日経コンピュータ2017.05.11 | HATのブログ

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IT関係のニュースを中心に記事を掲載します。日経コンピュータで重要だと感じた記事とコメントを2010年9月1日号から書いています。
このブログは個人的なものです。ここで述べていることは私の個人的な意見に基づくものであり、私の雇用者には一切の関係はありません。

特集は<さらばPC雑務 透明ロボット「RPA」に全部お任せ>です。そろそろ大和田編集長のカラーが出てきたのか、今までよりIT寄りの特集で面白かったです。ブラウザやOFFICEを扱えるマクロのような自動制御を「透明ロボット」と名付けています。日経コンお得意の勝手命名でしょう。

【Struts2ショック、さらに広がる ぴあが特損2億円、カード不正利用される】(P.06)
Struts2の脆弱性を狙ったサイバー攻撃は何度も記事になっていますが、さらに大きな被害が出ました。
・地図による小地域分析(jSTAT MAP):2万3千人の個人情報流出
・「B.LEAGUE」のサイト運営を委託するぴあから3万件のカード情報を含む15万5千件の個人情報流出
ぴあは4/25日に被害を報告し補償など2億円の特別損失が発生すると発表。株価も大幅ダウンしました。ぴあからは開発、下請けの会社名まで公開しています。それで言い訳になると思っているのでしょうか。前にも書きましたが13人のソフト会社を名指しで記事にするのは問題だと思います。

【日本IBMの「ワトソン君」、有能PMに システムの超高速開発を支援】(P.08)
IBMがWatsonを使った「超高速開発ツール分野」に参入したそうです。

  • コグニティブPMO

見積、計画、プロジェクト管理、品質管理、議事録作成など

  • 統合リポジトリー&ツール

Webアプリ自動生成、テストスクリプト自動作成など

 

日本IBMが独自開発し「世界各地のIBMにも順次展開していく」そうです。記事では詳細分かりませんので実績が出てからの詳細な特集を待ちましょう。プロジェクト失敗のお詫び文書まで自動作成されるなら笑えますが

【制御舞台とIT部門を統合 社長直結で本業に貢献】(P.18)
日立造船の常務執行役員島崎雅徳氏です。1997年にIT部門の一部を分社化して「日立造船情報システム」を作った。2006年にNTTデータグループに移した。今回基幹システム構築はその会社でなく日本IBMに切り替えた。元子会社にも多少手伝ってもらうが必要な人員は減るので、今後はなるべく社内で担える体制も整えたい。

 

バブルがはじけた後、「コアコンピタンス」とかいうコンサルに騙されてIT部門を分社化した大手企業は多いです。各社どう扱うか苦労されています。パナソニックは富士通・IBMに全面アウトソーシング、LIXILは本社に復帰、日本郵船は富士通に51%売り渡し。日立造船は切り離して本社でまた新たな体制を作るのですね。大胆です。

【さらばPC雑務 透明ロボット「RPA」に全部お任せ】(P.20)
RPA(ロボッティック・プロセス・オートメーション)をググると去年くらいからようやく広がりつつある分野のようです。Wikiには「、ITナレッジの少ない業務部門スタッフ向けの直観的な操作で構築可能な自動化である。」とありました。

事例として、ユニリーバのベストストアファインダーは製品をクリックするとAmazonや楽天などが在庫のあるなし、値段などが一覧で表示されます。これはAPIでリアル検索しているのでなく定期的にそのサイトに行って情報を集めたものを見せているそうです。(それはそれでビックリ)このブラウザに商品名を入れて検索するという作業をRPAで自動化しました。

 

安易に自動化すると作業時間が減るどころか人手の倍以上手間がかかることがあるので業務プロセスの整理や条件分岐の洗い出し、例外処理や障害処理の代替策検討が必須です。
このアプリは月額80万円ほどもするので「人材派遣とペアで、ソフトロボを派遣スタッフとして送るハイブリッド派遣」を始めた企業もあります。
現場の利用部門が勝手に作成する「野良ロボット」の増加を防ぐこともポイントだそうです。
恐らくOSやブラウザに強く依存しますので、業務として継続するならAPIで真正面から構築することを考えた方が良いでしょう。

【何でも答える「自動対話AI」 人手不足、解消の切り札】(P.34)
自動対話技術「チャットボット」の広がりについての特集です。いくつかの企業の事例を特集されていますが、恐らくこの分野の日本では最先端の「パン田一郎(フロム・エー)」や世界の最先端で大ブレーク中の「Luka」を載せていないのは怠慢なのかわざとなのか。
2016.05.12号の<すべてはチャットに ボットが起こすUI革命>よりは具体的でしたが、突っ込みが弱かったです。Amazon Echoの日本語版が出た時の地ならしとして受け止めました。

【スマホは負け、ルンバが勝つ 以心伝心でホームIoTの中心を狙う】(P.44)
米アイロボット CEOコリン・アングル氏です。面白いインタビュー記事でした。
ルンバの世帯普及率は米国:9%、日本:4%。市場開拓のために日本法人を新設した。日本向けに作った雑巾がけ小型ロボット「ブラーバジェット」はルンバ以上の売上を達成できるとみている。
長期戦略として、人が他人に頼らず長生きできるようにする技術の提供を重視している。IoTでルンバを制御するのは今でもやっているが、ルンバが家の地図を自動で作る機能を拡張して各部屋にあるIoT機器を制御するオーガナイザー機能を持たせる。わざわざ電源を入れて操作するスマホに勝てる。
この長期戦略を初めて知りました。これに向かった先鋭的な会社と認知されるとさらに広がるだろうと思います。

【ケーススタディ技術:先進IoTで冷蔵庫を見張る SIGFOX採用、通信料は年千円】(P.48)
ナポリの窯を展開する「ストロベリーコーンズ」は、食材の廃棄ロスを防ぐため冷蔵庫にセンサーを付けてインターネットで監視するIoTシステムを2月に稼働させました。
SIGFOXの日本でのサービス開始と同時にスタートしていますので恐らく1st事例でしょう。
「手ごねから発行・成形まで1枚ずつ店で手作りする」というコンセプトですので適正温度から許容出来る誤差が2~3度しかありません。機材故障や停電、ドアの閉め忘れなどの事故か何度か発生していました。既存通信会社に提案させると月額数千円はかかるので店舗で負担するには高額すぎます。そこで懇意にしていたベンチャーがSIGFOXを提案。サービス前だったので機器を手作りしてサービス開始と同時に稼働させました。
「量産すれば子機2万円、親機5万円程度」だそうですのでレストランに広がって美味しいものを出してくれるとうれしいです。IoTはマネタイズが難しいと言われますがLoRaWANを使えばこういうわかりやすいメリットが簡単に出そうなので期待出来ます。

【要件定義後の追加開発機能に不具合 3人が心臓移植の順番待ちを飛ばされる】(P.52)
心臓移植のマッチングを行う日本臓器移植ネットワーク(JOT)でプログラムの不具合で順番待ちを飛ばすという事故がありました。
厚生労働省に提出した報告書によるとシステムを開発したのはNECネクサソリューションズ。「基本的な設計能力及びプログラミング能力が不足していた」と書かれていたそうです。

日経コンが調べると、要件定義完了時点の機能数は107項目。ところが客側の業務理解不足のために追加開発が発生し、最終248項目となりました。テスト工程は8ヶ月から5カ月に短縮されたシステムだったそうです。
これを受けた限りはNECネクサスの責任ですが、こういう発注者も受注者も不幸せになるような事態をどうやればなくすのは技術でなく結局は両社の人間力(気配り)だと思います。

【社長の疑問に答えるIT専門家の対話術 第84回】(P.76)
今回は根本的なコストダウンについてです。プロセス産業(石油・化学・金属等)が生産ラインで利用する分散制御システム(DCS)の標準化を行うコンソーシアムが米エクソンモービル中心に立ち上がったという話題。2017年にも仕様をとりまとめ、メーカーに提示。2021年にその仕様に基づいた機器を利用するそうです。それによって相見積が可能になります。
2010年に軍用航空機と対地情報収集など関連システムとの標準仕様を作成し調達コストを下げたという実績があります。
こういう標準化は日本は本当に下手だと思います。この仕様が出来れば乗っかるしかないでしょう。富士通がPlatinumメンバーとして参加していたのは頼もしいです。

以上