や結末などは違うものの、コアとなる部分は同じなのかもしれない。
愛する人、も愛を知らずに育ったナオミワッツが妊娠をきっかけに母性愛に目覚め、かたくなだった心を開いていくと言う話なので。
別々の物語が交互にカットバックし、ラストに二つ(愛する人は三つ)のストーリが一つにつながるという演出も似ています。
二つを見比べてみるのも、面白いかもしれませんね。
そして何より二作品共通して言えるのは、
どんなに絶望的な状況であっても、希望はある。救いはある。
ということです。
角田光代さんの原作はまだ読んでないですが、ぜひ原作も読んでみたいです。
八日目の蝉
監督 成島 出
出演 井上真央、永作博美、小池栄子、森口瑤子、市川美和子、平田満、渡邊このみ、劇団ひとり他
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