責任の正しい利用法 | ちょっと役立つ薬剤師のブログ

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薬剤師に関係する素朴な疑問をちょっとだけ解決します。

就職活動などをしているとたまにされる質問があった。

「社会人と学生の違いは何だと思いますか?」

同じような質問として正社員とアルバイトの違いを聞いてくる場合もあったが、この問いに対してのよくでる答えが「責任の違い」というやつだった。

私はよくそこで「アルバイトは誰でも出来る仕事をこなすもので、正社員は自ら仕事を見つけて創りだしていくものだと思います」と答えていたのだが、当時の私は若かった。正社員でもほとんどの人は誰でもできる仕事をやっていることを知らなかったのだ。
だが勘違いしないでほしいのはこの場面で「保険や給与、保証面などで違います」と正確に答えるのは面接ではNGであるということだ。いや、NGではないかもしれないが少数派であることには間違いないので答える際は注意していただきたい。

話がそれたので本題に戻すとここででてくる「責任の違い」とはいったい何なのであろうか。

まず責任の意味を辞書で調べると

1 立場上当然負わなければならない任務や義務。
2 自分のした事の結果について責めを負うこと。
3 法律上の不利益または制裁を負わされること。特に、違法な行為をした者が法律上の制裁を受ける負担。主要なものに民事責任と刑事責任とがある。

という意味であることがわかった。

こう調べてみると社会人と学生の違いが「責任」であるということは多少理解できる。
学生というのはそもそも立場(職務)というものが無いし、自分が出した結果について責めを負わされることはほぼないからである。

社会人であると少なからず職務があるし、ミスをすれば責めを負わされるだろう。
悲しいが現実的にそうなのだ。


ここで少し切り口を変えて、なんで責任を負う必要があるのか考えてみることにする。
大半の人は企業人になるわけなので、企業の責任について考えてみよう。

企業の責任は当然「利益を出し、社会に還元すること」である。そしてこの責務を果たすにはまず利益を出すことが必要となるので、企業の責任≒利益を出すと置き換えても問題はないだろう。

それでは次に企業という大きな責任ではなく、個人がとる責任の意味について考えたい。
例えば会社の社長は「大赤字の責任をとって辞職します」などとよくいう。利益をとれなかったので、責めを負ったわけである。

「会社をやめなきゃいけないなんて厳しいなぁ」と思うかもしれないが、当然会社の社長も慈善事業で責任のある職についたわけではない。自分にとって利益があるからその職についたのである。辞職というのはその利益に対してのリスクであるのだ。

このリスクは社長だけに限らず、課長や平社員でも当然持っている。責任を果たせなかった場合、減給・降格となることもあるわけなのだから企業人なら誰しも持っているものなのだ。

しかし、ここでよく考えてもらいたいのが、普段とっている小さな責任は本当に利益に繋がっているのかということだ。

企業では小さなミスをおかすと、始末書というくだらないものを書かされることがあるがそれは本当に利益を生み出しているのだろうか。始末書を書くが嫌で、ミスを隠蔽し、それが元となって本当の損失になっていないだろうか。故意のミスと過失(故意の反対)のミスを同じように処理していないだろうか。

私は責任というのは誰かがとれば消えるものだとは考えていない。
誰かが責任をとればとるほど、それは段々と蓄積していき、いずれは良くない結果として反映されるものだと思っている。

よく責任感がないと怒られている人がいるが、責任をとっても利益がでない場合、誰でも責任など持ちたくはないだろう。
こういった責任をとっても利益が出ない人に責任が負わされている場合、これは責任を持つべき誰かが自分の責任を転嫁・分散しているケースが多い。こうなると良い結果にならないのは当然である。

責任というツールを利用して、人を操作しやすくするのはとても有効なことだと思うが、それが不利益を生み出しては元も子もない。

報酬と責任のバランスを上手に設定し、最大限利益を生み出すのは非常に難しいことである。
そしてそれを上手く利用するのがいわゆる「できる人」になるコツなのかもしれない。