ものづくりの現場を活写する | マーケティング・コンサルタント弓削徹

ものづくりの現場を活写する

製造業をテーマとする小説では池井戸潤一氏がメジャーです


しかし、今回ご紹介するのはこれからメジャーになる(?)作品。


「わたし、型屋の社長になります」

 


中小製造業が集積する墨田区の金型製作会社を舞台にしたお話。


作者は上野歩氏です。


広告代理店でばりばりと仕事をこなすキャリアウーマンが、実家の父が倒れたのを契機として家業の金型メーカーを継ぐというストーリー


技術と戦い、競合と戦い、金融機関と戦う。


樹脂射出成型の詳しい話や金型の構造などが語られ、面白く読めました。


弓削自身が関わっているのはこういう世界なんだな、と改めて満足感(?)を得られました。


同時に、私ならああもできる、こうもできるのにと、歯がゆい思いも。


ところでこの、急に門外漢の、しかも女性が社長になるという展開。


大田区のダイヤ精機さんを彷彿させますよね。


社長であるお父様の急逝を受け、主婦であった諏訪貴子さんが2代目社長となって奮闘するという、これは実話。
 


上野氏の前作である「削り屋」も拝読しました。


こちらは、やはり墨田区にある下請けの切削加工業の話。
 


上野氏は墨田区のご出身なのですね。


「削り屋」も面白かったのですが、「型屋」のほうが小説としてはリアリティが高まっています。


その分、悪役などの描き込みが控えめになっていますが、すぐにでもドラマ化できるのではないかと思わせられます。


「半沢直樹」のときも、「こんなに面白い原作を、いままでテレビ局はどうして放って置いたのだろう」と感じましたから、上野歩さんの作品も、ドラマ化でも映画化でもどんどんしたらいいんです。


NHKの「プロジェクトX」でもわかるように、ものづくりの現場は面白いんです


そして感動があるんです


それほど長くもない人間の人生。


ものづくり、価値づくりに賭けてみるのもいい選択だと思いますよ。