「男を知らないオマエがどうしてそう言いきれるの?」


僕の事を真剣に見つめながら彼は続けた。


「男も女も経験した上で女を選ぶならまだ話はわかる…」

「だけどオマエ、そうじゃないだろ?」

「片方の経験だけで愛を語るなんて浅はかとか思わない?」

「なんか説教臭くてウザいかもしれないけどさ、俺はそう思う。」


僕は、言葉を失った。

怖かったからじゃない。困ったから…返答に。

彼は僕を男として認めようとせず、ビアンに対する見解を淡々と語ってる…。


「まず、経験してみるべきじゃないかな?」

「あ、俺じゃなくたっていいから…」

「とにかく男って生き物がどんな風なのかを経験してみるべきだと思うよ。」


僕はなんて彼に言えばいいのか…

まったく思いつかなくて。悔しいようなそんな気持ちにすらなった。


だけど…はっきりしてる事がただひとつ。


僕の体も心も全部まーなのもの。


この事だけは僕の中でしっかりとわかってた。

ただ、これをどうやって彼に伝えるのか…そこが問題で。


いや…

よくよく考えてみれば…


僕が性転換したとか、愛する人がいるとか、関係なくて。

肝心なことは、、僕が彼を恋愛対象に見れないってこと。

この事実をどのようにして彼に理解してもらうのか…納得してもらうのか…。


ん?


理解?納得?

それすらも必要ないような…。

いつから僕は彼に対してそういう義務感を抱いてしまったのか?



まーな大好き☆



これだけでいいじゃん!これだけで十分じゃん!

そう思った。

無責任なのかもしれない。

いい加減なのかもしれない。


だけど、、彼は彼。僕は僕。


それ以上でもそれ以下でもなくって。


僕とまーなの事は、僕とまーなにしかわからない。


あらためてそう思った。


「男の子とか女の子とか関係なくて…」

「好きとか嫌いとか関係なくて…」

「貴方に興味がもてません。以上です。」

「さようなら。」


僕は彼の気持ちや意見を全て無視して一方的に別れを告げた。


「もう二度と連絡しないから、そっちもしてこないで。」

「ばいばい。」


僕は彼の車を降りた。「あばよ!」って感じで。(笑)

すごくスッキリ。気分爽快。

そんな気持ちだった。晴々してた。

自分で自分を久しぶりに褒めてみたりするほど。


彼が車の窓を開けて僕に向かってなんかゆってる。

でも無視。

ひたすら無視。



なんだかんだと時刻はもう夜中だった…

さすがに寝てるかなって思いながらも…

息を切らしながらまーなの待つおうちへダッシュで帰った。


静かにドアを開ける…するとリビングには明かり。

ゆっくりと覗いてみるとまーなが眠っちゃってる…



かわいい。


すごく。


とにかく可愛すぎる寝顔。

愛しくて愛しくてたまらない。

思いっきり抱きしめたい衝動にかられながらも…

起こしたら可哀想ってことで我慢とかしてみる。

残念そうにベットから毛布を持ってきて優しくまーなにかけてる僕。


一件落着。


僕はホッとしてた。

彼とキスしてしまった事は…

土下座して額を床に擦りつけて謝ろって思ってた。

もう先延ばしになんか絶対しない。

まーなが起きたらすぐに言おって。

すぐに謝ろって。




♪♪♪ ♪♪

♪♪♪ ♪♪♪♪♪ ♪♪




着信音。

直樹くん?とか思いながら、、恐る恐る携帯を見る。


違う。


僕の携帯じゃない。

ふと見ると、、同じ機種で色違いの携帯。同じ着メロ。

着信はまーなの携帯だった。


眠そうに目を擦りながら起きるまーな。


「あ、はるかりん…おかえんなさい…」


そうゆうと、携帯を手にとり電話にでるまーな。


「…もしもし……」


寝ぼけてる様子のまーな。


「…あれ……切れちゃった…」


相当疲れてたのか…またパタっと倒れこみ眠りはじめた…。


「まーな、ここで寝ちゃダメだよ…向こう行こ?ベットで寝よ?」


僕は気だるそうなまーなの手をとって一緒に寝室へ。

久しぶりに手を繋いで眠る夜。

あったかいまーなの手。

もう絶対に離さないぞとかって思いながら…

僕は妙な満足感にひたりながら幸せを噛みしめてた。。



まーなの携帯に電話してきた相手が誰かも知らずに…。