昔は、ミズバショウの根茎をスライスして日干しにした物を、海芋と呼んで薬用に利用していました。そうした長年の利用の中で生み出された民間薬は、腎臓病、便秘、発汗、痔などに効くものとされ、人々を助けてもきたのです。ただ、服用する量を少しでも誤ったりすると中毒などの事故を起こす事になりかねず、実際にそのような事故は後を絶たなかったとも言われています。そのため、近代的な医薬品が普及するにつれ、こうした習慣はすっかり廃れてしまい、過去の物になってしまいました。


 ミズバショウが持つ毒の成分としては、シュウ酸カルシウムが上げられます。サトイモの皮を素手のまま剥いていたりすると、手が痒くなってしまうと言うような経験をしている人は多いはずです。これはシュウ酸カルシウムの小さな結晶が手に刺さって、かゆみを覚えるのです。同じ成分がミズバショウにもあるのです。口に入れれば口の中の粘膜を傷つけますし、飲んでしまうと嘔吐や下痢といった中毒症状を起こします。さらに低カルシウム症となり、痙攣や呼吸困難、心臓麻痺を起こして、死に至る場合すらあると言う事です。葉の生汁が皮膚についただけでも炎症を起こす事があると言うことですから、扱う時にはゴム手袋などをして扱い、子供などがむやみに口に入れたりしないように十分注意する事が必要です。


 このシュウ酸カルシウム以外にも、ミズバショウには未知のアルカロイドなども含まれているらしいとも言われていますが、今のところは正体不明で解明には至っていないようです。ミズバショウというと、私などはどちらかと言えば、のどかなイメージを持っていたのですが、うかつに扱えないような側面もあるのですね。皆さんもご用心ください。