3年後のあなたを変える働き方/すばる舎

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はじめに

・そうした経験の中から、今だからわかる、働くうえで改めて大切にすべきだと思うことが、大きく分けて2つあります。仕事の基礎となるものです。
 1つは、仕事は自分1人だけでできるものではない、ということです。成長するにしても、1人の力では限界があります。成功も成果も、必ず誰かに支えられ、助けられなければ、成し遂げられません。
 だから、働くうえで大切なのは、相手との信頼関係を築くこと。「この人に仕事を任せたい」「この人と一緒に仕事がしたい」と周囲に思われること。それが、1人のビジネスパーソンとして、自分の存在感やポジションを築くことにつながるのです。

 そして、もう1つが、常に学ぼうとする意志を持つことです。みなさんも、仕事で多くの失敗を経験することでしょう。うまくいかなければ、落ち込むことだってあります。ただ、知って欲しいのは、失敗には大きな価値がある、ということです。
 失敗したとき、何がいけなかったかを省みて、次にどう踏み出すかを考える。仕事は常にこの繰り返しです。失敗は負けだ、と思う人もいるかもしれません。しかし、人は負けを知ってこそ、強くなれるし、やさしくもなれます。可能性を高める、限界を乗り越えるためにも、自分の無力さを自覚することは重要です。(p4)


目の前の仕事に全力を尽くす。成長の種が必ず隠れている。

・このときの経験から、「何事も疎かにしてはいけない」「どんな仕事でも一生懸命取り組むことで、得られるものがある」と実感しました。思いがけない発見が、仕事に対する見方を変えたのです。(p17)

3年で仕事の本質はわからない。キャリアを長いスパンで考える。

・転職という選択をするのも、それぞれに事情があると思うので、一概に否定できません。
 倫理観に反することがまかり通ったり、経営手腕があっても理不尽な要求を押しつけられたりするなら、我慢してまで身を置くことはないし、必要以上に上司の顔色をうかがわなければならないなら、自分から身を引いてもいいでしょう。
 でも単に、「仕事が面白くない」「やりがいがない」という理由で辞めるのは、どうだろうか、と思うのです。キャリアを一からやりなおすのはもったいないし、それでは結局、どこに行っても苦労するだけではないでしょうか。
 会社はどこへ行っても、基本的にはそんなに変わらないのではないか、と私は考えています。
 「別の会社に行って、自分のやりたいことができるようになるのか」と自問してみる。職場を変えることばかりを考えるのではなく、まずは自分が変わることを、考えるのが大切ではないでしょうか。(p34)


2回に1回は失敗してもいい。挑戦は未来への投資となる。

・できる限り、失敗しないように気をつけることはもちろん大切ですが、自分にはできないと思えても、とにかくやってみること、何事も挑戦してみること、一歩踏み出してみることも大切だと私は考えています。
 結果はともかく、実際に経験することで、必ず何かしらの収穫がありますし、経験の蓄積になるからです。失敗したからこそ、わかること、気づくこともあります。試行錯誤を繰り返す中で、改善すべきことが明確にnari、次にもつなげられます。(p61)

・実際、私が知る限りでも、知識も素質も申し分ないのに伸び悩んでいる人がいますが、そうした人に共通するのは、無難な道を選んで、新しいことに挑戦しないことです。後々のキャリアを考えた場合、傍観する人より、挑戦して失敗を経験している人のほうが、伸びしろがあると私は思います。(p63)


机の上で考えるだけでは、本物の情報は得られない。

・だから私は、仕事に取り組むとき、本当に無駄なのか、やっても意味がないのかを頭だけで考えて、判断しないように意識しています。頭だけで考えて出した結論と、実際に行動して出た結論では、異なる場合が多くあるからです。
 もちろん、あらかじめ仮説を立てたり、結果を予測したりすることも重要なのですが、もっと大切なことは、行動して、自分なりの「答え」を見つけることです。
 多くの現場に足を運んで、自分の目で確かめる。
 様々な人と話して、その人たちが何を考えているのかを知る。
 現場で、見たモノ、感じたものなどを自分の身体で覚える。
 頭だけでなく、五感で体験する。
 こうした経験の積み重ねが、本物の情報となるのではないか、と思うのです。(p78)


自分なりの「軸」を持つこと。仕事にきっと活きてくる。

・あなたにも、お手本となるような人はいませんか? 自分なりの「軸」が持てると、人は強くなれます。どんなことがあっても、ぶれることがないからです。(p87)


批判を恐れていては、その先の充実感も味わえない

・私が気をつけて欲しいと思うのは、社内的に高い評価を得ることばかりを考えながら仕事をすることです。上司の顔色をうかがって、ゴマをすったり、必要以上に持ち上げたり、と会社の内側ばかりを見た働き方になってしまいます。特定の人たちへの忠誠心は、特定の人たちの評価しか得られません。
 時々、若手社員に見られるのが、「これを上司に言ったら、きっと喜ぶだろうな」と考えながら仕事に取り組んでいることです。でも、実際はその読みが外れている場合が多いのです。
 上司が喜ぶかどうかよりも、自分がどう思い、どうやりたいのか、を素直に言葉にする。何がお客様のメリットになるのかを、考えながら取り組むことのほうが重要です。(p96)

・言われたことをきちんとやるのも大切ですが、自分の意志で行動することがより成長を促す、挑戦する勇気にもつながる、と私は考えています。
 上司から見ても、指示待ち、言われたことしかやらない人のほうが、むしろ心配になるからです。違うと思っていても意見を言わない、問題やトラブルを起こさない、というのは、意志を持って挑戦していない、とも言えるからです。
 何でも素直に聞いてくれる人は、それはそれでかわいいのですが、もめ事を起こさない、何でもかんでも指示通りにやったほうが評価される、と勘違いしているのでは、と思うことがあるのです。(中略)
 主体的に、自立して仕事に取り組んでこそ、良い結果にもつながるし、充実感も得られるのではないでしょうか。(p98)


厚い信頼関係は、”聞く”ことから始まる。

・同僚のことを「できないヤツだ」「ダメなヤツだ」と思ったことはないでしょうか。
 でもそれは、「私は、あいつよりできる」と優越感に浸っているだけの場合がほとんどです。特に仕事がうまくいっていない時は、自分よりできない人ばかり探して安心しようとする傾向があります。(p136)

・コミュニケーション力といっても、難しく考える必要はありません。相手の話を最後まで聞くことと、相手の良い面に目を向けること。大切なのは、この2つです。こちらからしっかりと聞く姿勢を示して、相手と向き合えば、気持ちは伝わります。(p137)


発想を自由に。感性を働かせる。

・尊敬する上司やビジネスの大先輩には、物腰の柔らかな人やしなやかな相手に接する人が多くいて、いつも見習いたいと思っています。
 言葉や態度で立場の違いやポジションを匂わせることなく、人への接し方もフラットです。相手の話をじっくり聞く寛容さを持ち、自分とは異なる考えや発想を受け入れる姿勢を体現している方ばかりです。
 ダイバーシティ推進活動をしていても、柔軟で寛容な方に出会うことがおおくあります。特に素晴らしいと思うのは、自分の存在をことさら主張しないことです。どのようなタイプの人の話も柔軟に受け入れ、相手の考えていることを自然に引き出してしまいます。
 こうした方々に共通するのは、あくまでも自然体でいること。型にはまらず、伸び伸びとした自由な発想を大切にし、遊び心を持っています。他人の美点や長所にも目を向けようとします。(p149)


弱い人にはやさしく。小さな意見を大切にする。

・特に自分が仕事でうまくいっていなければ、自分よりももっとうまくいっていない人を見つけては、ついイライラをぶつけてしまう。デリケートな人やミスの多い人に厳しい目を向けたり、きつい言葉をぶつけたりもするでしょう。(p155)

・そして、もう1つ注意して欲しいのは、何が何でも大勢の意見に従おうとしないことです。 少数の意見にもきちんと耳を傾けること。自分の意見が少数派であったとしても、簡単にそれを捨てないこと。自分の考えや意見が少数派であったとしても、簡単にそれを捨てないこと。自分の考えや意見が周りと違ったとしても、それは「個性」の表れです。自分自身を楽しむことが大切です。
 会議やミーティングでは、少数の意見を軽くみる傾向があります。「そんなことができるわけがない」「あり得ない」という具合に。
 でも、それは多角的に物事をとらえていないことの表れです。少数の意見を軽視するだけでは、議論は活発になりません。議論が活発にならなければ、新しい発想やアイデアも出てこない、視野も広がりません。
 だから、自分の意見に賛成する人が少なくても、あまり気にせず、自分が正しいと思うことを、信じることから出発することです。
 私の場合、賛成する人が多いか少ないかに関わらず、自分の意見をストレートに言うようにしています。
 相手が何を考えているかわからないからこそ、まずは自分の考えをぶつけてみる。そして、それに対するフィードバックを大事にするようにしています。(p158)


おわりに

・本書では、私が仕事で大切にしていること、大事だと思うことについて書きました。
 ここで書いたことは、長いキャリアの中で、「働く楽しみを見つけるには」「何のために働くのか」について考え続けた結果、見えたことでもあります。
 「ステークホルダーを大事にする」「目の前の仕事に全力で取り組む」「意志を持って仕事をする」「――。これらは、才能や素質、目先の成果を追うことよりも、重要な、働くうえでの土台となるものです。(p182)