新学期が始まり、都心に住まう親族も田舎の私たちも、先週、今週はとくに園や学校に1日中いることが多く、なかなか多忙を極めています。


我が家に日中集まる不登校の子供たちは学校の喧騒とは離れ、むしろのんびりとマイペースに勉強して過ごしていますが、学校へ登校している発達障害のある子達は毎回、新学期は熾烈です。


何もせずにぽいっと学校へほうり込めるわけもなく、どうしても親がかかりきりになります。では、どんなことをしていたのか、の具体例を出してみようと思います。



まずは幼稚園に通わせている年長の子のケースです。


年長になると、途端に先生方が「園になれたお兄ちゃん、お姉ちゃん」として扱うようになります。各自が自分で今まで積み上げてきた年少、年中でやってきたことを、年長では先生に言われたらさっとできる・・・ということを当然のように求められるシーンが多いです。


始業式も、さっさと並んで講堂へ行く、その前にトイレは行っておく。余裕がある子達はすでに楽しくおしゃべりしたり、久しぶりに会ったお友達との再会に嬉しくてウキウキしかなり騒々しくもあります。


その中で、クラス替えがあって、クラスメンバーも違う、教室も違う、先生も忙しそうで・・・となると親族の子は「一人、自分だけ取り残された気持ち」になり、周囲の変化に、平気そうなお友達に、忙しそうな先生についていけず気後れもあり、どんどん不安になっていきます。


なので、この時には必ず親が園に許可を取って(始業式当日やその後数日は手薄になるので園の方から付き添いを頼まれることもあります)子どもが安心できるような「しかけ」をいくつか持参して登園します。


まずは定番の、「一番先に登園」を実行します。


たくさんの楽しそうでにぎやかな子供たちの中へ入って行くのは、不安がある子にはよけいに自信を無くさせますので、誰もいない園に先に到着して、なじみのある遊具で「時間があるから10分だけ遊ぼう(園に許可を取っています)」と遊びで心をリラックスさせたり、花壇で綺麗な花を見たりして落ち着いたら先生にご挨拶して、新しい教室へ行きます。


新しい教室になることは、3月の終業式の時に話し、年長さんの部屋のある場所を下見して、「これのどれかの部屋になるよ」とおしゃべりしながら廊下や部屋を歩きつつ親はデジカメやビデオで新しい教室周辺の環境、トイレや手洗い場、出入り口、ロッカーなどを撮影しています。


それを休み中に部屋に写真にしたり時々テレビで映像を流して「新しい環境だけど、新しいと感じない」ように仕込んであります。


それでも、新学期のざわめき、楽しそうでにぎやかな子供たちの笑い声とおしゃべり、先生のあわただしさを目撃するとドキドキして不安でぎゅーっと胃が痛くなるのが、発達障害の子達です。その喧騒が収まり、日常の平凡な日々がやがて来るまでは、親が傍らに寄り添って「不安で見えなくなった・行動できなくなった子」の代わりに、ナビゲーションをしてやります。


ほとんどが、気がそぞろで周囲を見てぼーっとする(楽しそうなさわがしいクラスメートを見て自分は不安なのでその差や違いが不安すぎて呆然としている)とか、不安が強すぎて周囲を見ないようにシャットダウンしてひたすら手元で何かをしてうつむいているか壁際で固まっている、もしくは大声で歌ったりあちこち走って不安を感じないように「体の動きで気を紛らわせよう」とすることがあります。


暴れてしまう子の場合は、静かな環境に移動させて他の子にぶつからないように、場違いな大声でクラス運営をストップしないように場所を離れるということで対処しますが、フリーズして固まっていたり内にこもったりしている子には、淡々と「次は~をするから、~しようね」と、言うだけでなく一緒に行動してあげます。言葉で指示しようとすると、不安が極限まで強くなった子は言葉に刺激されて泣きさけんだり頑なになったりしますので、共に動く、二人三脚(時には二人羽織)で、時には無言で共に動く、共に作業するだけという時もあります。


一人であれこれ考えて、行動して、騒がしく楽しそうな子達の中で、先生に話しかけられず(お願いできず)ぽつんと一人でいることの不安に比べたら、親が付き添うだけでその部分は大丈夫だと、1日、2日と経つごとに感じていくようで、いつものような日常が戻ってくるとすっかり元気になる、ということが多いです。


事前に新しい環境に慣れるように終業式から春休みの間に上記に書いたような準備をしていると、この付き添いは数日で済む場合が多いです。ざわざわと園内がさわがしいのは全員集会や写真撮影、身体検査などがある数日だけで、いつものようなお歌や設定保育などが始まってしまえば落ち着いていきます。



むしろ、小学校の方が難しいかもしれません。


周囲の子供からの言葉が突き刺さる、という自閉していられない、意識が外を向き始めている時期だからこその困難があります。幼稚園時代はまだ「よくわからない」とか、周囲の子供たちが自分の楽しさで夢中で、他人の親族の子に気づくとかどうこう言うなどがなかった分、まだましなこともあります。


ですが小学校では、集団意識が強くなっていますので、一人不安が強くてぐずぐずしていたり、話せなかったり、逆に駆け回ったり大声を出していたり、違う様子を見せるだけで集団からちょっとちょっと、と噂されたり、何やってるんだ、と注意されたり、ちゃんとしろよ!と強く言われたりすることが増えるわけです。


ですので、なるべくそうした厳しい現実的な刺激に「まだ耐えられるだけの技能も対応力もない、受け止めるだけの状態」である発達障害の子達の場合は、精神的なダウンを防ぐためにも刺激の少ない支援級へ避難場所を求める場合が多いです。


ですが支援級も、新しい担任の先生、新し変化についていけない同じ発達障害の子達がいるわけですので、入学当初や始業式の数日はとても居場所とはなりにくいです。


この予測があるので、入学前であれば入学予定の学校の支援級担当の先生(移動する可能性があっても)、教頭先生、校長先生などと面談して、入学時期の喧騒で子供が不安が強くダウンしたり極度にハイになったりした場合の避難場所(音楽室や学習予備室、校長室、カウンセリングルームや保健室など学校によって指定場所は異なります)をあらかじめ決定しておいてもらい、親がその際は必ず付き添い責任を持つ、という話し合いをしておきます。


教室にはなるべくいられる時は滞在しますが、無理をさせると学校自体に恐怖を覚えて登校拒否すると後が大変なので、それも伝えて大丈夫そうなときに入室し、駄目そうなときは親の判断のもと、避難所で待機するということを繰り返します。


この場合も、数日経てば、入学前(または新学期が始まる前)に何度も見学したり滞在したりした準備期間の甲斐も出てきて、少しずつ慣れてきて、室内での待機時間も増え、支援級の同級生もそれぞれ落ち着いてきますから、そのタイミングで親は少しずつ付き添う時間を短くしたり、親が退出しておく時間を長くしていきます。


気がそぞろで大騒ぎするタイプや周囲が「見えすぎる」と不安が強くなるタイプは、パーテーションを作らせてもらうこともあります。壁がわに向かって机や椅子を置けばいいと言われる場合がありますが、支援級だと背中を同級生に見せると、同じような特性の子達がいますので、体の動きのコントロールが上手くない子が多く、つまり急に叩かれたりぶつかったりすることが多くて逆にびくびくしたり、怒りでわーわーなることがあるので、逆に壁に背中側を当てて、机の周りにパーテーションとなる目隠しを設置することが多いです。


学校に「してもらう」のはやめたほうがいいというのが親族の意見です。手間がかかるのと、学校側は「ちゃんとしたものを用意する」頭があるので、時間やお金がかかり現実的ではありません。私たちの場合は、先生に上記の事情を話して「許可があれば、即席でパーテーションを作ります」と提案します。


材料を見せると「そんなものでいいならどうぞ」と言ってくださることが多いので、ささっと10分ぐらいで設置します。


材料は100円ショップによく売っている、工作用のやわらかいカラフルな段ボール生地(大判)とはさみで好きな大きさに切れるスポンジ質の薄い板です。座って周りが見えなければそれでいいので、この柔らかいカラフル段ボールでぐるっと机を囲み、へちゃっと崩れないように四隅にスポンジ質の板を定規ぐらいの細さに切って添え着けるなどして強化するだけです。


親族の子には「内側は好きにディスプレイしていいよ。お絵かきした紙を貼ってもいいし、飾りつけしてもいいよ」と言うと、喜んで折り紙で折った虫や恐竜を貼ったり、好きな絵を貼ったりして「自分の落ち着く空間」を作り上げることができ、この席に座った時だけは落ち着いて過ごせるという時間がどんどん増えていきます。同級生が誤って飛び込んで来たり倒れこんだりして壊されても、安価で手に入りやすい材料なのですぐに作り直せるのが利点です。


案外、他の子もこのパーテーションを作りたがり、支援級の数人は自分の空間をそこかしこに持つこともしばしばです。そうすると支援級のクラス運営も落ち着いてますますやりやすくなります。



以上、今回実際に親族の親と子が行った内容を2例、書いてみました。

参考になれば幸いです。



以下、文中にご紹介したパーテーションを作った材料です。

大きくないものは百円ショップにも売っていると思います。強度は重ねたり、厚みを変えたりしながら工夫しています。とにかく「本人や同級生に安全な素材で、机周りをぐるっと囲めたらいい」わけなので、壊れたら作り直すぐらいの気軽さで作るパーテーションです。

こちらは小さい物。つなぎ合わせたりしてカラフルにできます。

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これはもともと大判なので、さっさと作りたい場合は使い勝手がいいです。



段ボールだけでは強度が足りないので、こういう柔らかい素材で5mm以上のサイズのものを、芯として使い、机周りに巻いた段ボールの支えや、高さを維持するための電柱のようにして使っています。


こちらも段ボールの大判の例です。

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