時間外・休日・深夜労働のポイント | 名古屋の花井綜合法律事務所公式ブログ(企業法務・労働・会社法・相続など)
時間外・休日・深夜労働のポイントをご紹介します。


~変形労働時間制の時間外労働~

●1箇月単位の変形労働時間制・1年単位の変形労働時間制
「1箇月単位の変形労働時間制」「1年単位の変形労働時間制」における時間外労働については「1日について」「1週間について」「変形期間全体(1箇月や1年)について」の3段階で考える必要があります。

具体的には下記の時間が、法定の時間外労働となり割増賃金が必要です

【1日について】
8時間を超える所定労働時間を定めた日については、その所定労働時間を超える労働が法定時間外労働です。
8時間以内の所定労働時間を定めた日については、8時間を超える労働が法定時間外労働です。

【1週間について】
40時間を超える所定労働時間を定めた週については、その所定労働時間を超える労働が法定時間外労働です。
40時間以内の所定労働時間を定めた週については、40時間を超える労働が法定時間外労働です。
※ただし、【1日について】で、既に法定時間外労働としてカウントした時間を除きます。

【変形期間全体(1箇月や1年)について】
変形期間全体における法定労働時間の総枠を超えた労働が法定時間外労働です。
※ただし、【1日について】【1週間について】で、既に法定時間外労働としてカウントした時間を除きます。
※変形期間全体における法定労働時間の総枠の計算方法
40時間 × 変形期間の歴日数 ÷ 7日

●フレックスタイム制
フレックスタイム制の場合の時間外労働は、1箇月等の清算期間における法定労働時間を超える部分です。1日あるいは1週間単位で時間外労働を考える必要はありません。三六協定も1日についての時間の協定は不要で、清算期間についての時間数を協定すれば足ります。
※清算期間全体における法定労働時間の総枠の計算方法
【原則】40時間 × 変形期間の歴日数 ÷ 7日

清算期間を1箇月とした場合、「完全週休二日制」かつ「労働日ごとの労働時間が概ね一定で、各月ごとの労働実態も概ね一定」であっても、曜日の巡りや休日の設定の仕方によっては、【原則】の法定労働時間を超えてしまう場合があります。

そこで、次の【要件】を満たす場合には、【原則】の法定労働時間を超えても、184時間までは法定時間外労働として取扱う必要がありません(平9.3.31 基発第228号)
【要件】
(1)清算期間を1箇月とするフレックスタイム制の労使協定が締結されていること。
(2)清算期間を通じて毎週必ず2日以上休日が付与されていること。
(3)当該清算期間の29日目を起算日とする1週間の実労働時間が40時間以内であること。
(4)清算期間における労働日ごとの労働時間が概ね一定であること(つまり、各労働日の労働時間が概ね8時間以下であること)

●1週間単位の非定型的変形労働時間制
「1週間単位の非定型的変形労働時間制」における時間外労働については、「1日について」「1週間について」の2段階で考える必要があります。

具体的には下記の時間が、法定の時間外労働となり割増賃金が必要です

【1日について】
8時間を超える所定労働時間を定めた日については、その所定労働時間を超える労働が法定時間外労働です。
8時間以内の所定労働時間を定めた日については、8時間を超える労働が法定時間外労働です。

【1週間について】
40時間を超える労働が法定時間外労働です。
※ただし、【1日について】で、既に法定時間外労働としてカウントした時間を除きます。
会社の実態によっては、変形労働時間制の導入は、経営者・労働者双方に有益です。
しかし、以上のように、変形労働時間制は、時間外労働の取扱いが複雑です。
したがって、会社の給与計算をされている方が、しっかり制度を理解していないと、誤った給与計算につながる危険性を秘めています。


~固定残業手当~

「営業手当」等の名称の手当てに、固定残業手当の性質を持たせることも可能です。
固定残業手当を適法・有効なものとするためには、下記の要件を満たすことが必要です。

(1)その手当てが「割増賃金に代えて支払われるものである旨」「何時間分の時間外労働をカバーするものであるか」が明確にされていること。
(雇用契約上も明確にされていなければならないと同時に、支給時に労働者に明示されていなければならないとされています)

(2)固定残業代分を超えて時間外労働がなされた場合は、別途差額が支給されること。

定額残業代制度で予定している時間外労働時間数よりも、実際の時間外労働時間数の方が少なかった場合、過払い分を翌月以降の割増賃金に繰り越す旨の賃金規定を有効とした裁判例があります(SFコーポレーション事件:東京地判平成21年3月27日)

逆に、割増賃金の支払不足分を翌月以降の定額残業代で賄うことは労働基準法24条の「賃金の全額払いの原則」に違反し、許されませんので注意が必要です。

~適用除外~

下記の者については、労基法の労働時間・休憩・休日に関する規定は適用されません。
しかし、深夜業・年次有給休暇・産前産後に関する規定は適用されるので注意が必要です。

(1)農業、畜産業、養蚕業、水産業に従事する者
林業については、農業・水産業に比べ自然の状況に左右されにくいため除外されません。

(2)監督または管理の地位にある者
労働条件の決定、その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者のことです。

各企業により管理職と呼ばれる従業員の範囲は様々であり、各企業で定めている管理職がそのまま労働基準法上の管理監督者として認められる訳ではありません。
どのような名称を用いられているかではなく、実態によって判断されます。

具体的には、管理監督者と認められる為には、以下の三つの要件が必要です。
1.職務内容、指揮監督・人事権限、責任に照らして、企業経営の重要事項や重要な人事に関与し、経営者と一体的立場にあること。
2.勤務態様、出社退社に関して自由裁量があり、画一的労働時間規制になじまないこと。
3.役職手当等、その地位にふさわしい処遇を受けていること。

判断基準としての要件はこのように示されているものの「経営者と一体的な立場にある」とはどのような状態をいうのか、「画一的労働時間規制になじまない」とはどのように判断するのか、「地位にふさわしい処遇」とは何なのかについては、判断が難しい部分があり、多くの裁判例が生じています。
【参考判例:日本マクドナルド事件(東京地判平成20年1月28日)】
この裁判では、以下の理由により、多店舗経営する外食産業の店長について管理監督者性が否定されました。
●形式的には労働時間の決定について裁量があるものの、実際には裁量の余地はなく、長時間労働に従事していること。
●店舗限りの権限はあるものの、会社全体の経営方針には関与していないこと。
●処遇は直近部下の給与と大差がなく、人事考課によっては部下を下回るケースもあること。

(3)機密の事務を取扱う者
秘書その他、職務が経営者または管理監督者の活動と一体不可分で、厳格な労働時間管理になじまない者のことです。

(4)監視・断続的業務に従事する者で使用者が所轄労働基準監督署長の許可を受けた者
監視労働:一定部署にあって監視するのを本来の業務とし、常態として身体または精神的緊張の少ない業務
断続的労働:手待ち時間が多く、実作業が間欠的に行われる業務
(断続的労働と通常の労働とが1日の中に混在し、または日によって反復するような業務は該当しません)
例:守衛・メーター監視員・学校の用務員・会社役員の専属運転手・集合住宅の管理人

(5)宿日直勤務者で使用者が所轄労働基準監督署長の許可を受けた者
定期的巡視、緊急の電話・文書の収受、非常事態に備えての待機等、常態としてほとんど労働する必要のない勤務を行う者のことです。

以上

次回ブログで時間外・休日・深夜労働の規定例をご紹介します。

◆花井綜合法律事務所 労務管理サイトはこちらから
花井綜合法律事務所 労務管理サイトへ


◆花井綜合法律事務所へのお電話でのお問い合わせはこちらから
TEL:052-485-5655

◆花井綜合法律事務所をもっと詳しくご覧になりたい方はこちらから
花井綜合法律事務所公式HPへ

◆花井綜合法律事務所 就業規則診断ページはこちらから
就業規則診断ページへ

◆花井綜合法律事務所 顧問契約詳細はこちらから
法務・労務一体型顧問契約サイトへ

◆花井綜合法律事務所 事業再生・倒産詳細はこちらから
事業再生・倒産サイトへ

◆花井綜合法律事務所 労務管理・労働紛争サイトはこちらから
労務管理・労働紛争サイトへ

◆花井綜合法律事務所 事業承継サイトはこちらから
事業承継サイトへ

◆『20秒』で読めるメルマガ購読の登録はこちらから
メルマガの登録はこちらから