「不格好経営」を読んで驚く | マーケティング・コンサルタント弓削徹

「不格好経営」を読んで驚く

お昼ご飯を食べるついでに立ち寄ったブックオフで「不格好経営を買った

DeNA創業者の南場さんが書いた、起業の顛末記ですね。

 


不格好経営」南場智子 日本経済新聞出版社


今頃?


そうなんですよ。いつか読みたい、面白そう、と思っていたのですが、ノウハウ本ばかりが優先されてしまっていて。


回転ずしをつまみながら読み始めたところ、止まらなくなりました。


やらなければならない宿題はいろいろあるのにもかかわらず、読むことをやめられません。


中身が面白いから?


それもありますが、まず驚いたのは文章のうまさです。


1行目からして舌を巻いた。


   いつも私は去年の自分が恥ずかしい。


太宰治以来の名文ですよ。


その後も、小気味のいいリズム感の短文、絶妙なボキャブラリー、正確無比な「てにをは」、そしてなにより、真面目な中に飄々としたユーモアがツボで、こりゃ本人が書いていないな、しかし超一流のブックライターさんだな、と思いました。


ところが、「本書は一字一句自分で綴った」とある。


校正者はいたでしょうけれど、こんな軽妙洒脱で高踏的な文章をIT起業家が書くの?!

と、驚いてしまい、どんどん読んでしまったんです。


軽快な文体なので早く読めるけれど、ふつうのビジネス書と違って読み飛ばせない(味わわないともったいない)から、やっぱりちょっと時間がかかる。


そして、中身もとても面白い


(自分はアホだけど、賢い仲間に助けられて成功できた)と、ご本人は書くけれど、本当にアホな人に優秀な人たちはついてこない。


自身を差し置いて、社員たちを褒めれば褒めるほど自身がおいしくなるという、謙譲の我田引水。


競合企業や、もめた相手すら褒めちぎるという、褒め殺しは美談過ぎるけれど、やはりちょっと感動。


創業からこっち、DeNAが何をして成功し、何をして失敗したかは、ニュースでだいたい知っている。


その裏で進行していた、壮絶で微笑ましい事どもが、ときに熱く、ときに自虐的に語られます。


本のエンディングに向かってどう盛り上げるのか、と思っていたら、後継社長のメッセージをうまく使い、手柄を譲って終わる。


キャッチコピーを書くのにセンスはいりません、と言ってはいますが、ここまでの文章となると、実はセンスです