いやあ、久しぶりにひどい記事を日経で読まされました。2月24日付日経本紙「大機小機」の「日銀に財源はいらない」(カトー氏)というもの。
なぜ、財源はいらないかというと、日銀は通貨発行益を持っている(つまり、いくらでもお札を刷れる)からだとか。小笠原さんがすでに反論されていますが、素人ながらの付け足しをします。
そもそも通貨発行益とは何か。「1万円を刷る印刷コストは15円だから差額の9985円が通貨発行益だ」と勘違いしている人があまりに多いですね。この人とか。しかし、日本銀行の貸借対照表には、発行された1万円札は発行銀行券として負債のほうに計上されています。もちろん、利益として損益計算書にも計上されません。
(どうでもいいけど、なぜこのページはうまく印刷できないんですかね?)
なぜ負債かというと、日本銀行から見て1万円札は借用証書的なものだから。実際にはこの借用書を民間銀行などに「売って」金利がつく国債やリート・ETFを買ったり、資産である国債を「売って」1万円札を買い戻すわけですね。
では、通貨発行益とは実際には何かですが、ノーベル経済学者のフェルプス・コロンビア大学教授は、「名目金利×実質貨幣残高」と定義しています。日銀は国債などの保有によって金利を得ることができるわけでその金利分が発行益というわけです。もし、日銀が買った国債を永久に売らないならば、将来にわたる金利収入総額の現在価値が通貨発行益ということになります。
もっとも、ここで2つの問題が発生します。
1つ目は、「金利がゼロ、あるいはマイナスだったら通貨発行益はどうなるのか」
→当然、通貨発行益はゼロあるいはマイナスになりますね。
2つ目は、「すべての国債を永久に売らないことはできるか」
→インフレになって出口政策が必要になった時は売りオペしなけれなならないわけで、絶対に売らないといことは困難です。売るときには当然、損失が発生します。
そして何より、銀行券を無限に発行した場合、受け取る側はその銀行券を信用できますか?ハイパーインフレになったジンバブエで、国民がジンバブエドルよりも米ドルを欲しがったのはそういうことです。銀行券を発行すればするほどその信認が落ちていく。どんな世の中でも「タダ」より高いものはないんです。
たとえ署名(ペンネームですが)記事とはいえ、通してしまった日経もなあ(´・ω・`)