先日、町内で夏祭りがあり、祭りの最後に町内の子どもたち全員がおもちゃをもらえるくじを引きました。その時に、親族内でも控えめでおとなしい5歳の子、町内ではもう存在感すらないような、いつも遊びに誘ってもらえないような忘れ去られた子になってしまう不憫な子がいるのですが、この夏はNo.1の人気者、最も「遊ぼう!」と誘われる頻度が高い子に激的に変化したのでその話を書いてみます。



夏祭りのくじで、ある小学校高学年の男の子が「ラッシュアワー」を当てました。これはかなり高額のトップ3に入るおもちゃですが、遊び方が難しくなじみのない子が多いので、あまり人気がありません。それを


「え~つまんない。これ面白くないよ」と大声で不満を言っていた少年に、お年寄り(実はうちの長老の一人)が


「こっちに持ってきなさい」と言って、目の前でいきなり難易度MAXのラッシュアワーを、なんと20秒もかからないだろうという高速でやってみせました。


ラッシュアワーという遊びはご存知でしょうか。くじに出たのはこちらの子どもっぽいおもちゃの方ではなく、やや渋い、レベルも少し上がったほうのラッシュアワーでした。


赤い車のまわりにいくつもトラックや乗用車が駐車されている状態から、車は前後に進むかバックするしかできません。赤い車を出口から出せたらOKです。

私はこれはMAXはできません。普通レベルぐらいをガチャガチャ、ガチャガチャやみくもに動かしながら、なんとなくできるレベルです。



さて、この長老、自分が20秒ほどでできたMAXを、そのくじをあてた子にさせてみました。できるわけがありません。四苦八苦し、夢中になりお友達とああでもない、こうでもない、とわあわあいいながら盛り上がっていました。


そしてしばらくすると、長老が先に書いた「おとなしい脇役タイプでかつ、人から存在を忘れ去られているような」親族の5歳の子を呼び、


「これをやってみなさい」と、他の子がどうしてもできない中級レベルをやらせました。すると長老と同じように、あっという間に20秒ぐらいでささーっと赤い車を脱出させたわけです。


他の子どもたちは唖然です。ずいぶん年下の、気の弱そうな、頼りなさそうな子がささーっとやってみせたわけなので衝撃もすさまじいのでしょう。


「じゃあこれは?これもできるか?」


と子どもたちが難易度を上げてみたところ、その子はうなずいて、またささーっと数十秒でものの見事にやってしまいました。


子どもたちは大歓声です。


「すごい!お前すごいわ!」


「どうやったんだ?なんでここが動かなかったのに、どけられたんだ?」


と、まるで将棋か囲碁を習うかのように、ぼそぼそと話すその親族の子から、あれやこれやとスキルを教えてもらい


「そうか!それでこっちがこう、動くんだな!」と夢中で1時間ぐらいわあわあとグループでやってました。どうも、男の子は車を駐車する、移動させるというような作業が好きなようで、


「なあ、明日もやろう。お前あしたひまか?」と聞くので、とっさに親族の大人が入って


「昼過ぎぐらいからなら大丈夫だよ。1時ぐらいに家に来たら。スイカ食べながらやるといいよ」


と約束を作りました。実は、この控えめな内気な子は、お友達と約束して遊んだことがありません。でも、いつも他の親族の子たちを見ていて、「遊ぼう!」と近所の子から遊びに来てもらうことに憧れのようなものを抱いていました。つまり、夢がかないそうだったので、大人が介入しておぜん立てしたわけです。


おとなしい子が、嬉しそうにはにかみながら、急激に仲良くなった子達に囲まれて、最後は


「また明日な!」と言われながらバイバイしていました。そして翌日から、定期的にラッシュアワーを教えてもらいたい子や、ラッシュアワーで遊びたい子は、この巨大版をこの子が持っているのもあって家に通ってくるようになりました。


今は近所の子たちから一目置かれて、ちょっと大人し過ぎるけど、実はすごい技を持つやつ、というような位置づけになったようです。つい数日前には「おまえ、来年小学校だよな!」と、入学してくるのを楽しみにされているような言葉をもらっていました。


あまり何にも興味を持たなかった子が車は好きで、2歳の時におもちゃ売り場で目撃したラッシュアワーをずっと飽きることなく見つめていたのを親と祖父母が「これか。高いなぁ」といいつつ、誕生日にプレゼントしたのでした。それからずっともくもくとやり続けて、今ではラッシュアワー名人です。


好きこそものの上手なれ、でしょうか、芸は身を助くでしょうか。よいコミュニケーションツールとなったのでした。


ちなみに、親族の子が初めて購入したラッシュアワーは、この巨大版です。遊びに来た近所の子達の間でも、簡単そうでなかなか知恵のいるこの大判も人気です。



こちらの大判のものは大きさが巨大なわりに、車の数は少なくごく簡単な感じがします。

2歳児レベルにはちょうどでした。

実感として動かして「理屈」を理解しやすいからか、根気がなくてよく考えずおおざっぱに動かすばかりだったこの親族の子が、毎日毎日繰り返すことで「こうすればこうなる」と考えて操るようになったという大きな「変化」を見せた、なかなかよい療育グッズとなりました。




定型のお子さんと壁がなくなった遊びのツールとなりました。親族の子にも自信を得るという良い経験になったと思います。



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