「ごめん…」


聞こえるか聞こえないか…そんな声。

僕は何がごめんなのかも理解できない状態だった。


ただ。ただキスをした。って事だけはきちんと認識してて。


まーなとは全く違う感触・感覚の口づけ。

もうとにかく大パニックで。呆然としてるしかなくって。

気がつけば力強く僕を抱きしめる彼。


「痛…ぃ」


思わず口に出た言葉。

ハッとした様に僕から離れる彼。凄く焦ってた。


「嫌だった…?」


なんにも答えられない。

我に返りはじめた僕は急に恥かしくなって…。

ぜんぜん相手を見れない。上手く喋れない。

自然と目線は海の方へ…とにかく落ち着こおって思った。

何が起きたのかってゆうより、、何をしてしまったのか…。


「やっぱ、おかしいと思うよ…女と女って…………」


僕は、一瞬固まった。


「同性愛を否定するつもりはないけど…やっぱり不健全っていうかさ…」


僕とまーなは同性愛じゃない!!心の中でとっさにそう思った僕だけど…

ある意味、、そこを目指してる僕とまーなであるだけに…言い返せなかった。

なんだろ…彼から仕掛けたキスのはずなのに…

まるで僕がいけない事をしたような錯覚に囚われた感じだった。


「帰る…。」


僕が精一杯、口にできた言葉だった。

でも、、その言葉をかき消すように彼は大きな声で、、、


「思いきって俺とエッチしてみない?!」

「つーかさ、俺、オマエの事を抱きてーって思ってる!!!」


怖かった。勢いが。彼の真剣な顔が。すごく。

戸惑うとかそんなんじゃなくて怖かった。

この瞬間、自分が女性として見られ扱われる事を本当に実感した。


性転換をしているとはゆっても…心は男。

どんなにまーなの意向に沿って女の子の訓練をしてても…心は男。

日常的に女性として生活をして慣れはじめてても…心は男。


女性として扱われる実感の反面、、、

自分の性認識は男を自覚した瞬間という事でもあったんだよね。。。


何か凄くせつなくなって…涙がポロポロしはじめちゃって…。

まーなに会いたい。

まーなに会いたい。

まーなに会いたい。

それだけになった.。頭んなか。もう怖いとかじゃなくて…まーなに会いたくて。


助けてって。


情けないよね。情けないけど…僕の中では会いたいで一杯になっちゃって。

ボロボロ泣いてるわけじゃなかったけど…涙は止まらなくて。

つぎつぎと頬を伝ってくる。

目の前に広がる大きな海がにじんで見えてて。


「とりあえず、車もどろ?」


急にすっごく優しい声で彼が助手席のドアを開けてくれた。

僕は無言のまま車にのった。


でも…彼はなかなか車に乗ってこない。

ふと見ると海を眺めてる。タバコ吸いながら。缶コーヒー飲みながら。

すっごく考えてる風でもあり…すっごく悩んでる風でもあり…。

僕の視界に映る彼。間違いなく男性。

でも…不思議と別の人間に思えた。

ついさっき自分を男性として自覚したばかりなのに…彼とは違う。

何か上手く表現できないけど…自分とは全く違う人間。そう思えた。


じゃぁ…僕ってなに?なんなの?男?女?どんな人間なの?


なんかどんどん混乱してく自分がいた。

よく考えてみればすごく複雑な状態。

まーなへの愛を第一に考えて突っ走ってきた僕。

自分のしてる事の意味を改めて考えさせられてた。


元々は普通に男の子だった僕。

幼馴染の女の子を好きになって。付き合って。プロポーズした。

だけど、彼女はレズビアンで。僕が女の子になる事を望んだ。

結果…僕は女の子になる決意をして性転換を…。

女の子としてのカラダ。装い。仕草。言葉。

完全に女の子同士の恋愛をしながらの結婚生活。


そして…男性から具体的なアプローチを女性として受けてる僕。



一体何者??僕って一体なんなんだ???



たくさんのクエッションマーク。もちろん、すぐに答えなんかでなくて。

そうこうしているうちに彼が車に戻ってきた。