月例給与のポイント | 名古屋の花井綜合法律事務所公式ブログ(企業法務・労働・会社法・相続など)
月例給与のポイントをご紹介します。

~賃金支払いの原則(労基法24条)~

【通貨払の原則】

例 外
(1)法令に別段の定めがある場合
(2)労働協約に別段の定めがある場合(通勤定期券、住宅供与などの利益)
  労働組合法にいう労働組合がない事業場では、労働協約による例外は認められません。
  労働協約による例外が認められるのは、当該労働協約の適用を受ける労働者に限られます。
(3)厚生労働省で定める賃金について、厚生労働省で定める方法による場合
 (ア)通常の賃金(退職金を含む)
   労働者が指定する銀行その他の金融機関に対する当該労働者の預貯金への振込み
   労働者が指定する金融商品取引業者に対する当該労働者の一定の預り金への振込み
 (イ)退職金のみ
   金融機関を支払人とする小切手の交付
   金融機関が支払保証した小切手の交付
   郵便為替の交付
※労働者の個別同意に加え、本人が指定する本人名義の口座に振り込まれることと、所定の賃金支払日に引き出し可能であることを要件に認められています。

【直接払の原則】
労働者の委任を受けた任意代理人に支払うこと、親権者などの法定代理人に支払うことは、いずれも労基法24条違反となります。ただし、使者に対して支払うことは差し支えないとされています(昭63.3.14基発150号)(使者の例:病気療養中の労働者に代わって、親族が賃金を受け取りにくる場合など)

派遣元の賃金を、派遣先が、派遣中の労働者に手渡すことは法違反ではないとされています(昭61.6.6基発333号)
また、賃金債権が民事執行法によって差し押さえられた場合は、使用者が賃金を差押債権者に支払っても労基法24条に抵触するものではありません。

【全額払の原則】

例 外
(1)法令に別段の定めがある場合(所得税の源泉徴収、社会保険料の控除など)
(2)労使協定(届出不要)がある場合(社宅の費用、労働組合費など)
労使協定による控除が認められるのは、購買代金、社宅、寮その他の福利、厚生施設の費用、社内預金、組合費など、事理明白なもののみとされています(昭27.9.20基発675号)

相殺について
使用者が労働者に対して有する債権(貸付金債権、労働者の不法行為等を理由とする損害賠償債権)を自動債権とし、賃金債権を受働債権として一方的に相殺することは労基法24条違反となります(日本勧業経済会事件 最判昭36.5.31)
労働者が自由意思によって相殺に同意した場合には、適法であるとされています(日新製鋼事件 最判平2.11.26)

調整的相殺について
賃金について過払いがある場合に、過払い分の返還請求権と賃金債権とを調整的に相殺することは許されるとされています。
しかし、このような調整的相殺であっても、過払い時期と相殺時期が、精算調整の実質を失わない程度に接近していることや、相殺額が多額にわたらないことなど、労働者の生活の安定を脅かす恐れがないことが有効要件とされています。

端数処理について
下記の端数処理が認められています(昭63.3.14基発150号)
(1)1箇月の賃金支払額に100円未満の端数が生じた場合、50円未満の端数を切り捨て、それ以上を100円に切り上げて支払うこと
(2)1箇月の賃金支払額に生じた1,000円未満の端数を翌月の賃金支払日に繰り越して支払うこと

【毎月1回以上払・一定期日払の原則】

例 外
(1)臨時に支払われる賃金
  私傷病手当、結婚手当、退職金など、臨時的・突発的事由に基づいて支払われるもの
(2)賞与
  「労働者の勤務成績に応じて支給され、その額が予め確定されていないもの」であり、「定期的に支給され、かつ、その支給額が確定しているもの」は該当しません(昭22.9.13基発17号)
(3)厚生労働省令で定める賃金
  1箇月を超える期間を算定の基礎として支払われる精勤手当、勤続手当、奨励加給、能率手当

一定期日とは、その日が特定されているとともに、その期日が周期的に到来することを要します。例えば、月給制において、毎月第4金曜日に支払うというのは、労基法24条に抵触します。

~不就労控除について~

遅刻・早退・欠勤によって労働しなかった時間については、原則として、賃金支払いの必要はありません。
しかし、この原則は労使の合意によって排除できるので、就業規則の定め方によっては賃金支払い義務が発生します。
欠勤等による不就労控除を行う場合には、念の為、その旨を規定しておくべきだと思います。


~降給について~

昇給については定めていても、降給については何ら触れていない就業規則を見かけます。
労働者の個別同意を得ることなく、基本給などを引き下げる場合には、就業規則(賃金規程)において、降給があり得る旨が明示されていなければなりません。

また、就業規則の規定を根拠に降給を行う場合には、減額事由・減額対象(基本給・手当)を明確にしておく必要があります。
例えば、減額事由が勤務成績しか規定されていない場合、会社の業績を事由とした減額は許されないですし、減額対象が基本給しか規定されていない場合には、業務手当などを減額することは許されないものと思われます。

また、念の為、「どういった場合にどの程度の減額になるか」「減額の上限」といったことを規定しておくことも考えられます。

以上

次回記事「月例給与の規定例」に続きます。


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