突然ですが、みなさんは『アナトール、工場へ行く』というお話をご存知でしょうか?
わたしが小学生のころ教科書に載っていたお話です
ネズミのお父さんアナトールが売れ行き不調なチーズ工場へ忍び込み、チーズの味見をしてその評価をメッセージに書き残し、それを参考にしたチーズ工場は大繁盛、アナトールはチーズ試食部部長に就任するという大変夢のあるお話です
わたしはこの『アナトール、工場へ行く』を読んでから作品に登場するチェダーチーズやブルーチーズに強い憧れを抱いておりました
アナトールがううむ、うまいというのだから、さぞ美味しいチーズなのだろうと
見たこともないチーズに期待値は爆上がりでした
しかし、現実は残酷でした
『アナトール、工場へ行く』がクラスの中で爆発的に大流行し、担任の先生が給食の時間にブルーチーズを振舞ってくださったのですが、初めてみるブルーチーズの見た目と味に幼いわたしは震えました
『なにこれ粘土じゃん』
幼い味覚にはブルーチーズの深い味わいは、早すぎたのかもしれません
とりあえず牛乳で流し込んだものの、ブルーチーズは粘土の味というトラウマが記憶に刷り込まれました
それから十数年の月日がたち、わたしはピーマンもにんじんも食べられる立派な大人になりました
『アナトール、工場へ行く』のことなどすっかり忘れ薄汚れた大人になったわたしは、先日ツイッター経由である記事を読みました
『食べると変な夢をみることができるチーズがあるらしい』
ボキャブラリーの乏しいわたしは、シンプルに『まじ?』という感想しか出てこなかったのですが、純粋に食べてみたいと思いました
『ムー』を愛読していたこともあり、不思議なものへの好奇心は人一倍でした
変な夢みられたらまじうける、買うわ
記事を見た日から、わたしはその不思議なチーズを探し始めました
不思議なチーズの名前は『スティルトン』
イギリス産の『ブルーチーズ』だったのです
たくさんの種類があるなかで、なぜよりによってブルーチーズなのか
正直、まじかーと思いました
ブルーチーズには、口いっぱいには粘土の味が広がるというトラウマしかないのです
でもわたしももう立派な大人
好き嫌いなく何でも食べられることだけが唯一の取り柄みたいなところがあるので、ここで挫けるわけにはいきません
成城石井やさまざまなチーズ売り場を巡り、ようやくスティルトンチーズを入手することに成功しました
十数年ぶりのブルーチーズとのご対面です
胞子に蝕まれた禍々しいその姿
机に置いてから小一時間眺めることしかできませんでした
だって開けたら絶対臭いし
購入した初日はここで断念し、口にすることができたのは翌日でした
二日目もしばらく睨み合っていたのですが、ただ眺めて終わるのではまたもや時間の無駄になってしまいます
意を決して、スティルトンのパッケージを開封しました
ばああああん
ほのかなミルクの香り、そしてその奥に夏休み前の教室をワックスがけしたモップの香りが漂います
懐かしい匂い
誰かがこぼした牛乳を拭いた雑巾のようでもあります
すこし臭い
でも、大丈夫・・・
いや、全然大丈夫じゃ、ない
確実に苦手な匂いです
決してスティルトンのネガキャンをしたいわけではありません
幼いころのブルーチーズへのトラウマがそうさせるのです
でもこれくらいなら、我慢すればいずれ好きになれるかもしれない
震える手で刃物を握り、無抵抗なスティルトンを押さえつけました
スティルトンはされるがまま、複数の湿り気を帯びた塊へと姿を変えました
なんと無残な姿
ちなみにすっかり説明を忘れていましたが、変な夢をみるためには就寝30分前に20グラムの摂取が必要となります
わたしが購入したスティルトンチーズは70グラム、3つにカットすればちょうど一回の摂取量20グラムを満たす大きさになるのです
意外と大きい
写真でみるとそんなに質量を感じないのですが、ずっしりと重みを感じます
なかなか口に入れることができず、手の温度で周りが溶け出しブルーチーズ独特の粘土みたいな匂いが部屋に広がります
一度お皿に戻し、換気をしました
やはり臭い、手もなんか臭い
鼻から息を吸うと鼻腔がつーんとします
わたしのなかの野生の本能が、胞子に蝕まれたスティルトンを『たべちゃだめだよ』と伝えてきます
でもこれくらいなら、我慢すればいずれ好きになれるかもしれない
震える手で刃物を握り、無抵抗なスティルトンを押さえつけました
スティルトンはされるがまま、複数の湿り気を帯びた塊へと姿を変えました
なんと無残な姿
ちなみにすっかり説明を忘れていましたが、変な夢をみるためには就寝30分前に20グラムの摂取が必要となります
わたしが購入したスティルトンチーズは70グラム、3つにカットすればちょうど一回の摂取量20グラムを満たす大きさになるのです
意外と大きい
写真でみるとそんなに質量を感じないのですが、ずっしりと重みを感じます
なかなか口に入れることができず、手の温度で周りが溶け出しブルーチーズ独特の粘土みたいな匂いが部屋に広がります
一度お皿に戻し、換気をしました
やはり臭い、手もなんか臭い
鼻から息を吸うと鼻腔がつーんとします
わたしのなかの野生の本能が、胞子に蝕まれたスティルトンを『たべちゃだめだよ』と伝えてきます
このときすでに夜中の2時を回っていました
いつのまにかチーズと数時間も対峙していたようです
なにごとも時間は先延ばしにすればするほど、行動するのは億劫になるものです
意を決して、まずは一口
あ、いけそう
だいぶ塩辛いけど
意外と
あ、おや
おやおやおやおや
くさ、くない、か
あ、臭い、まじ、あ無理
あ、すごい無理
ぎゃあああああ
むり
むりむりむりむり
うわあああああああ
幼いころのトラウマと思い出が走馬灯のように駆け巡りました
大人になったからとか関係なく、たぶんわたしはブルーチーズが苦手なのだと悟りました
お茶を飲んでも飲んでも口の中から粘土とモップの風味が消えないのです
基本的に事務所の意向以外、NGのないわたしですが、今後スティルトンを食べるお仕事にはNGをだすかもしれません
なにごとも時間は先延ばしにすればするほど、行動するのは億劫になるものです
意を決して、まずは一口
あ、いけそう
だいぶ塩辛いけど
意外と
あ、おや
おやおやおやおや
くさ、くない、か
あ、臭い、まじ、あ無理
あ、すごい無理
ぎゃあああああ
むり
むりむりむりむり
うわあああああああ
幼いころのトラウマと思い出が走馬灯のように駆け巡りました
大人になったからとか関係なく、たぶんわたしはブルーチーズが苦手なのだと悟りました
お茶を飲んでも飲んでも口の中から粘土とモップの風味が消えないのです
基本的に事務所の意向以外、NGのないわたしですが、今後スティルトンを食べるお仕事にはNGをだすかもしれません
うわああん、アナトールううう
わたしはスティルトンのことを、ブルーチーズのことを甘くみていました
これは長い戦いになりそうです
そこからしばらくつまんだチーズのことを見つめておりましたが、わたしの頭にあるアイディアが浮かびました
風味がダメならなにかに包んでしまえばいいと
天才かよ
本来であればバケットやクラッカーがよいのでしょうが、似たようなものだとマクビティしかなかったので諦めました
チョコレートクッキーでは二次災害が起こると考えました
選ばれたのは、キャベツでした
我ながらナイスアイデアだと思いました、なんかこう、爽やかにバリバリ食べられると思ったのです
早速包んでみるとビジュアルも、あたかも最初からそういうものだったかのようにしっくりきているように思いました
いい感じ、いい感じ
まずは一口
あー、うーん
これはダメだ
一口でわかるレベルでダメだと思いました
キャベツの青臭い風味がモップ感をより引き立てていて口の中で、パンデミックを起こしていました
思ってたんと違う
しかし、ここで諦めるわけにはいきません
またもや脳裏に新たなアイディアが浮かびました、今度こそ素晴らしいアイディアです
そうだ、加熱をしてみよう
キャベツに包んだまま加熱をしてみたら、チーズがとろりととろけてキャベツと絡んで美味しいに違いない
食べかけのスティルトンのキャベツサンドをラップに包みレンジで加熱してみることにしました
ぶううううううん
わたしのスティルトンとの長い戦いもこれで終結するのだ、そんな風に考えていたのです
このときまでは
20秒ほど加熱をしていると、電子レンジのなかからジュワジュワと不吉な音がするではありませんか
ああああああああ
ああ
ああああ
あ
うわあああああああああ
急いで助け出したものの、なかから数滴のチーズが受け皿へと溢れてしまいました
うわーまじかー
電子レンジすごい臭い
匂いが飛ぶどころか充満している
思わぬ展開に膝をつきそうになりながらも、鮮やかなキャベツの色にすこしだけ希望が見えました
なんか美味しそう
お皿に取り出したときは火傷するかと思うくらい熱々だったので、粗熱を冷まし包みを開いてみることにしました
しかし、ここからが悪夢でした
汁と匂いがすごい
スティルトン汁がキャベツから溢れてきます
ああ、もう、ああああ
キャベツの中も確認してみたのですが、なかなかエグい感じになっていたので、そちらの写真は自重いたします
スティルトンチーズはとろーりするタイプのチーズではなく、加熱すると水分と固体に分離するタイプのチーズなのでした
うおおおお
失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した
仕方ないのでこのまま摂取することにしました
キャベツサンドを一口
加熱したことにより風味豊かになったスティルトンは完全にワックスがけしたモップと化していました
きっとクラッカーやバケットがあればもっと美味しくいただけたんだと思います、完全にわたしの準備不足なのです
スティルトンは悪くない、スティルトンは悪くない
わたしに購入されてしまった哀れなスティルトンに詫びを入れつつ、渋い顔で完食しました
スティルトン汁も頑張って飲みました
塩辛さとワックスモップ風味で涙はでてくるし、喉は渇くし、こんな大変な思いをしたので、すさまじい悪夢を見ることになるだろうと感じました
なぜこんな辛い思いをお金をだして買ったのか、今となってはよくわからないです
あまりの喉の渇きになかなか寝付けなかったのですが、いつのまにか寝落ちていたようで気づけば朝になっていました
男性は75パーセント、女性は85パーセントの確率でへんな夢や明晰夢をみると噂のスティルトンチーズ
果たして、どのような夢をみることができたのか
わたしのスティルトンチャレンジの結果はあっけなく失敗に終わりました
夢をみることはなく、ただ健やかな快眠を貪っただけに終わりました
うおおおおおお、変な夢が見られると思ったから頑張ったのにいいいい
あの深夜の頑張りはなんだったのか
しかし、思い出してほしい
このスティルトンチーズは70グラム入り、あと2回チャレンジできるのです
今度こそは失敗しない、クラッカーとかリッツを駆使し美味しく20グラム食べきってみせる
変な夢をみるまで、この戦いは終わらないのです
わたしのチャレンジは失敗に終わりましたが、気になった方はぜひチャレンジしてみてください
ポイントは就寝30分前の20グラムです
わたしの購入したスティルトンはかなり塩分濃度の高いチーズでした、ともに戦えるクラッカーやバケットの準備もオススメします
何度もいいますがわたしはブルーチーズが苦手なだけで、スティルトンチーズはチーズ好きにはたまらない美味しいチーズです、ネガキャンではありません
アナトール、わたしは好き嫌いしない立派な大人になれなかったよ
最後まで目を通してくださり、ありがとうございました
近村望実(@nozomura0310)