ゆっくりと空は赤く染まり
人々は皆 忙しそうに
家路へ急ぐ

ウンスとタンを乗せた輿が
市のそばを
通り過ぎようとした時
外から喧噪が届いた

輿の窓を少し開けてみると
綺麗な身なりの女人が
若い男と言い争っている


ヘミ ヒョリ
様子を見て来て


放って置けないウンスは
二人に頼んだ


痴話喧嘩じゃないですか?
医仙様
放っておきましょう
それより早く用事を済ませましょう


チェヨンがウンスとタンの
帰り道を心配して
警護に付けたテマンは
道端の痴話喧嘩に
首を突っ込んでいいものか?
チェヨンの睨んだ顔が浮かび
困惑顔
そして様子を見に行った二人も
おかしなことを言った


女人が脅されたり
酷い目に遭っているわけでは
ないようですけど


え?そうなの?


どちらかというと
女人が命令していて
若者が泣いて許しを請うて
いるようです


は?どういうことかしら?


ネ〜〜


タンがウンスに答えた


あのお嬢様は
イ・ジェヒョン様の
ご息女ではありませんか?


ヒョリが言った


前に祝賀の儀の
宴でお見かけしたような?


そうなの?
私 お会いしたことがないのよ
一体どうしたのかしら?
婚礼を明日に控えて
往来で若い男の人と・・・
媒酌人として放っておけないわ


ウンスは
止めるテマンに微笑むと
タンを抱っこしたまま 
輿を降り 女人のもとへ
向かって行った


あああ また始まった
医仙様のお節介
上護軍に叱られちまう


テマンは慌てて後を追う


お嬢様
そんなことできねえだ
引き受けたら
おらが旦那様に殺されちまう


若い男は何度も同じことを言って
女人に頭を下げている


少し困らせてやりたいだけなの
私の気持ちに
気づかないインギュ様も
気づかぬうちに
私を苦しめている媒酌人も
だから協力して頂戴


お嬢様
そんなぁ〜〜
勘弁してくだせえ
勘弁してくだせえ
おらまだ殺されたくねえ


若者は走って逃げ
ウンスは女人に声をかけた


どうかしたの?
旦那様と媒酌人を困らせるって?
穏やかじゃないわね


にっこり微笑んだ


━─━─━─━─━─


結局 いつもより少し遅めに
屋敷に戻ったチェヨンは
閨でタンを寝かしつけている
ウンスの様子が少し浮き足立って
いるように思えた


そんなに楽しみなのか?
明日の婚礼が?


チェヨンはウンスの近くに
座りこむと尋ねた
どうもイタズラを仕掛けたような
かつて「マタハリ作戦」と
言った時の顔つきと重なった


おかえり ヨン
え?ええ
もちろんよ
久しぶりにヨンファにも会えるし
うふふ 楽しみ楽しみ〜
そうそう それに市で
叔母様のお土産も買えたわよ
気に入ってもらえるといいけど


明日の土産に
タンも一緒に食べられるような
甘いお菓子と揃いの茶器を
ウンスは用意した


叔母様の明日のお茶の相手は
タンだわね〜うふふ
そうだ 私まっすぐイ様のお屋敷に
行くから
王宮へタンを連れて入ってくれる?


何?
イムジャの輿はどうするのだ?
タンがいると俺は馬では行けぬ


ああ ポムの輿に
乗せてもらうから大丈夫よ
迎えに来てくれるから


そうか・・・


うん 叔母様によろしくお伝えして
帰りはもちろん迎えに行くわ
明日は帰りが遅くなりそうだから
そのまま
王宮の邸に泊まりましょうよ?


ああ それがよい 
そうしよう


チェヨンは頷き
それから尋ねた


イムジャ 
念のために今一度 聞くが
先日の隠し子の時のように
婚礼でなにかしでかそうと
いうのではあるまいな?


え?まさか
王様もいらっしゃる結婚式で
何をしでかすのよ
うふふ
おかしな人ね〜
でも もし何かあっても
驚かないでね〜


イムジャ 
やはり何か企ててておるな
俺に隠し事はなし
白状しろ


チェヨンはウンスを
引き寄せると
抱きしめて尋ねた


なんのこと?


イムジャ 
夫婦に
隠し事はなしであろう?


今度は
チェヨンはウンスの
耳たぶを甘噛みしならが
囁いた


タンが起きちゃう
今日はたくさん歩いたから
疲れたのね〜
ヨン お風呂に入ってきて
待ちきれなくて
眠っちゃいそうよ
今夜はなしにする?


ウンスはチェヨンに
甘えた声で尋ねた


な なし!だと?
それは困る


チェヨンが慌てて
閨を飛び出すのを見送り
ウンスはくすっと笑って
寝台に眠る我が子を見つめた


仕事場と育児室はごく近く
何かあれば飛んでいける
だが明日は違う
一日そばにいないのは
初めてのこと
心配で仕方ない


大丈夫かな?タン
私の方がなんだかさみしいわ
明日はいい子にしてるのよ
オンマも頑張るからね


ウンスは
まぶたがくっつきそうになるのを 
必死にこらえ
チェヨンの足音が戻るのを待った

恋しい夫の愛しい肌
今宵も触れたり触れられたり
ウンスは夢の中へと落ちていく


*******


『今日よりも明日もっと』
あなたを想う優しい嘘
あなたに届くといいのだけれど



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