今回の秋公演「ゆづり葉」が日本経済新聞さんに掲載されました!! | 劇団犯罪友の会(HANTOMO)常設ブログ

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2013年11月6日(水)夕刊
■劇団犯罪友の会「ゆづり葉」

 公演ごとに劇団員の手で丸太組みの風情ある野外特設劇場を建て、夜空の下、野外演劇を繰り広げる大阪の劇団犯罪友の会。新作「ゆづり葉」(10月20日、大阪市の難波の宮跡公園特設劇場で所見、武田一度作・演出)では、高度成長期の陰でひっそりと生きる庶民の哀歓が描かれた。

 昭和37年、東京近郊の小さな町。2年後の東京オリンピックに向けて景気が拡大する中、下町の人々の生活は楽にならない。空襲で両親を失った清二(金城左岸)は、小さなレストランを実直に営むが、経営は思わしくなく、上海で孤児になった敬子(上木椛)は、料亭で働くが、朝顔を育てることだけを楽しみに生きる毎日だ。ある日、料亭の女将・菊乃(中田彩葉)のもとに、ルポライターの北尾(川本三吉)が現れ、1年前の三無事件(クーデター未遂事件)との彼女とのかかわりを探る。

 ほかに農地改革で破産した元令嬢など、戦争で人生を狂わされた人々が登場。かつて軍の特務機関にいた北尾は、戦後の新しい価値観になじめず、屈折する。民主主義の豊かな国・日本へと変貌を遂げたかに見える時代の庶民に焦点を当て、内実を問いかけた。

 題名の「ゆづり葉」とは、古い葉が新しい葉に命を譲り、散っていく様を表す。町の再開発が始まり、立ち退きを命じられる彼等。戦後に苦労して築いた生活が、時代の変化の中で崩れ、散り行くように見えたが、新しい土地に新たに根を張って生きる希望が暗示されて終わる。

 激動の昭和という時代を背景にした庶民史。個性豊かな役者陣により、野外演劇特有のエネルギーが舞台から溢れ出る中、社会的弱者達の底力が爽快に描かれた。

(大阪芸大短期大学部准教授 九鬼 葉子)


上木椛もみじ