今はちょっと、ついてないだけ

伊吹 有喜 光文社 2016年㋂


今はちょっと、ついてないだけ/伊吹 有喜
¥1,620
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かつて、世界の秘境を旅するテレビ番組で一躍脚光を浴びた、「ネイチャリング・フォトグラファー」の立花浩樹。バブル崩壊で 全てを失ってから15年、事務所の社長に負わされた借金を返すためだけに生きてきた。必死に完済し、気付けば四十代。夢も恋人もなく、母親の家からパチン コに通う日々。ある日、母親の友人・静枝に写真を撮ってほしいと頼まれた立花は、ずっと忘れていたカメラを構える喜びを思い出す。もう一度やり直そうと上 京して住み始めたシェアハウスには、同じように人生に敗れた者たちが集まり…。一度は人生に敗れた男女の再び歩み出す姿が胸を打つ、感動の物語。






かつて自然写真家として人気を博していた立花浩樹だが、40代になった今、人気だったころの自分は、周りのスタッフたちにより作られたものだった。本当の自分は、地味で何もできない男だと卑下する。

社長の保証人となり、多額の借金を背負った立花は、迷惑をかける人たちを自分の所でくいとめようと、すべての借金を返済するために働く毎日。自己破 産すれば、逃れられる方法があるが、それをせずに、返し続けた立花は、律儀でまじめな人だと思う。人気だったころの立花も、その精神は同じだっただろう。 それこそが、彼の魅力だったのではないだろうか。自分では気づかない誠実でひたむきなところが、みんなを魅了していたのではないか。

    

格安のヴィンテージ・ハウスにシェアする面々。

   

セールストークは苦手だが、メイク得意な瀬戸。リストラされ離婚してここに住むようになった宮川。他にも・・・・・・・・・・

     

何かに事情を抱えた人たち。いい素質を持っているが、いかされていない。そんな人たちが、助け合って、新しいことに挑戦していく。その姿がよかった。


お気に入り度★★★★