その時には離婚へのカウントダウンが始まっていたなんて思いもしなかった。


ある出来事がきっかけで全てが狂いはじめた…そう全てが。

予期せぬ事態がひとつ…またひとつと…次々に僕とまーなを襲ってきて…。

少しずつ…溝ができて…疑う気持ちが芽生えて…信じられなくなって…。


最初は、単なる妬きもちやワガママだったと思う。

日常的に冗談交じりで嫉妬のし合いっこなんかしてた二人。

お互いがお互いに甘えているって感じの状態だったのかもしれないな。


結婚したての頃の僕の身体はかなり女性化してた。

それをごくごく自然に受け入れる事ができる程にメンタルも安定してて。

自分ははじめから女性に生まれてきたかの様に男性の記憶は薄れてて…。

当然そうなると周囲の扱いは180度変わってきてた。

僕を男性として見てくれるのは親くらいなもんで他の人は完全に女性扱い。

戸惑う気持ちがありながらもまーなの笑顔に勇気をもらって慣れてきてた。


そんなとき…

ある男性が僕の目の前に現れた。


名前は、直樹くん。(仮名)


歳は僕より5つ上。細身ですごく背が高いいまどき風な感じの人。

仕事はバリバリの営業マンで物凄く明るくて。とにかく面白い人。

そんな感じの彼でした。


知り合ったのは居酒屋さん。

僕は友達と待ち合わせをしてたんだけどドタキャンされちゃって。

仕方なく他の友達を呼ぼうかなって携帯の電話帳を検索してた。

お店の出入口の脇にあったベンチで。

そこに酔った彼が登場。

お手洗いに行こうとしてみたいだったけど何故か進路は僕の方へ。


「あれ?今、俺と目があったよね?軽く見つめあっちゃったよね?(笑)」


さすがに僕は全然笑えず完全無視。

でも彼はかなり上機嫌な状態で僕の隣に座ってきた。


「ねね、何でシカト?俺ってかなりウザかったりする?」


はぁ…まぢしつこい。てか貴方の仰る通り非常にウザイです。と心の中。

だけど酔っ払いの彼は一緒に飲もうを連発。

会社の同僚達らしき人間たちはそっちのけで一緒に飲もうをひたすら。

そうこうするうちに僕もどうしようかなって思いはじめて…

ドタキャンされたとはいえその日は飲みたい気分だったから。

さすがにカウンターで一人飲みはちょっとって感じだったし。

よく考えてみれば男同士なんだから問題ないよねって軽い気持ちもあった。


結局、彼と乾杯してる僕。


一緒に飲みはじめて気がつけばあっという間で2時間が経ってた。

僕は思わず時計をちらり。ちらり。

すると彼は時間を気にしている素振りの僕に気がついた。


「終電にはまだ時間あるけどそろそろ帰る?」

「下心あるみたいで嫌だから送るとか言わないけど連絡先交換はOK?」


いやいや…微妙に下心あんじゃん!(笑)

とかツッコミを入れようかとも思ったけど酔ってたせいかメルアドだけ交換。

とにかく笑顔と声の大きさが印象的な彼。すっかり仲良しになってた。

彼は僕が男性なのをまったく気がついてない様子だった事が気になったけど。


帰り道…さっそく彼から携帯にメールが入った。


[今夜は付き合ってくれてありがとね!お礼に改めて今度飲み行かない?(^^)]


思わずふき出したよ。今飲んでたばっかなのにもう次?みたいな。

次の瞬間、、僕の中で変な罪悪感を感じたの。

そう…まーなに対して何か悪いような…そんな気持ちで一杯になった。

僕はまーなだけを愛してたから他の人を意識するはずもないのに…。

しかも相手は男性。当たり前だけど同性。ありえない。


おうちに着いてみると…まーなは一足先に寝ちゃってた。

すっごく可愛い寝顔で。

今夜あった事は明日話そって思いながらまーなを起こさない様に布団に入った。


だけど…なぜか話をするタイミングを逃がして数日が過ぎた。

そうすると、どんどん言いづらくなってく僕がいた。

隠し事をしてみたいですごく嫌だったんだけどもう会わなきゃいいかなって。

結局そのまま放置してた。


まさか…この事が後ほど大きな喧嘩になるなんて予想もできなかった…。