トクマンはチェヨンの出現で
兵舎に逃げ帰った
二日酔いはすっかり治まり
典医寺の修羅場を想像して
身震いをした

鍛錬につき合っていたテマンを
見つけると
手招きして問いただす


なあ 典医寺に患者が
運び込まれたらしいが
なんか 知ってるか?


はあ?典医寺に患者が
運び込まれるのは当たり前
じゃないか?
何言ってんだか


テマンは呆れたように
トクマンに言い返した


いや それがさぁ
若い医者が
おかしな勘違いをして
その患者が
医仙様の隠し子だって
言い出してさ


はああ?
なわけ


そうだよな
あるわけないよな
それはわかってるんだ
だからさ
その少年って言う奴
もしかして?
あの・・・倭冦のたい・・・


お前 滅多なこと口に
するなよ
上護軍がまたいつかみたく
濡れ衣を着せられるだろ
今度は 反逆罪だぞ


まだチェヨンが隊長だった頃
王様の信が熱いことに
嫉妬した輩に
賄賂の濡れ衣を着せられ
隊長は投獄され
ウダルチは動きを封じ込まれた
過去を思い出し
トクマンは神妙な顔をした


あ ああ
俺の気のせいだ
それに俺
総大将の顔 覚えてない
ほら口の辺り 
仮面みたいなもので
隠していただろ?


ああ そうだったな


でも 綺麗な目をしてた
トルベがいたら
コハクの時みたく
かわいいって騒いだかも
知れないな


テマンはコハクの名が出て
一瞬たじろいだが


お前 余計なこと言うなよ
コハクのことも
倭冦のことも
知らんぷりしとけ
口は災いのもとだ


と 言い含め
トクマンはこくこく頷いた


━─━─━─━─━─


ウンスは育児室の奥の寝台に
腰掛けて
タンにお乳を含ませていた

狭い育児室の中を
楽し気によちよちと
歩き回り
タンは疲れた様子で
ウンスに乳をせがんだ

離乳食もうんと進んで
お乳を飲む量も減っては来たが
やっぱりウンスのお乳は
大好きタン
ウンスの乳をにぎにぎと
触りながら 乳を飲む


うふふ
いっぱい歩いたから
喉が渇いたのね
たくさん飲むのよ
あっ
そうだわ お外歩きの
かわいいカプシン(伝統靴)が
必要ね〜


イムジャ 
歩いたとわかれば
きっとすぐに叔母上から
届くに違いない


うふふ そうかも


二人は顔を見合わせた
チェヨンはウンスの隣に座り
時々 唇を合わせると
空いている方のウンスの乳に
すっと手を伸ばす

むにっと触ろうとすると
小さなタンの手が
大きなチェヨンの手を
払いのけた


あ〜あ〜う〜〜


お乳を口元から離して
ふくれたように言うと
ちろりとチェヨンを見た


ヨンは駄目だって うふふ
今はタンのお乳だもんね
ヨンは夜まで待って・・・ね?


ウンスは口を尖らせた
チェヨンの頬に
なだめるように
ちゅっと口づけた


そうこうしているうちに
タンはすっかり寝入り
チェヨンとウンスは
ジュヒにタンを預けて
イサのいる病室へ
向かうことにした


なんだか 嵐になりそうね
このところ嵐が続いて
心配になるわ


真っ黒い雲を見て
ウンスが言った


そうだな
雷が落ちるかも知れん


ウンスがぎゅっと
チェヨンの手を握って言った


やだ 怖い
ヨンと一緒に帰る
邸で仕事が終わるの
待ってるから


そうか?
ああ そうしろ


どことなくうれし気な
チェヨンと手をつないで
ウンスは
典医寺の中を歩く


隠し子かあ〜うふふ
まあ 確かに
いてもおかしくない年だけど


ったく
どこからそんなことを
思いついたのだ


チェヨンはまた憤慨したように
ウンスに言った


私とイサが似てるみたいね
イサも私のこと
オモニに似てるって言ってた


そうなのか?


ええ


そうか・・・


うん・・・
ねえ イサは
これからどうなるの?


そうだな・・・
王様には仔細を
すべてお話ししてある
なんとか生き伸びる方策を
考えておるところだ


いいアイデアが浮かぶと
いいけど


あいであ・・・か


病室に入ると イサは
挑むような目をして
チェヨンを見た
敵を倒す武士の顔だと
ウンスは思う


イサ そんな怖い顔
しないのよ


ウンスはイサの手首を掴むと
脈を診た


うん 落ち着いてるわね


どうだ
生き返った気分は?


チェヨンはイサに
静かに 尋ねた


殺してくれたら
よかったのに
置いて行けと言っただろう


苦しそうに切なそうに
イサは言った


うふふ
この人と同じこと言ってる


ウンスはイサを見た


この人もね
私にそう言ってたのよ 昔は
生きているのが辛かったみたい
信義がなんなのか
かわからなくなってたんだと
思うわ
でも 今は絶対 死ぬなんて
考えてないはず
守るべき相手がいるからね


俺にはいない
オモニは死んだ


イサは言い返した


あら 守りたい相手なんて
どこで出会うか
わからないわよ
それに死んだら出会えない
生きてこその この世だわ
あ ちなみに
私 この人
チェヨンの奥さんなの 
うふふ


イサは驚いたような顔で
ウンスとチェヨンを見つめた


私ね 天界の人間なのよ
あ 倭国に言っちゃう?
そうしたら狙われちゃうわね
でも構わないか
チェヨンがいるもの
必ず 守ってくれるもの


ウンスがチェヨンを見つめ
チェヨンは頷いた


天界から此処に来たときは
そりゃあ いろいろ
大変だったんだから
でもこの人と恋をして
いまじゃ もとの場所に
戻りたいとも 思わないわ


オモニは海の向こうを
よく眺めていた
無理矢理
高麗からさらわれて
父上の側女になったから


そうだったのね・・・
じゃあ オモニにとって
イサは生きるすべて
イサはオモニを守る為に
倭冦になったの?


父上が頭領だったから


じゃあ 
父上はオモニを大切に
思っていたのかもしれないわ
それで 跡継ぎにイサを選んだ


・・・


イサは返事をしなかった


在りし日の父親と母親を
思い浮かべた
そういえば
父親は優しい目をして
オモニを見ていた

「勇治(イサハル)
そなたの名前はおじじ様の
名前から治(ハル)という
一文字頂いたのだ
ほら 父の名にも同じ文字が
入っておろう?
我らがおじじ様の血を受け継ぐ
ものだとわかるようにな」

幼い頃にイサの頭をなでて
よく聞かされた話だ


遠い目をしているイサに
ウンスは不意に言った


そうだわ
いいアイデア
思いついたかもしれない


そして
にっこり微笑んだ


イムジャのその顔
たいてい 
ろくなことではない
かつてもそうであった
マタハリ・・・作戦
とかなんとか
えいが?であった?とか?
とにかく
ハラハラさせられること
ばかりではないか
イムジャの あいであ
とやらは 却下だ


ひっどーい


ウンスが言い返す


でも
ヨンが守ってくれるって
思っているから
だから安心して無茶が
できるのよ


おいおい
無茶する気か?
ならぬ ならんぞ
それに策なら俺にもある


えええ そうなの?


二人の掛け合いを
見ているうちに
イサは くふっと笑った


あ〜〜〜〜 イサ
笑った
そうよ 笑うのよ
笑うと嫌なことも
吹き飛んじゃうわ


オモニによく似た女人が
微笑んでいる


*******


『今日よりも明日もっと』
嵐の中に 晴れ間をさがして
空を見上げる



☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*


連休明けは
台風で始まりました
皆様の街は
大丈夫でしょうか?

どうぞ
お気をつけ下さいませ


高麗の嵐は大丈夫かな?
イサのもとに
晴れ間が見えますように


☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*


アメンバーの申請受付を
本日いっぱいで休止しようと
思います
次回の再開は未定です

ただし
現在アメンバー様で
機種変更などで
別IDを取得されたり
なんらかの理由でアメンバーが
解除された場合は
再登録をいたしますので
休止中でもご連絡ください

また申請のみで
アンケートの送信がない方は
承認を保留しております

申請は2週間で自動的に
削除されるシステムですので
どうぞお早めのご連絡を
お待ちしております



なお
休止のお知らせ記事は
お蔵入りする予定でしたが

小話 残しておいて〜と
メッセをいただいたもので
じゃあ 置いておこうかな?
と・・・思っております (;^_^A




また
おつき合いくださいませ




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