よっつ屋根の下

 
大崎梢 光文社 2016年8月

 

よっつ屋根の下よっつ屋根の下
1,404円
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勤め先の大病院の不祥事隠蔽を批判し、犬吠の地方病院に飛ばされた父。製薬会社に関係の深い実家を気にして、父についていこうとしない母。都会暮らしが好きなのに、父をひとりにできなくて、ついていったぼく。お母さんを責めないで!と言いながら、密かに自分を責めていた妹。たとえ自分は離れても、いつまでもそこにあってほしい、ぼくたちの「家」。それは、わがままだろうか。家族でいるのが大変な時代の、親子四人の物語。
 
 
 
父の行動は、正しかったのかもしれないが、勤めていた病院から、地方へ飛ばされる。
 
正義感の強い父の行動は、立派だと思う、しかし、そのことで、家族がバラバラになってしまったことでは、心を痛めたことだろう。
 
父と一緒に来たぼく。都会では、塾へ通い、ぼくには、進学の道が開けていたはず。
それを捨て、父を一人にできないとついてきたぼくはけなげだと思う。
ぼくが、友達ができ、この土地に慣れていく過程を描いたこの章が一番よかった。
 
母は、都会にとどまる。父と一緒に、どうして来なかったのか?と、この母に対して、悪い印象だった。しかし、彼女には彼女の事情があったのだと少し、見方が変わった。
 
母と残った妹。小さかったから、自分で判断ができず、母の意見に従った。大きくなってから、それでよかったのかと、ずっと自問を繰り返していた。
 
家族4人がそれぞれ、違った道を進む。
よっつ屋根の下という題名は、一つ屋根の下で、一緒に暮らさない家族ということだろう。
 
 
 
別々に過ごした時間は、その人にとって自分を見つめなおす時間だったに違いない。自立した四人。今まで、苦労を重ねた分、これから、いい関係を築いていけたらいいなと思う。
 
この物語を読んで、一つ屋根の下で、一緒に暮らさない家族というのもあるのだと思った。
 
お気に入り度★★★