◎始まったばかりの人生を語る その4 | 明日は こっちだ!

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◎始まったばかりの人生を語る その4 (ネット検索作品+ケンチ)

     ※その1~http://ameblo.jp/harenkenchi/entry-11494955640.html


その後終業式を終えて
俺たちの高校1年ライフは幕を閉じる
今思えばけっこう濃い一年だったな、色々あったわ
でも、高校2年の一年はもっと濃いんだよな

春休みには、何故か補習がない
これは俺らにとっては大助かりだった
礼二の家か俺の家に集まって頻繁に遊んだ
若林は遠いのもあったが、頑なに自分の家に人を呼ぼうとはしなかった

とにかく俺たちはゲームの趣味が合った
元々若林と俺もゲーム好きだったし、礼二もそういうことに詳しい
三人で集まって狂ったようにドカポンとスマブラをやってた

この春休みを利用して「クソゲー探訪」なるものも企画して
各々クソだと思うゲームを持ち寄って
クリアするまでやめられないというドMな耐久大会もやったりしたw

馬鹿そのものだったけど、本当に楽しかったなぁ

そして新年度が訪れる、4月だ
2年になるとクラス替えがあり、文系と理系も分けられる
俺と礼二は当然のごとく文系、そして文系のドンケツのクラスだった
まあまあ予想通り、といったところだった

若林だけは何故か理系を選択していた
理系なんて色々大変なのになんで?と聞いても
「まあどうせケツクラだし、理系でもいっかなと思ってw」
とてきとうな事を抜かしていた

そして初々しい新入生たちを見て、去年の自分を思い出した
一年の春は必死だったなぁ…この中から俺のような落ちこぼれが出るんだろうか
ともあれ、一番上のクラスから脱出して晴れて「ケツクラ」になれた
その開放感は凄まじいものだった

始業式当日から礼二と教室でハイタッチしたしなw
「いえーい!念願のケツクラだぞ!」って
まあ本当に嬉しかったんだけどな

こうして落ちこぼれトリオは三人ともケツクラになって
真の落ちこぼれになってしまったわけだけど
そっちの方が気が楽で俺たちには好都合だった

現に、ケツクラの雰囲気は今までのクラスとはかなり違っていた、と思う
なんというか張り詰めたいやらしい緊張感というか、そういうのが無かった

そして始業式から数日たった日、俺は律儀にも掃除に参加していた
学校の掃除に参加するのなんて、ものすごく久しぶりなことだった

場所は保健室
保健室ってのはいいよな、学校でも異質な空間だと思う
うちの高校の保健室は広くて、2つの組で保健室の掃除を行う
片方がベッドや床など、もう一方が器具や水槽、外のベランダなど

俺も久々の掃除ってこともあって揚々と作業に励んでたんだ

「先輩?先輩じゃないですか?」
と、俺を呼ぶ声が聞こえた
だいぶ聞き覚えのある声だった

振り向くと、小さな女の子が驚いた顔で俺を見ていた
同じ中学の後輩のTだった
部活が一緒だった(運動部なので男女違うが)こともあって
割と仲の良い後輩だったんだ

俺は凄く驚いた
「T?Tじゃんか!」
と一気にテンションが上がった

まさか、うちの中学からこの高校に来る奴がいるとは思わなかった
いるにはいるが、毎年は来ない
それも見知った後輩のTだ、これは純粋に嬉しかった

T「先輩がいるのは知ってたんですが、まさかこんな所で会いますか?」
俺「本当だよな!ってかTがここ来るなんて思ってなかった、すごいな」
T「それは先輩もじゃないですか、先輩中学の時からすっごく頭良かったし!」

Tに自分が落ちこぼれであることなんて、絶対に言えない

俺「いやいや…それは…」
後輩「私 準クラ?になっちゃったんですよー…ついていけるか怖いです。」
俺「凄いじゃんかぁ、頑張りな」

どうしても見栄が出る、ここで「俺今年からケツクラ」
とはどうしても言えなかった

後輩「あ、先輩!どうせならアドレス交換しときませんか?」
Tがニコニコして携帯を取り出す
俺「お、いいね!…あれ…携帯がねえぞ…」
この時、俺はガチで携帯を教室のカバンに忘れていた

俺「あれ、マジでないや…ごめん…」
T「えー先輩何言ってんですか…!私とアドレス交換するのそんな嫌ですか?」
俺「んなわけないじゃん おっかしいな教室か?」

本当に携帯を持ってないことに気づいて焦った
せっかくの偶然とチャンスだと言うのに

俺「ちょっと抜けて教室今から行くわ」
T「あ、それはダメですよ~今掃除の時間なんですから」
真面目な子である

俺「あ、そうかな…?」
T「アドレスはまた機会があったらでいいですよ」

そう言うとTはニコッと笑って自分の持ち場の方へと行ってしまった
この時アドレス交換できていれば良かったんだが

そしてそのまま掃除は終わる
持ち場の先生の元に2組が集合して報告会
その日の反省点や要望を出し合う

「おつかれさーっしたー」と号令をかけておしまいだ
帰り際、Tが俺に笑って手を振ってくれた
か、可愛い
なんだか調子が狂ってしまうようだった

そして俺、この出来事を礼二と若林に伝えられず。
わざわざ自分の中学から後輩が来たよ、って言うのもおかしいかなと思った

俺は次の日の掃除の時間が楽しみだった
驚きなことに、俺は高校一年のあいだ一人たりとも女友達がいなかったのだ
クラスの女子と会話程度はしていたが
だからこそTに会えるのが楽しみだった

でも次の日掃除場所の保健室に行くとTの姿はない
同じ組の子に聞いてみる、「今日Tはどうしたの?」
「あ、風邪で学校お休みですよー」

え?なんてタイミングの悪いやつだ、T
こちとらその日はバッチリ携帯を準備していったというのに…
でもどうせ明日もあるし明日でいっかって思った

が…その次の日もTは学校を休んだ
浮かれていた自分がなんだか恥ずかしくなった

そのまま週が変わって掃除場所もチェンジなわけだ
はい、Tに会える機会は損失しました
少し落ち込んだけど、同じ学校にいる限りいつか会えるだろうと思っていた

正直新しいケツクラになってからは
クラスメイトともそれなりに仲良くできていて
女友達も数人できていたんだ

一年の頃のクラスだったらTとの事は凄まじく後悔しただろうけど
ケツクラでは心に余裕があったんだ

しばらくして、俺と礼二と若林は三人で一緒に帰ろうとしていた
下駄箱に上履きを投げ捨て、「どこ寄ってくよー?」とか言いながら
いつも通りの帰宅風景だ

すると正面玄関のはしっこでTがポツンと一人で立っていた
Tは俺に気付くと笑って手を振った
俺も笑ってそれに返した

礼二と若林もこれに気付いたが、特に触れることもなく
その日はそのまま帰った

その日は別に何とも思わなかった
別に正面玄関に一人でいてもおかしくはないだろう
誰かを待っていたのかもしれないし、そんなのはよくあることだ

その次の日は、若林が用事があるとかで確か礼二と二人だったんだけど
またTが正面玄関の端っこの傘立てに座って一人でいた
そして、俺に気付くと笑って手を振った
俺は多少驚きつつも、手を振り返した

礼二がこれに食いつく
礼二「あの子昨日もあそこにいなかった?」
俺「そうだね。誰か待ってんじゃないの?」
礼二「そっか。知り合い?」
俺「ああ、中学の後輩よ」
礼二「あ、なるほど」

と、この日も特に何も気に留めずこのまま帰宅

そして次の日の放課後、また俺と礼二と若林は三人で帰ろうとしていた
すると、またTが正面玄関の端に立っている
さすがにこれには俺もすこし驚いた

そして俺に気付くとまた笑って手を振ってくる
礼二「あの子今日もいんじゃん」
若林「何?昨日もいたの?ってか誰?」
俺「俺の中学の後輩だよ」

若林「お前にあんな知り合いいんだな」
俺「ひっでーなそれ」
礼二「昨日もいたよね」

若林「そうなのか、変わり者だな」
俺「そんなことないと思うんだけどなぁ…」

Tは一体何をしてんだろう?
この時の俺にはTはの行動がよく理解できなかった
というより、誰かを待ってるだけだろう、と思ってた

それから数回、俺達が授業が終わって通常の時間に帰る時は
Tが玄関にいて俺を見つけると笑って手を振ってくるという事があった
早々にサボって帰る時や、放課後校舎で時間を潰してから帰った日にはいなかった

それから何回かして、また帰り際に正面玄関にTがいた
いつものように笑って手を振ってくるわけだが、若林が言い出す

若林「またあの子いるな。なんなんだろうな一体。
おいケンチ、お前の後輩なんだろ?」
俺「そうだけど」
若林「お前、なんかあった?」

俺「あ…」
帰りながら、俺は礼二と若林に先日の掃除の一件を話した

礼二「なんだよそれずりーな!」
若林「ってかもう、それ完全にお前じゃん」
礼二「ケンチのこと待ってたんじゃん、ふざけんなよ」

俺「いや、まだ分かんなくね?」
若林「ってかお前それ早く言えよ。知ってたらもっと早くなんとかしたのに」

若林はこういうことに何故だか熱い男だ

若林「ってかそれお前と話したくてあそこでずっと待ってたってことじゃん。
どんだけいい子なんだよ。お前、しっかりしろよ」
俺「本当に俺かー?」

仲は良かったけど俺に好意を持つなんて考えられなかった

若林「他の人待ってたら笑って手なんか振るか?」
礼二「ケンチ見つけるとめっちゃ反応するもんね」

若林「そうとなりゃ、お前明日一人で玄関でろ。
俺ら靴持って教員昇降口から出っから」
俺「えー…なんか恥ずかしいんだけど」

若林「バカ言え。あのままずっと待たせる気かよ」
礼二「ちゃんと事後報告してくれよ」
と言われて、そういう事になってしまった





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