『養生訓』 大酒の戒め(巻四45) | 春月の『ちょこっと健康術』

春月の『ちょこっと健康術』

おてがるに、かんたんに、てまひまかけずにできる。そんな春月流の「ちょこっと健康術」。
体験して「いい!」というものを中心にご紹介します。
「いいかも?」というものをお持ち帰りくださいませ。

酒を飲には、各人によつてよき程の節あり。少のめば益多く、多くのめば損多し。性謹厚なる人も、多飲を好めば、むさぼりてみぐるしく、平生の心を失ひ、乱に及ぶ。言行ともに狂せるがごとし。其平生とは似ず、身をかへり見慎むべし。若き時より早くかへり見て、みずから戒しめ、父兄もはやく子弟を戒むべし。久しくならへば性となる。くせになりては一生改まりがたし。生れ付て飲量すくなき人は、一二盞(さん)のめば、酔て気快く楽(たのしみ)あり。多く飲む人と其楽同じ。多飲するは害多し。白楽天が詩に、一飲一石の者、徒に多を以て貴しと為す。其の酩酊の時に及て、我与亦異ること無し。笑て謝す多飲の者、酒銭徒に自ら費す。といへるはむべ也。


酒を飲むには、各人によって、それぞれの適量がある。少し飲めば益が多く、多く飲めば損失が多い。生来慎み深くて温厚な人も、多飲を好めば、欲深く欲しがるようになって見苦しく、平常心を失い、言行が乱れてしまう。言行ともども狂ったようになり、日頃とは似ても似つかぬものとなる。身を省みて、慎まなければならない。若いうちから早く反省して、自分を戒め、父兄も早く子弟を戒めるべきである。長期間見過ごしていると、習慣となってしまう。癖になってしまえば、生涯改まらないものだ。生まれつきあまり飲まない人は、一~二杯飲めば、酔って心地よく楽しむことができる。多く飲む人と、その楽しみは同じはずである。酒を多く飲めば害が多い。白楽天の詩に、「一飲一石の者、徒に多を以て貴しと為す。其の酩酊の時に及て、我与亦異ること無し。笑て謝す多飲の者、酒銭徒に自ら費す。」というのはもっともなことである。


お酒は、少しの量でも、酔っていい気分になりさえすれば、同じじゃないか。たくさん飲むのは、ただお金がかかるだけでしょ。…というのが、益軒先生の言い分です。今朝の「肝臓が大きいとお酒に強い?」 にも書いたように、大酒は肝臓にも負担をかけます。休肝日をつくって、お酒は楽しく飲みましょう。


白楽天は、唐代の大詩人ですね。益軒先生が引用された詩は、『効陶潜體詩』の一部分のようで、↓の3行目がそうです。


朝亦獨醉歌  暮亦獨醉睡  未盡一壺酒  巳成三獨醉  勿嫌飲太少  且喜歡易致


一盃復两盃  多不過三四  便得心中適  盡忘身外事  更復強一盃  陶然遺萬累


一飲一石者  徒以多為貴  及其酩酊時  與我亦無異  笑謝多飮者  酒銭徒自費


ご興味ある方は、訳文をみつけましたので、こちらへどうぞ→「〆張鶴 大吟醸」