始まったばかりの人生を語る ★青春グラフィティ その7  | 明日は こっちだ!

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◎始まったばかりの人生を語る ★青春グラフィティ その7  
                     (ネット検索+ケンチ)

  その1~http://ameblo.jp/harenkenchi/entry-11494955640.html

次の補習の時
礼二と若林に散々このことを茶化された
若林「一緒に帰ったなら良かったじゃねえか」
俺「別に…よくはねえだろ…」
俺がこう言うと若林がなんとも不思議そうな顔をした
若林「お前さぁ…何言ってんの?
若林「お前…Tちゃんの事どう思ってんの?」
俺「いや…それは…」
若林は、痛いところを突いてくる
若林「俺達があの子のこと可愛い、とか言うとお前嫌がるじゃん」
俺「それは…」
若林「好きなの?」
俺のTへの気持ちは本当に何て言ったらいいか分からなかった
俺「そりゃ好きか嫌いかって言ったら…好きな方には入るけど…」
若林「けど…?」
俺「Tは、俺なんかと一緒にならない方が良いというか…」
この時、礼二は黙って聞いていた
若林「なんだそれ」
若林はひどく馬鹿にしたような顔だった
若林「めっちゃ自分勝手な事言ってんのな」
若林「強がってんじゃねえよ。お前はどう思ってんだよ」
俺「だってTは俺なんかとじゃ…」
若林「お前、絶対後悔するからな。よく考えろよ?」
俺は何も言い返せなかった
このあと、礼二も若林もTのことについては触れなくなった
困ったら俺から言い出すし、人の恋愛にあまり口出ししたくなかったんだろう
後々、若林の言った通りになっていくんだけどな…

それからまた数回後の補習の時
帰りの正面玄関で、Tが立って待っていた
T「先輩一緒に帰りませんか?」
今度は偶然じゃない、Tが待っていたんだ
あの重そうなベースを背負って
少し暗くなった正面玄関の端っこに立っていた
若林と礼二も一緒だったのに、Tは意を決したかのように
俺に向かって話しかけてきた
まあ、この日が運命の日だったんだけどな
後にも先にもずっと忘れない日だわ
俺はその場で若林と礼二に「わり、先帰ってくれ」って頼んだ
そうするとあいつらは黙って笑って「じゃあな」って言って帰った
俺がTに「じゃ、一緒に帰ろっか」と言うと
Tは笑って俺の方を見て「はい」って頷いてくれた
その日は時間が少し遅かったのだろうか
太陽はほとんど沈みかけてて
空のふちはオレンジ色なんだけど、上の方は既に暗くなっていた
駐輪場に行くまでのあいだ、
Tがやたらとニコニコしていて、
T「先輩とまた一緒に帰れて嬉しいです」
なんて言っていた
俺も嬉しかったんだけど
なんだか怖かったんだ俺は
何が怖かったんだろう、こんなにいい子が自分の前にいることか
はたまた自分に素直になれないチキンだったのか
そのまま二人で並んで自転車に乗って
地元の方に向かって走りだした
走ってる間もTがずっとこっちをチラチラ見てくるので凄く緊張した
帰り道の、いつも通る神社の前が異様に賑わっていた
太鼓のような音や、人の賑わいの音に食べ物の匂い
そしてチラホラ通り過ぎる不良の群れに、警察官
Tが「先輩、縁日ですよ、縁日!」
Tが嬉しそうに指をさして言った
俺「本当だ、賑やかだと思ったら、お祭りなんだね。」
T「少し寄って行きませんか?」
Tが申し訳なさそうにはにかんで言った
そんな風に言われたら、ダメとは絶対に言えない
気が遠くなるほど自転車がとめてある(倒れている)駐輪場に自転車をとめて
「先輩はやくはやく」
とTに急かされて縁日をやっている神社の方へと向かう
出店の並ぶ道に出ると、色とりどりの灯りや人々で一杯だった
さすがに俺もそれを目の前にしてワクワクした
俺「なんかいいね、こういうの」
T「テンション上がりますよね」
ここは一つ先輩の甲斐性を見せてやろうと思った
俺「何か食べたいものとかないの?おごるよ」
T「え?本当ですかー!でも悪いですよ。」
俺「いいのいいの 今日は特別 欲しいのあったら言ってよ」
そう言うとTは「じゃあどうしよう…」と言いながら
目をキラキラさせて脇の出店をじっくり見回した
T「綿飴が食べたいです」
Tは恥ずかしそうにそう言った
二人で綿飴屋さんの前に行った
制服だったので、店のおっちゃんに
「学校帰りかい?いいね~仲良しで」と茶化された
これには二人で笑ってしまった
Tも「仲良しですもんねw」と言って笑っていた
神社のわきの石段に二人で座って綿飴を食べた
T「綿飴ってお祭りっぽくて大好きなんです」
俺「そうだよね~こういう時じゃないと食べれないもんね~」
Tが綿飴の食べ方が下手くそだったので
俺「お前下手だな~w口についてるぞ」
と言うと
T「先輩だって制服に綿ついてますよ?」
と二人で下らないやり取りをしてしまった
わきの石段だったので
少し離れた出店の群れの灯りがまぶしかった
急にTが思い立ったように石段からぱっと降りた
石段に座る俺を見上げるようにしてTが喋り始めた
T「今日先輩と一緒に来れてすごい楽しかったですw」
俺「俺も楽しかったよ」
この雰囲気は、もしかして…
T「私…先輩の事が、好きです。
この学校に入って、先輩が居てくれて本当に嬉しかったです。」
俺はTの言うことを黙って聞いていた
ところどころ詰まりながらも、必死に伝えようとする気持ちが分かった
T「私と、私と…付き合って下さい…」
俺は自分の心臓が止まるんじゃないかって思うくらいドキドキしてるのが分かった
俺「ありがとう… 俺はTは凄くいい子だと思う… でも…」
俺「付き合うことはできないよ…ごめん。」
そう言うと、Tは途端に涙目になって必死で笑顔を作った
T「私じゃ、ダメですか…」
俺「ごめんね…」
もうほとんど泣きながら、でも必死に笑ってTは
「なんか変な事言ってごめんなさい、せっかく楽しかったのに…」
「私、今日は帰りますね」
そう言って、俺の前から顔をおさえて走って行ってしまった
俺は、一人になってしまった
なんで、俺はこの時こんな事を言ってしまったのか?
今でもずっとずっっと後悔してる
全て、若林の言った通りになったんだ
俺は、Tが好きだった、大好きだった
でもこの時の俺はまだそれに気づいてなくて
後々Tへの気持ちがぶり返してしまう時が来る

こんな俺が、Tを「ふった」その日から
俺はとてつもなく無気力になった
何をするにも、やる気が起きない
どんなことも無意味に感じる
何をしても面白くなかった
若林にも礼二にも、散々言われた
「お前何やってんだよ」
「お前今後あんな子と一生付き合えないぞ?w」
夏休みの途中だったというのに
毎日悩んでばかり
どうしてTをふってしまったのか、自分でも分からなかったんだよ
Tは俺なんかと一緒じゃないほうがいいって?
じゃあ俺は一体誰と一緒になるんだよ
でも当時の俺にそんな考え方をする余裕はなかったんだよな
夏が何もしないままどんどん過ぎてった
Tのことは悩んだけど
時間が過ぎていくにつれだんだん忘れていったよ
Tとの一件、礼二の持ち込みの事件、そんなことがあって
俺の高校二年の夏休みは終わった
本当はもっともっとやりたいことがたくさんあったんだけど
なかなか実行に移せなかった
正直、後悔の多い夏休みだ
できることなら、もう一度戻ってやり直したいくらいだよ、本当に
でも正直、俺に彼女ができなくて良かったのかも、とも思える
もしこの時俺がTと付き合っていたら
礼二と若林とつるむのも終わっていたかもしれない
俺がTと付き合わなかったので、夏休みが明けても
俺たちは相変わらず3人で馬鹿なことをする毎日だった
道の脇の水路に自転車突っ込んで遊んだり
神社で野球してる小学生に乱入してみたり
やることが無さ過ぎて中学生みたいなことばかりしてた

そんな中、夏休みが明けてしばらくしてから礼二に異変が起き始めた
しょっちゅうノートを持ち歩いては授業中も絵を描いていたのに
俺たちの前で絵を描く素振りを見せなくなったんだ
「最近漫画の調子はどう?」
と聞いても曖昧に答えるばかりでハッキリとしない
少し前までは自分から漫画の進み具合とか
考えたキャラクターとか見せてきたくせに、
これはどう考えもおかしかった
これを若林に聞いても「そんな時もあるんだろ、もの作りって」
と大して気にしていない様子だった
ただ、俺とTの一件以来礼二はひたすら
「俺も彼女が欲しいなー」と言ってたのでひっかかったのだ
そして礼二のおかしな行動は更に加速した
俺と若林とあまり一緒に帰らなくなったのだ
今までは必ずと言っていいほど一緒に帰っていたのに
礼二に何か起きてるんじゃないかって心配だった
それから、ある日の放課後礼二が「今日は予定あるから先に帰っていいよ」
と言ったので俺と若林は礼二をおいて先に帰った
「あいつやっぱり最近付き合い悪いなー」とか言いつつ
近所のコンビニに寄って立ち読みしたり結構時間を使ってから帰った
それから若林が「欲しい漫画がある」と言って
帰り道の本屋に寄ったんだ
自転車を止めてすぐに若林がニヤニヤしながら俺に話しかけてきた
若林「おい!これ見ろよ」
そこには礼二の自転車があった
あいつは自転車の後輪のカバーに変なシールを貼っていたので
礼二の自転車だとすぐに分かったんだ
俺「うわ 誰かと一緒なのかな?」
若林はガラス戸の入り口から店内をのぞきに行った
若林「いたいた レジにいた」
と言って急いで戻ってきた
若林「女の子と一緒だったわ
つかやばい、隠れるぞ」
そう言って若林はすぐに自転車に乗った

俺たちはそのまま来た道を戻って
反対側の遠くの歩道から本屋を眺めるような体制をとった
本屋の駐車場から自転車に乗った男女が出てきた
礼二の奴、なかなか可愛い女の子と一緒だった
俺「あの制服…××高かな?」
若林「ああやっぱりそうなんだ。たまに見かけるもんな」
相手の子は俺たちの高校の近所の高校の子だった
礼二も女の子と一緒に帰る…
正直この事実は俺にとってショックだった
この帰り、俺は妙なテンションだった
俺「そっか礼二…こういうことだったんだな…」
若林「ま、俺ら高校生だぞ?好きな子の一人くらいできるだろ?」
俺「でもなんていうか…言ってほしかったな…」
若林「そりゃ俺らの勝手な言い分だろ。言う必要もないしな」
俺「でもさぁ…」
若林「ま、そのうち耐えきれなくて向こうから言ってくるさ」
俺はそんなもんなのか、と少々納得できなかった
俺「でも、漫画描くのやめちゃうのかな」
若林「ばかwやめるわけねーだろ
恋ってのはまわりが見えなくなっちまうもんだろwそのうち元に戻るよ」
俺「そんなもんか」
若林「まあ、Tちゃんをふったお前にはいまいち分かんねーかもな」
俺「は?じゃあお前は分かるのかよ?」
若林「さあ」
若林は俺の質問をはぐらかした

正直俺も、この時恋ってのがどんなものなのか分からなかったし
本当の恋ってどんな風になるんだろうってピンと来なかったんだ


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