前回、親戚こそ招待するべきと書いた。

その方向性はいいとして、現実問題、親戚をどのようにおもてなしすれば喜んでくれるかについて、新郎新婦はまた新たな問題に直面する。


そもそも、あらゆるパーティーの中で、ウエディングパーティーほど演出が難しいものはない、というのが堂上の持論だ。

あまりにも世代が広範にわたりすぎるのである。


1 まず同世代の友人の子供たち。幼い子が多いので、実家に預けてくるケースもある。

2 次に、中高生世代。これは親戚の子供たちだ。こちらも親だけ出席するケースもある。


3 そして大学生以上、新郎新婦の友人や会社の同僚たち世代。

特に新郎新婦世代を現在のウエディングはメインの客層としてとらえ、パーティー演出がなされている。


4 この上の世代は、新郎新婦の兄姉世代や会社の先輩。新郎新婦世代とは近い。

5 会社の上司。さらに両親や親戚世代。

6 そしておじいちゃん、おばあちゃん世代となる。


これ以上に細かくセグメントすることも可能だが、ちょっと分類しただけでこれだけのジェネレーションが同じ場で飲食し、新郎新婦を祝うのである。

好みも違えば、センスも違う。出身地も違えば、生まれも育ちも違う。


これらの招待客全員をすべて満足させるようなウエディングパーティー。

それは火星に有人着陸するほど難しい。


ウエディングパーティーの演出家が、この世の中でも最高峰のクリエイターだというのは、そういう理由だ。


だからウエディングパーティーの演出家たるウエディングプランナーや宴会キャプテンは、すべてのジャンルのクリエイターの中でも、最も難しい命題に取り組んでいる人と言える。


この話をつづけると長くなりそうなので、本題に戻る()


堂上が言いたいのは、せっかく親戚を招くのだから、楽しんでいただかなきゃということだ。

ただ、招待しただけでは、その後の交流は細いものになってしまう。


いくつもの招待客世代を満足させる方法の、もっとも短絡的な方法はズバリ、客層を分けることだ。

客層を分けることで、演出の難しさのハードルがぐっと下がる。


例えば小学生までの子供たち。

いまウエディング間に子供たちを預かってくれる新サービスが登場している。

http://www.happy-kosodate.jp/event.html?topic=040324

(熊野社長、その折はお世話になりました。106日の「ブライダルビジネス戦略2009」のシンポジウムでお会いできるのを楽しみにしております)


子供が生まれた後は、生活はどうしても子供中心でまわり、婚約・新婚時代みたいに夫婦水入らずで粋なレストランでディナーを楽しむこともできなくなってしまう。

そんな披露宴に招待されたゲスト夫婦が、「ほんとうに久しぶりに子供のことを忘れて食事を楽しむことができました」と語るサービスだ。


子どもたちはお子様メニューを食べた後、パーティー会場で大人たちがまったりとした時間を過ごす間、キッズルームでゲームやお遊戯で楽しむ。

もちろんサプライズ式に、後の演出で子供たちが登場することも可能だ。


まずこれで子供層クリア()だが、その他の世代は、子供層のように、当日、別の場所に移ってもらうわけにもいかない。


しかし、新郎新婦から見てウエディングは1日のようであっても、ゲストにとってみればその前後もまたウエディング期間だという点も忘れてはならない。

つまり、前夜祭やアフターパーティーの工夫だ。


例えば、親戚からおじいちゃんおばあちゃん世代までを、前夜祭にしてすでに楽しませるプランがあっていい。

実は堂上は、16年前にこれを実行した。


宿泊の部屋を取ったホテルで、そこの宴会場を使用し、親族だけのウエルカムパーティーを挙行したのだ。

無論、挙式前だから、妻の親戚は妻側でそれなりに、そして堂上側はある意味、盛大に()行なったのである。


実はこの席で、亡くなった伯母と親しく話し、それがその後の交流につながった。

親から進路や勤め先などは聞いていたただろうが、直接に対面するのは1020年ぶりという親戚ばかり。

必然的に話題は少ないが、さほど問題ではない。


パートナーとなる花嫁・花婿の話がある。親戚のおばちゃんやおじちゃんたちにとっては、ほとんどすべてが初耳なので、それはそれは興味深く聞いてくれるのである()

だから話のネタに困る心配はいらない。


それとともに、遠方からやってきた親戚やゲストには、泊まるホテルや結婚式場の近くの観光名所、グルメスポットなどを教えてあげる。

できれば招待状に「この付近には何があって」などと、観光案内を同封してあげれば、せっかく遠くまで旅行に来たのだからと、前日の早いうちに来て、それらを見て回ろうとする親戚もいるかもしれない。翌日の延泊も考えられる。


結婚式のわずか4年後に亡くなった父の葬儀、その通夜の席では、叔父が結婚式後、夜の東京でどんなところに行ったとか、あやしげな外国人に追いかけられたとか()、そんな話で盛り上がった。親戚同士、楽しげにやっているなとあの世の父も喜んだに違いない。


こんな風に結婚式と葬式は結びついている。

親戚目線では、このふたつは“連続するシリーズイベント”とも言えるだろう。